東京都の取組
景気の低迷による家計収入の減収が、家計の教育費にも大きな影響を及ぼしています。塾代などにかける支出が減り、親の所得状況によって教育を受ける機会に差が生じる「教育格差」の拡大が懸念されています。
親の所得格差が子どもの教育格差に繋がることを防ぐ目的で、東京都は2008年秋より、「チャレンジ支援貸付事業」をスタートさせました。低所得世帯の受験生を対象に、学習塾代や受験費用を無利子で貸し付けるという内容は全国初の試みです。
対象は、都内の中学3年生、高校3年生を抱える、年間の課税所得が60万円以下の世帯。例えば、夫婦と子ども1人の3人家族の場合は年収320万円以下、子ども2人の4人家族の場合は年収380万円以下となります。
貸付金額は、学習塾代の場合、中学3年生、高校3年生ともに年間20万円まで、受験費用については、高校受験は50400円、大学受験は105000円まで、無利子で貸し付けます。進学が決まれば、学習塾代、受験費ともに返済は全て免除されます(※不合格した場合でも、特に経済状況が厳しい世帯の場合、返済免除の特例措置があります)。
7~8割の子どもが学習塾に通うと言われる東京都では、塾に通う子どもと通っていない子どもとの間に、学力の差が出てしまいがちなのが現実です。
景気の低迷による家計収入の減収が、家計の教育費にも大きな影響を及ぼしています。塾代などにかける支出が減り、親の所得状況によって教育を受ける機会に差が生じる「教育格差」の拡大が懸念されています。
親の所得格差が子どもの教育格差に繋がることを防ぐ目的で、東京都は2008年秋より、「チャレンジ支援貸付事業」をスタートさせました。低所得世帯の受験生を対象に、学習塾代や受験費用を無利子で貸し付けるという内容は全国初の試みです。
対象は、都内の中学3年生、高校3年生を抱える、年間の課税所得が60万円以下の世帯。例えば、夫婦と子ども1人の3人家族の場合は年収320万円以下、子ども2人の4人家族の場合は年収380万円以下となります。
貸付金額は、学習塾代の場合、中学3年生、高校3年生ともに年間20万円まで、受験費用については、高校受験は50400円、大学受験は105000円まで、無利子で貸し付けます。進学が決まれば、学習塾代、受験費ともに返済は全て免除されます(※不合格した場合でも、特に経済状況が厳しい世帯の場合、返済免除の特例措置があります)。
7~8割の子どもが学習塾に通うと言われる東京都では、塾に通う子どもと通っていない子どもとの間に、学力の差が出てしまいがちなのが現実です。
例えば、小学校6年生を抱える世帯の学校外教育費の月間支出額と算数学力の相関関係を見てみると、学校外教育費の月間支出が0円の世帯と5万円以上の世帯とでは、算数の点数に2倍以上の開きがあります。学習の難易度が上がる中学校、高校と進むにつれて、学校の授業だけでは学力をつけることが一層難しくなることが想像に難くありません。
しかし、経済的な理由で塾代を賄えない世帯は少なくなく、子どもに学習の意欲があっても塾に行かせられないことも多々あります。結果的に子どもの学力、さらには高校進学や大学進学にも影響を与えかねません。
08年より開始した都の「チャレンジ支援貸付事業」は、昨年度、開始わずか1年で約3600件の低所得世帯に貸付決定されており、そのうち返済免除された世帯は実に約99%。それだけ、同事業によって救われた子どもたちがいるということです。
自治体によりこうした事業の財源が確保できないところもあります。その意味では、自治体間で教育力にも差が出てしまうという、最悪の結果が導かれる懸念もあります。
北海道釧路市のNPOの取組
さてこうした東京都の事業と好対照を見せているのが、北海道釧路市のNPO法人「生活支援ネットワークサロン」の“みんなで高校行こう会~Zっとscrum”の取組です。(写真は、Zっとscrumの拠点施設:釧路市のコミュニティハウス「冬月荘」です)
釧路市は人口約19万弱の北海道東部の中心都市。基幹産業の衰退が著しいうえ、少子高齢化や過疎化も進み、地方財政も非常に厳しく、多くの地域課題を抱えています。かねてより生活保護受給率が高い地域であり、最近は5%を超えました。特に母子世帯の割合は全国の約4倍で、高い離婚率、児童虐待件数、低学歴など子育て環境も厳しいのが実情です。
こうした厳しい現状の中、生活保護世帯の中学三年生対象に無料の学習支援として「みんなで高校行こう会」が2008年1月からスタートしました。
指導に当たるのは市役所が中心となって声かけした学生や地域の人たちです。受験勉強のプロではない彼らは、「子どもたちと一緒に悩み、一緒に考える味方として子どもたちと一緒に学んでいこうではないか」という共通認識を確認したといいます。こうして15名の中学三年生が参加して、第1期生の取組が始まりました。当初は生活保護世帯が対象でしたが、一般の子どもたちも参加するようになりました。
これは、「中学3年生対象の無料学習支援」ですが、「塾でも学校でもない、講師も先生もいない。大人も子どももありのまま向き合う学習会」なのだそうです。中学生は基本的に学習をしに集まり訳ですが、そこに一切の強制はなく、みな自主的に学習をします。そして、必要であればその場にいる大人が「チューター」として子どもに対応します。勉強を教える場というよりも、共に学び合う場に近い取組です。
開始から3年間で92人のことも立ちが、この学びの場から巣立っていきました。
所得による教育格差を地域の力で、注目に値する取組です。
