参考写真 平成11年(2000年)9月30日に発生したJCO臨界事故は、周辺の住民に健康不安や風評被害などの深刻な影響を与えました。県はその影響を払拭する政策に充てるために、平成11年度に「原子力安全等推進基金」を創設しました。
 この基金は、国からの交付金(放射線影響調査等交付金、ウラン加工施設事故影響対策特別交付金)を財源として、平成11年度から15年度のかけて、総額95億円が積み立てられました。
 その後、この基金はJCO事故の影響を受けた住民の健康診断事業や広く茨城県民のいのちと健康を守る事業に役立ててこられました。平成23年1月末時点での基金の残高は、16億6000万円(運用益は除く)で、その活用を広く議論する必要があります。
使途概算事業費
JCO周辺住民健康診断3億円
いばらき量子ビーム研究センター9億1千万円
県立中央病院(リニアック等)33億円
県立救急センター(中央病院救急病棟)19億3千万円
防災・救急ヘリコプター9億9千万円
日製水戸総合病院(リニアック等)4億1千万円
合 計78億4千万円
今必要な、県北医療拠点整備への支援
参考写真 昨年(2010年)7月、株式会社日立製作所は、日立創業100周年記念事業の一環として、茨城県の県北地域における医療体制を強化のため、日立市の日立総合病院に新たな病棟を建設することを発表しました。
 新たな病棟は、県北地域では初めてとなる救命救急センターの機能を有し、重症および複数の診療科領域にわたる救急患者を24時間体制で受け入れます。救急医療の中では最も高度な第三次救急医療への対応を図りこととしています。
 また、産科病棟には新たにMFICU(母体・胎児集中治療室)を6床設置します。日製病院では、医師不足で一時中止していた通常分娩の受付を、今年4月に再開しましたが、ハイリスクの出産を取り扱う「茨城県地域周産期母子医療センター(中核)」は休止されたままです。この施設によって、周産期医療センターの機能再開を図ります。
参考写真 日製日立総合病院は、日立製作所創業の地である日立市に、1938年に企業立病院としてスタートしました。現在、茨城県において、日立総合病院、多賀総合病院、ひたちなか総合病院(旧水戸総合病院)の合計3つの企業立総合病院の基幹病院です。1957年に茨城県における最初の総合病院として認可されるなど、全国的にも住民一人あたりの医師数が特に少ない茨城県における医療を先導してきました。現在、人口約20万人の日立市を含む県北地域約30万人の医療と健康管理を担う地域の中核病院として、2009年には、年間約29万人の外来患者、約13万人の入院患者、約4,800件の救急車搬送を受け入れています。
 茨城県の救急救命センターは、県南・県央地域に偏在しており、県北地域でのより高度な救急医療や周産期医療が望まれていました。
 日製日立総合病院は単に私企業立の病院という枠を超えて、地域医療の拠点病院です。
 日立市は、産科の医師確保の確保のために、産科医派遣元の東京医科大学と寄付講座の協定を結んでいます。寄付講座は産婦人科に関連する内容で、2010年4月1日から3年間開設され、市は年間5000万円(総額1億5000万円)を、東京医大に寄付します。東京医大は、8~17年目の指導医クラスの医師を始め、医師3人が日製病院に派遣されています。
 さらに、現在日立市は日製総合病院に最新の医療機器を導入して、一層の医師確保や診療体制の整備を支援することを検討しています。
 原子力安全等推進基金を活用して、日製総合病院の新病棟整備に支援を行うことが必要だと、強く主張します。