1月28日、公明党の山口那津男代表は参院本会議で、菅直人首相の施政方針演説などに対し代表質問を行いました。以下その代表質問の要旨を紹介します。

110128yamaguchi 1月14日の内閣改造から初の施政方針演説―。私は、菅総理自らが「最強」と位置付けられた新内閣を率い、この国のリーダーとして、具体的に何をされるのか、もっと明確に表明されるものと、淡い期待を持たなかったわけではありません。しかし結論は、やはり欺瞞と変節に満ちた期待はずれのものでした。政策項目は「政治主導」を放棄した官僚任せの羅列にすぎず、自ら選んだ政治課題はどこか他人任せの先送りのように虚しく響きました。
 そもそも、「平成の開国」「最小不幸社会の実現」「不条理をただす政治」の三つをあなたは国づくりの理念としていますが、まったく意味が伝わりません。今の時代を「鎖国」と思っている国民はいないでしょう。「不幸」を放置しておく社会を実現してもらっては困るのです。「不条理をただす」に至ってはこの度の内閣改造の対象となって「人生は不条理」と語った海江田大臣とよく相談されてから発言されてはいかがでしょうか。
 鳩山前総理の言葉も軽かったけれど、菅総理、あなたの言葉も責任感と実現力に裏打ちされていないと言われても仕方がないのではありませんか。もしそれがあるならば、「今までは仮免許だった」と言ってみたり「菅内閣の7カ月は間違っていなかった」と言ってみたり「こんなに頑張っているのに評価されない、気持ちが萎える」などの弱音や本音は、その口から出ないはずです。
 その半面、社会保障と税制の改革に向けた与野党協議については、過日の民主党大会で「野党が協議に応じないなら歴史に対する反逆行為」と発言されました。随分思い上がった言葉遣いですね。協議の上、制度を整えて実施していく責任がある総理大臣が野党を挑発するとは何事ですか。
 また、この改革に「政治生命をかける」―重い言葉です。総理としての“政治生命”とは果たして一体何を指すのですか。6月までに内閣は社会保障改革の全体像や税制抜本改革の基本方針を示すと述べていますが、このテーマで「信を問う」という意味なのか、明確にお答えください。
 民主党政権になって1年4カ月、マニフェストは破綻。重要政策は全て先送り、失政はすぐに責任転嫁、問責を考慮して今国会に対応するために、にわかに作った「とりあえず内閣」でも支持率は上がらず―。
 総理が最も当てにしている「市民」は、とっくに、あなたという政治家の本質を見抜いています。それ故に昨年12月の茨城県議選、おひざ元の西東京市議選でも民主党は惨敗したのではありませんか。
 菅総理、「あなたにはこの国の総理大臣をもはや任せられない」という、市民、国民の率直な声が高まりつつあると申し上げます。
「元気な日本」へは程遠く力不足/景気・経済、成長戦略
 わが国の経済成長を押し上げるためにはあらゆる施策の果断な実行は重要ですが、私は時間的余裕も財源も限られた中にあって、特に「新しい芽」を伸ばすことに優先的に力を注ぐべきだと考えます。
 具体的には、先端技術や産業資源を集中させて医療・介護分野を魅力ある成長産業に育成する、高度な技術開発の推進と潜在力を引き出すことで農業の国際競争力を磨く、そして環境分野における需要創出に積極的に取り組むことが重要です。
 しかし、成長戦略のための予算はどうなっているのか。「元気な日本復活特別枠」は、評価基準が不明確で、結局、「思いやり予算」をはじめ半分以上がおよそ成長とは関係のない施策に配分され、結果的に新成長戦略関連は1兆円にも達していません。あまりにも力不足ではないですか。総理、「元気な日本復活」を想起させるには程遠いこの対応で「新成長戦略」が実現できるとは到底思えません。
 日本経済の屋台骨である中小企業は、依然厳しい状況です。昨年の企業倒産件数は民間調査で前年比12.4%減と5年ぶりに前年を下回りましたが、その要因の一つは、私たち公明党が創設を推進し、対象業種の拡大を進めた「緊急保証制度」が奏功していると考えます。
