農家の戸別所得補償実施で、11年度法案提出の政府答弁を反故に
参考写真 2月4日行われた衆院予算委員会で、公明党の石田祝稔議員は、農家の戸別所得補償制度の本格実施、環太平洋連携協定(TPP)参加検討などについて、政府の対応を厳しく追及しました。
 特に石田議員は、民主党政権が2011年度から8000億円以上もの血税を投じて本格実施する戸別所得補償制度に関して、制度運営の基本となる法案を提出せず、予算措置だけで対処しようとする姿勢を批判。政権交代後、3人の農林水産相がそれぞれ、11年度予算関連法案として今国会に提出すると答弁してきたことに言及し、その答弁が反故にされた姿は「国会軽視だ」と糾弾しました。
 これに対し、鹿野道彦農水相は「誠に申し訳ないという気持ちだ」と、その非を認め陳謝。しかし、「(ねじれ国会で法案が成立しにくい)国会の状況も踏まえ、予算措置でやると判断した」などと弁解に終始しました。また、野田佳彦財務相は「直ちに問題が生じるということではない」と開き直り、国会での本格的な議論を避け、不安定なまま制度を存続させる無責任さが浮き彫りになりました。
コメの戸別所得補償制度は抜本的見直しが不可欠
 そもそも、戸別所得補償制度の導入は、コメの価格の下落が止まらない状況になっており、制度導入は明らかに失敗たと言わざるを得ません。。
 農林水産省が昨年12月27日に発表した10年度産米の11月の相対取引価格は、全銘柄平均で60キロ当たり1万2630円となり、新米が出回った9月から3カ月連続で最安値を更新しました。前年度比15%減で2260円も安く、底値が見えない米価下落に農業者は大きな不安を抱えています。
 米価下落の大きな要因は、戸別所得補償制度そのものに米価下落誘発を制度として内包していることです。コメ農家が戸別所得補償のある分だけ業者から値下げを迫られているケースもあり、生産現場に混乱を招いています。
 政府は、昨年末になりようやく集荷円滑化対策基金を活用した過剰米約14万トンを飼料米として処理し、主食用米の市場から隔離することを決めました。しかし、これだけでは一過性の対策に過ぎません。今年度行ったコメの戸別所得補償制度モデル事業自体をしっかり検証することなく本格実施を行えば、農業者にさらなる不安と混乱を招くことになりかねません。
 戸別所得補償制度は小規模農家支援を掲げながら、2011年度予算案で一転して規模拡大加算を打ち出すなど矛盾も見えてきました。
 政府・民主党は、農業者の不安を取り除くためにも方向性をしっかり定めるべきであると考えます。具体的には、以下の5点の実現が必要です。
  • 長期的な展望に立った新たな農業政策について、国民的同意が得られる法律を制定すること。
  • 2010年度のコメ戸別所得補償制度モデル事業を検証し、検証結果を早急に示すこと。
  • 大幅な価格下落時に支払われる変動部分を全国一律から、地域ごとの再生産価格を補償するなどの柔軟な制度に改めること。
  • 農業・農村の多面的機能を評価する直接支払制度を検討するとともに、生産者の手取りを増やす新しいビジネスモデルの研究を行うこと。
  • 農村の生活環境の改善、農地の確保や基盤整備、用水の確保や道路などインフラ整備を早急に実施・促進すること。
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