(この記事は、NPO法人「地域生活支援ネットワークサロン」の理事日置真世さんの報告「釧路における生活保護世帯の中学校3年生への学習支援をきっかけとした地域実践」を参考に記載しました)
しかし、経済的な理由で塾代を賄えない世帯は少なくなく、子どもに学習の意欲があっても塾に行かせられないことも多々あります。結果的に子どもの学力、さらには高校進学や大学進学にも影響を与えかねません。
08年より開始した都の「チャレンジ支援貸付事業」は、昨年度、開始わずか1年で約3600件の低所得世帯に貸付決定されており、そのうち返済免除された世帯は実に約99%。それだけ、同事業によって救われた子どもたちがいるということです。
自治体によりこうした事業の財源が確保できないところもあります。その意味では、自治体間で教育力にも差が出てしまうという、最悪の結果が導かれる懸念もあります。
東京都の「チャレンジ支援貸付事業」概要
事業費(22年度)6.38億円/年
※対象の規模は、中学3年生約1800人、高校3年生約900人と試算。
貸付金の種類
(1)学習塾等受講料貸付金
・学習塾、各種受験対策講座、通信講座、補習教室にかかる費用の貸付
・貸付額は20万円(上限)で、対象は中学3年生・高校3年生
(2)受験料貸付金
・高校、大学(短期大学・専修学校・各種学校を含む)受験料の貸付
・高校受験:50400円(上限) ※1度の貸付で4回(校)分の受験料まで貸付可
・大学受験:105000円(上限)※1度の貸付で3回(校)分の受験料まで貸付可
?貸付対象者:生活安定化総合対策事業の対象者であり、かつ、中学3年生、高校3年生の子ども(20歳未満)を養育している方。
貸付決定件数:
H20年度 21年度 22年度(4月~12月)
決定件数 1,211件 3,632件 3,856件
償還免除数 1,197件 3,582件
※対象の規模は、中学3年生約1800人、高校3年生約900人と試算。
貸付金の種類
(1)学習塾等受講料貸付金
・学習塾、各種受験対策講座、通信講座、補習教室にかかる費用の貸付
・貸付額は20万円(上限)で、対象は中学3年生・高校3年生
(2)受験料貸付金
・高校、大学(短期大学・専修学校・各種学校を含む)受験料の貸付
・高校受験:50400円(上限) ※1度の貸付で4回(校)分の受験料まで貸付可
・大学受験:105000円(上限)※1度の貸付で3回(校)分の受験料まで貸付可
?貸付対象者:生活安定化総合対策事業の対象者であり、かつ、中学3年生、高校3年生の子ども(20歳未満)を養育している方。
貸付決定件数:
H20年度 21年度 22年度(4月~12月)
決定件数 1,211件 3,632件 3,856件
償還免除数 1,197件 3,582件
北海道釧路市のNPOの取組
さてこうした東京都の事業と好対照を見せているのが、北海道釧路市のNPO法人「生活支援ネットワークサロン」の“みんなで高校行こう会~Zっとscrum”の取組です。(写真は、Zっとscrumの拠点施設:釧路市のコミュニティハウス「冬月荘」です)
釧路市は人口約19万弱の北海道東部の中心都市。基幹産業の衰退が著しいうえ、少子高齢化や過疎化も進み、地方財政も非常に厳しく、多くの地域課題を抱えています。かねてより生活保護受給率が高い地域であり、最近は5%を超えました。特に母子世帯の割合は全国の約4倍で、高い離婚率、児童虐待件数、低学歴など子育て環境も厳しいのが実情です。
こうした厳しい現状の中、生活保護世帯の中学三年生対象に無料の学習支援として「みんなで高校行こう会」が2008年1月からスタートしました。
指導に当たるのは市役所が中心となって声かけした学生や地域の人たちです。受験勉強のプロではない彼らは、「子どもたちと一緒に悩み、一緒に考える味方として子どもたちと一緒に学んでいこうではないか」という共通認識を確認したといいます。こうして15名の中学三年生が参加して、第1期生の取組が始まりました。当初は生活保護世帯が対象でしたが、一般の子どもたちも参加するようになりました。
これは、「中学3年生対象の無料学習支援」ですが、「塾でも学校でもない、講師も先生もいない。大人も子どももありのまま向き合う学習会」なのだそうです。中学生は基本的に学習をしに集まり訳ですが、そこに一切の強制はなく、みな自主的に学習をします。そして、必要であればその場にいる大人が「チューター」として子どもに対応します。勉強を教える場というよりも、共に学び合う場に近い取組です。
開始から3年間で92人のことも立ちが、この学びの場から巣立っていきました。
所得による教育格差を地域の力で、注目に値する取組です。
(この記事は、NPO法人「地域生活支援ネットワークサロン」の理事日置真世さんの報告「釧路における生活保護世帯の中学校3年生への学習支援をきっかけとした地域実践」を参考に記載しました)
【参考】
教育費をかければ成績は上がるという説には、多くの議論があります。お茶の水女子大学・耳塚教授らが中心として行った大規模調査「JELS2003(2003年基礎年次調査報告児童・生徒質問紙調査)」の結果のうち、関東地方中都市の小学校6年生の学校外教育費の月間支出額と算数学力のデータについて見てみると、塾の月謝、家庭教師費等の学校外教育費の月間支出が0円の家庭では35点、5万円以上では78点と、後者の算数の点数は前者の2倍以上となっている。学校外教育費をかけるにつれて学力は高まっている傾向が表れています。