 しかし政府は、緊急保証制度の本年3月での打ち切りを決定しました。
 財務省は景気判断を下方修正し、エコポイントなどの政策効果が減衰していく今後、中小企業の資金繰りが再び悪化することが懸念されます。総理は、現場の中小企業の方々の困惑をどう認識しているのか、中小企業の資金繰り対策について答弁を求めます。
 円高などで大企業の生産拠点が海外に移転する中、特に下請けの中小零細企業は、厳しい国際的な競争にさらされています。
 こうした状況を打破するためには、国内に製造拠点を維持する企業への支援を強化すべきです。中小企業関係予算の増額を含め検討すべきと考えますが、総理の認識を伺います。
迷走続く民主党の子ども手当/2011年度予算案、税制改正
 2011年度予算案は、民主党政権が、実質的に概算要求を含め最初から手掛ける初の予算案ですが、2年続いて国債発行が税収を上回る異常な予算です。当初予算で過去最高の発行水準を更新し、財政健全化への道筋もさらに遠のいてしまいました。民主党マニフェストの財源は破綻しているのに中途半端にマニフェストの事業にこだわる姿勢が招いた危機的な予算と言わざるを得ないのではありませんか。
 ついに日本国債の格下げを招きました。問われた総理が「そういうことに疎いので」と発言したことに耳を疑いました。危機感に乏しくそれを乗り越える決意も浅いと言わざるを得ません。総理の答弁を求めます。
 「子ども手当」について、伺います。
 公明党は、10年度の子ども手当法には、「11年度以降の子育て支援策に係る全般的な施策の拡充」を求めるなどの修正を行った上で、賛成しました。これは現金給付に偏っている現政権の子育て支援を糾したものですが、11年度予算案では、現金給付は手当の一部上積みでさらに拡充しているのに対し、保育サービスなどのいわゆる現物給付は、十分な拡充がなされておらずバランスを失しています。また、11年度以降の恒久財源に裏打ちされた予見可能な安定的制度をめざしたものですが、またしても単年度の時限措置というその場しのぎの内容となりました。これでは修正した法の趣旨に反するものと言わざるを得ないのです。
 総理。こんな迷走を毎年繰り返していては、子育て世帯の人生設計は成り立たず、将来への安心が生まれるはずがないではありませんか。総理の誠実な答弁を求めます。
 地域活性化の観点から、伺います。
 公共事業は、今もって地域の雇用・経済を支えている重要な柱の一つです。しかし、今年度18.3%削減に続き、来年度予算案でさらに5.1%削減されます。それに代わる雇用創出策はありません。今、地方では仕事がないのです。地域の中小・小規模事業者への優先発注など“仕事をつくる”ための配慮が必要です。また、真に必要な社会資本ストックの老朽化対策等も喫緊の課題です。こうした認識が総理には欠けているのではありませんか。
 次に税制改正についてです。
 税制抜本改革は、あらゆる税目について、整合的かつ一体的に取り組まなければなりません。しかし、民主党政権の手法は、抜本改革の一環と称しつつ、税制改正の理念もないままに、要はマニフェストにこだわる財源あさりのためのつまみ食い的な改正になってしまっています。
 法人税の引き下げについては、もっぱら代替財源をどうするかに終始し、結局、一部は特別償却の廃止・縮減や減価償却の見直し、研究開発税制の一部縮小などが充てられたものの、減税財源は確保できず、総理が期待する効果も不透明です。
 「国民の生活が第一」という言葉が虚しく響きます。総理の答弁を求めます。
与野党協議に関する総理発言等
 総理、冒頭にも引用しましたが、社会保障と税制の改革に向けた与野党協議に野党が応じなければ、「歴史に対する反逆行為だ」という発言。この言葉をそっくり菅総理にお返しいたします。民主党がマニフェストで国民と約束した年金制度案、すなわち「一元化」と「全額税方式」の最低保障年金の具体的制度設計を早く示してください。
