現金給付偏重は問題、支給額・財源の将来像も見えず
 政府の2011年度予算案で明らかになった来年度の子ども手当については、大きく二つの問題点があります。
 一つは、来年度予算案を見ても、保育サービスなどの現物給付がほとんど拡充されていないことです。10年度の子ども手当法は公明党の提案で一部修正され、付則に、「今後、現金給付と現物給付のバランスをとっていく」という内容が盛り込まれています。
 少子化対策は、経済的支援だけでなく、保育サービスの充実など女性が働きやすい環境の整備などを含めた総合的な対策とセットで実施されなければなりません。
 もう一つは、10年度の子ども手当法は単年度の法律であり、政府は、11年度は恒久的な法案を出すと言っていたにもかかわらず、11年度も単年度とする方針を示している点です。
 この2点以外の問題としては、そもそも民主党はマニフェストで、中学3年生まで月2万6000円の満額支給を11年度の公約として掲げていますが、財源確保のメドが立たず、国民との約束であるマニフェストの達成は事実上、難しいと言わざるを得ません。今後についても、満額支給も含めてどこまで制度を拡充しようとしているのか、そこまでの財源確保をどうするかの道筋を全く示せていません。
 また、民主党は全額国費での子ども手当支給を公言しておきながら、児童手当の枠組みを存続させ、地方や事業主の負担を残しています。これも、実質的に公約違反です。
 民主党はかつて、4度にわたる児童手当の拡充法案を“ばらまき”などと批判し、すべてに反対してきました。しかし、現在の子ども手当も児童手当法に基づく給付に上乗せして支給されており、実態としては児童手当制度を拡充したものです。
 民主党は、児童手当の拡充に反対してきた従来の対応が誤りであったことと、公約違反をきちんと国民に説明すべきです。
(このブログ記事は、公明新聞1月22日付け記事を参照して構成しました)
子ども手当:43の地方自治体が負担拒否 国への反発拡大
毎日新聞(2011/1/21)
 来年度の子ども手当の財源に関し、少なくとも1県7市35町村が地方負担を拒否し、来年度当初予算案で地方負担分を「国費」として計上する方針であることが、毎日新聞の調べで分かった。全国の自治体は来年度予算案作成に向け詰めの時期を迎えており、自治体の国への不満が高まっていることを裏付けた。ただ、各自治体とも0~2歳が月額2万円、3~15歳は月額1万3000円を満額支給する意向で、住民への影響はない見通しだ。<以下略>

 11年度の子ども手当予算額は総額で2兆9356億円に上ります。そのうち国費2兆2077億円、地方負担が5549億円あります。事業主も負担1731億円あります。
 これは、そもそも児童手当の財源に、地方負担と事業者負担があったためで、当初民主党が主張した「全額国費」からは、真反対の実態となっています。
 以下、神奈川県の松沢知事の子供手当ての地方負担に関する見解を引用します。
新たな子育て支援・神奈川方式―「米百俵の精神」を神奈川から実践する
神奈川県知事松沢成文(2011年1月7日)
  子ども手当については、当初、国税である所得税の扶養控除と配偶者控除を廃止して財源を確保することとされていました。しかし、政府は、平成22年度の子ども手当の制度設計に当たって、地方に何ら意見を求めることなく事実上の地方負担を導入しました。
現在、自らの地域のことは自らの意思で決定し、その財源・権限と責任も自らが持つという地域主権型社会の実現をめざす「地方分権改革」が進められていますが、こうした政府の中央集権的な対応は、この地方分権改革に反するものです。
 行政サービスのあるべき姿は、全国一律の現金給付は国が責任を持ち、サービスの現物給付は地方が担うことです。地方行政の役割は、地域住民から預かった財源を、地域の課題に対応した、個人では実現しない取組みや子どもたちに直接効果のある政策として実施することであり、国ときちんと役割分担を行うことではじめて住民本位の政策を進めることができます。
 このため、本県では、地方分権を守り、子ども手当の地方負担を断固として阻止するために闘っています。もし、来年度の子ども手当に地方負担が明らかとなった場合には、地域の実情を踏まえた本県独自の「新たな子育て支援施策」を展開し、「米百俵の精神」を神奈川から実現するため、様々な行動を実行に移しています。ぜひ皆様のご理解とご支援をお願いいたします。