 かつて国会で年金制度や社会保障に関する与野党協議が行われたこと、まさか総理はお忘れではないでしょう。その際、野党だからデータも資料も十分に入手できないから具体的制度設計はできないと言って途中から協議を逃げ回っていたのは民主党ではありませんか。政権与党となってすでに1年4カ月。もはや逃げ口上は許されません。
 公明党は菅総理の就任当初から社会保障のあり方についての与野党協議を提案してきました。この度、施政方針演説で与野党協議に応じることを明言されたのですから、与党の具体案が出されなければ協議になりません。内閣は6月までに全体像を出すと述べていますので、その前に、内閣と異なる主体である与党・民主党がマニフェストに基づいた具体案を協議の場に出してください。総理、あなたは施政方針演説において議員定数削減など本来国会で議論すべきことについて一政党の代表として与野党協議を提案されました。ならば、民主党代表として、与党・民主党の年金案を含む社会保障の全体像を出す義務があるのです。それをしないのであれば、あなたこそ「歴史に対する反逆行為」を行うことにほかならないのです。
 もう一点。今般の内閣改造における与謝野氏の閣僚起用についてです。与謝野氏は、自民党比例区枠で当選し、今も国会議員として活動されています。その方が、そのまま、民主党政権の大臣として活動することは、まさに「有権者への反逆行為」そのものであり、政権選択・政策選択をする選挙制度の趣旨に真っ向から反するのではありませんか。
 さらに、与謝野氏は、これまで民主党の経済政策をことごとく批判し、社会保障、特に年金制度の考え方が民主党とは決定的に異なっています。こうした方を社会保障・税制の一体改革の中心者に据えるのは政策選択をした有権者の意思にも反するものです。
 結局、歴史の審判を受けるのは、国民を見失い、自己都合で内閣の延命だけを考え、欺瞞と変節に満ちている総理、あなた自身ではないですか。
「孤立」から「支え合い」の社会へ/「新しい福祉社会ビジョン」
 昨年12月、公明党は、これまで進めてきた社会保障制度の機能強化に加え、虐待や引きこもりなど社会の病理的側面への対応についても、広義の福祉として捉え、その問題解決の方途を提示する「新しい福祉社会ビジョン」の中間取りまとめを発表しました。
 日本社会は今、地域や職域、さらには家庭における人間的な「つながり」が薄れ、いじめや虐待、それに伴う自殺や心身の病などが多発しており、「孤立」から「支え合い」の社会をめざした「新しい福祉社会」の構築が必要です。
 具体的に同ビジョンでは、第一に、社会保障制度改革を進める基本的視点として、経済社会構造の変化に対応できるセーフティーネットの重点強化とともに、給付と負担の明確化や制度設計の「見える化」、利便性の高いサービスの提供をめざしたICT(情報通信技術)の活用など、国民目線に立った改革を提案しています。また、増大する社会保障関連予算の「見える化」を図る、「一般会計」と「社会保障会計」の分離や、個人レベルでの給付と負担を明確化する制度の個人単位化を進めるべきと考えます。
 第二に、社会保障制度を支える基盤の充実として、新たな成長戦略による持続可能な制度の構築、人口減少下における女性、高齢者、若者の活用と安定した雇用確保による支え手の拡大、さらには、ボランティアやNPO等による「支え合う」社会の仕組みづくりが重要です。
 第三に、具体的な制度設計を検討する場として、与野党の代表による「社会保障協議会」を国会に設置し、年金・医療・介護・子育て支援などについて、検討期限を定め、あらゆる世代各層の意見を聴くなどして国民的な議論を喚起し合意形成を図るべきと考えます。
 公明党の具体的な提案について、総理のお考えを伺います。
総人件費2割削減への方途示せ/公務員制度改革
 報道によると、政府が提出を予定している「国家公務員制度改革関連法案」には、給与など労働条件について労使で交渉し、協約を結ぶ労働協約締結権を付与する一方、集団で業務を停止する争議権(ストライキ権)の国家公務員への付与を当面見送る、とのことですが、争議権の付与については、なぜ当面見送るとしたのか、併せて、なぜ国家公務員に争議権の付与を検討する必要があるのか。
 また、人事院勧告制度を廃止するとのことですが、廃止する理由は何なのか。現状の人事院が担ってきた中立・公正性をどうやって担保するのか、お答えいただきたい。
 そもそも、国家公務員に労働基本権を付与し、協約締結権を認めた上で、労使交渉による「総人件費2割削減」は、いったいどうやったらできるのでしょうか。
 国家公務員による待遇改善や賃上げ闘争などを誘引することになり、人件費削減はより困難なものになるのではないでしょうか。公務員制度改革を本気でやる気があるのか、総理に改めて伺います。
中小企業と学生を結ぶ具体策を/若年者・新卒者の雇用対策
 今春の大卒予定者の就職内定率は68.8%と過去最低を更新し、特に若年者・新卒者の雇用対策が急務です。
 厳寒の中、就職活動に励む学生個々人に応じた、きめ細かな対策強化は当然です。加えて、将来にわたり、海外市場拡大へ留学生などの採用に積極的な企業の傾向も見極め、グローバルに活躍できる人材の育成支援を戦略的に図るべきと考えますが、お答えください。
 また、施政方針演説では「中小企業とのマッチングも強化します」と言われましたが、何も具体策がありません。
 公明党は、若者に中小企業の魅力を伝え接触の場を増やす「ドリーム・マッチ プロジェクト」を推進し、私も現場を視察しましたが、ぜひ継続すべきです。総理は中小企業と学生の結びつきを強めるために、具体的にどう取り組むのか、お答えください。
予算削減に島民から不安の声/離島振興
 離島振興について質問します。
 離島住民はわが国の国土や海洋資源をまさに守ってくださっている。その一方で、島から本土の通所介護サービスを利用する高齢者や本土の高校に通学する生徒が数多くいます。
 私は、このような構造的弱者の方々の生活を守ることは、政治の重要な役割であると確信いたします。そこで私たちは、昨年12月に「離島振興ビジョン」として、離島振興法の抜本改正を柱に、医療や教育、交通、介護、通信等の改善や生活インフラの整備など、離島住民の声を受けた具体的な提言を行いました。住民からは高い評価をいただいております。
 しかし、来年度の離島振興関係予算は一体どうなっているのか。例えば、公共事業費は10年度から実に27%も削減されており、いわゆる一括交付金分を加えても1割もの削減です。
 港湾整備や離島航路の維持など、住民からは不安の声も上がっています。
ワクチン行政の充実
  海外で導入されているワクチンが日本では使用できないという「ワクチン・ギャップ」の問題をはじめ、わが国のワクチン行政は、承認体制や接種率等の面で大きく遅れています。
 こうした中、公明党が求めてきた、ヒブ、小児用肺炎球菌、子宮頸がんの3ワクチンが日本でも承認され、10年度の補正予算では、これらワクチン接種への助成措置が盛り込まれたことは評価をいたしますが、11年度までの予算措置では十分と言えません。
 ワクチンで防げる病気から国民の生命と健康を守るため、予防接種法を抜本改正し、効果の認められているワクチンについては積極的に定期接種化を進めるとともに、予防接種行政を自治体任せとせず、国が主導してワクチン政策に関する総合的な戦略を策定し、ワクチン後進国からの脱却を図るべきと考えます。
再発防止へ党首の結果責任示せ/政治とカネの問題
 政治とカネの問題について、残念ながら昨日(27日)の総理答弁からはまったく気概が感じられませんでした。一見、前向きな姿勢を装っていても、何も実質がないではありませんか。
 まず、小沢元代表の国会での説明責任について、施政方針演説ではまったく触れておらず、努力はしたというが、結局何もできていません。政治は結果責任です。
 小沢氏はあなたの党に所属されている議員ですよ。疑惑を持たれている議員が所属する党代表として、「小沢氏に説明責任を果たさせる」と明言すべきです。答弁を求めます。
再発防止策
 政治とカネの問題の再発防止策についても同様です。
 実現させるのか、させないのか曖昧な答弁ばかり繰り返し、本当は何も進める気がないのですね。何か不都合なことがあれば「幹事長に任せてある」、「政党間協議を」などというが、総理からは何も考えが示されていない。一体、どこが政治主導なのか。
 政党間協議と言う前に、総理として民主党代表としてリーダーシップを発揮すべきです。答弁を求めます。
可視化の本格進展こそ急務/検察の信頼回復
 さて昨年12月下旬に、最高検察庁はいわゆる厚生労働省元局長無罪事件に関する検証結果報告書を公表しました。
 最高検は検証結果報告書の公表の記者会見の際、「総力を挙げて検証し、反省や決意を十分に盛り込んだつもりだ」と述べていました。
 しかし、報告書は全体として大阪地検特捜部の固有の問題に矮小化し、検察組織全体の本質的な問題には踏み込んでおらず真の原因究明がなされているとは到底思えません。また元局長を含め、問題の検事から取り調べを受けた関係者からの事情聴取を行っていないことからも、今回の事件について徹底した真相の解明が行われているとは考えられず、加えて再発防止策についても全て運用のレベルのものにとどまっており、最高検は検察の再生をかけ本気で検証したのか、甚だ疑問を抱かざるを得ません。
 総理はこの検証結果を見て、検察は十分な検証をしたと考えますか、率直な見解を伺います。
 なお今回、再発防止策として取り調べの可視化の試行が盛り込まれました。しかし特捜部担当の身柄拘束事件に限るという極めて限定的な導入であります。
 今回の検察史上最悪の不祥事が招いた可視化の本格実施を求める世論の高まりは止めようもなく、時代の要請になっていると言っても過言ではありません。刑事事件全体のあり方との関連に留意しつつ可視化の本格的進展こそ急務と考えますが、総理の見解を求めます。
京都議定書の価値の再検討を/地球温暖化対策
 民主党政権は、総選挙勝利の後、真っ先に、科学が要請する水準に基づいて温室効果ガス25%削減を打ち出し、国際公約までしながら、いまだに国内で何%削減するのかを含め、25%削減に向けた道筋を明らかにしておりません。
 公明党は、民主党政権の温暖化政策がふらつくことによって、日本の低炭素化が遅れるのみならず、環境を軸とした経済成長の歩みもふらつき、日本の国際的優位を失ってしまうことを危惧するものであります。
 ここで改めて総理に、日本の成長戦略に温暖化対策を位置付け、低炭素革命を断行する覚悟があるのか。今後、25%削減目標をどう扱い、国内でどの程度の削減を進めるつもりか。政府として温暖化対策の基本法を制定する断固たる決意はあるのか、伺います。
 一方、温暖化対策の国際的な枠組みづくりについては、今年11月のCOP17で何としても最終合意を果たさなければなりません。
 世界の大勢は、先進国の責任ある行動を象徴する京都議定書の第二約束期間の設定を核として、もう一つの法的枠組みをつくる「2本立て方式」を支持しております。
 私はここで日本政府は、国際社会の20年来の努力によって構築された法的拘束力のある枠組みとしての京都議定書の価値を冷静に再検討する必要があると考えます。
 総理は、京都議定書第一約束期間終了後に、法的拘束力のある削減目標が世界からなくなってもよいと考えますか。反対に、京都議定書第二約束期間での先進各国の削減目標を核として、米国、中国などに一段と高い取り組みを迫りつつ、より強固な国際的枠組みをめざすとの考えには立ちませんか。
「場当たり外交」に国民の不信/外交・安全保障
 民主党政権になって確実に弱体化したのが、日本の外交力です。言うまでもなく、鳩山前総理の無責任な対応で混乱する普天間移設問題に端を発した日米関係の揺らぎが、東アジア地域の不安定化を招きかねない状況を生んでいます。日本外交の基軸は日米関係です。強固な日米関係に韓国を加えた連携で東アジアの安定に責任を持つ視点から、菅総理の基本的な外交姿勢をただします。
尖閣事件にみる政府の外交姿勢
 尖閣諸島沖中国漁船衝突事件における政府の対応に国民の多くは失望しました。
 那覇地検が船長釈放の理由を「日中関係を考慮した」と、外交の当事者のように説明する一方で、「地検からの報告を了とした」と無関係を装う仙谷前官房長官。政権がいくら「政治介入」を否定しても、国民の違和感は拭い難いものがありました。
 その後、衝突時のビデオ映像が流出し、漁船の非を裏付ける決定的な証拠を見せ付けられた国民はこう感じたでしょう。「この政権は信用できない」と。
 国民の不信は、あなたの場当たり的な政権運営から芽生えたものです。
 総理の外交姿勢は、先の臨時国会冒頭で所信表明された「国民全体で取り組む『主体的な外交』」どころか、「国民を蚊帳の外に置く『場当たり外交』」と言わざるを得ません。総理の答弁を求めます。
対中外交
 私は先月12月14日から中国を訪問しました。
 その際、習近平国家副主席と会談しましたが、以下の二つの発言が印象に残りました。
 一つは「世界の先進国の総人口が中国の人口に匹敵することを考えるとこれまでの先進国の発展モデルを中国がたどれば、地球上のエネルギーや資源や環境は耐えきれない。伝統的発展方法では持続不可能であり、調和のとれた発展、協力を求める発展を進める」との発言。
 もう一つは「中国が強くなっても覇権の道は求めない。終始一貫して平和的発展の道を歩む」との発言です。
 前者は10月の党大会直後、後者は中央軍事委員会副主席就任直後の発言であることを考えると軽く扱うべきではないと考えます。
 両国関係がアジア地域や国際社会の平和と発展に貢献するとの大局観に立ち、軍事面において透明化と信頼醸成を促し、経済・環境をはじめとする多面的な分野で互恵関係を戦略的に構築する具体的な対中外交が必要と考えますが、総理の所見を求めます。
日韓図書協定/対韓外交
 「朝鮮王朝儀軌」などを引き渡す日韓図書協定の国会承認は、日韓両国の信頼関係を深めるソフトパワーの活用として極めて有意義なものと考えます。
 昨年11月の訪韓の折、李明博大統領から「文化財の引き渡しは大変に喜ばしい」と早期の実現に期待が寄せられました。
 私は与野党党首会談などを通じて全会一致による早期承認を求めてまいりましたが、いまだ承認に至っていないことは残念でなりません。総理の今国会での全会一致による承認へ向けた決意を伺います。
 日韓防衛相会談において、自衛隊と韓国軍が物資や業務の相互提供を定める物品役務相互提供協定(ACSA)締結へ向けた協議を開始することで一致しました。
 核開発を続ける北朝鮮などの脅威に対して、米国と同盟関係にある日韓両国が安全保障面で緊密な関係を築くことは重要であると考えますが、懸念されるのは過去の歴史からくる韓国の国民感情であり、また周辺国の誤解からくる摩擦です。
 意図せぬ摩擦を避けるためにも、憲法の枠内、専守防衛の範囲の中で行われることを丁寧に説明すべきだと考えますが、明快な答弁を求めます。
結びに/必要なのは「幸福の最大化」
 最後に一言申し上げます。総理、国づくりの目標に「不幸の最小化」とうたい、施政方針演説で「不幸」の言葉を幾度となく繰り返し、議場に暗く重苦しい雰囲気を醸し出したことにお気付きでしょうか。
 この言葉は、一国のリーダーであるあなたが将来を悲観しているようにしか聞こえません。むしろ、「幸福の最大化」をめざすと言うべきでありましょう。
 公明党は、国民一人一人の声を受け止め、国民生活を守るため、全力で闘うことをお誓いし、私の質問を終わります。