茨城県の名物は「工場立地」という意外な真実
参考写真 2月23日、東洋経済HRオンラインに「茨城県の名物は“工場立地”という意外な真実」という記事が記載されました。
 茨城県の過去10年間の立地面積は約1200ヘクタールで、他の都道府県を大きく引き離して全国第1位となっています。
 その要因をあげると、一つは、地理的な面での優位性です。茨城県は、日本の経済活動の4割を占める関東地方に位置し、首都東京に近く、広大な平野と豊かな自然に恵まれ、大地震や噴火、台風などの自然災害が少ないなど、企業の事業拠点として理想的な立地環境を備えています。
 第二の要因は、これまで整備を進めてきた交通ネットワーク等のインフラが完成段階を迎え、企業にとっての事業環境が飛躍的に向上したことです。
 例えば、つくばと秋葉原を45分で結ぶ鉄道「つくばエクスプレス」が平成17年に開業、「北関東自動車道」は今年(平成23年)3月には群馬県高崎まで全通し、「首都圏中央連絡自動車道」は平成24年度中に、関越道、東北道、東関道に接続し、つくばと成田空港が50分で結ばれます。また、国際物流を支える港湾も平成20年12月に日立港、常陸那珂港、大洗港が統合して「茨城港」が誕生し、新たな首都圏の空の玄関となる「茨城空港」も平成22年3月に開港しました。
 さらに、県内すべての市町村には高速大容量の情報に対応できる2.4ギガビットのブロードバンドネットワークが整備されており、東海村では世界最高クラスの大強度陽子ビームを利用する実験施設「J−PARC」が平成20年12月に稼動しました。この施設の利活用とともに、最先端の科学技術や研究施設が集積している世界の科学都市つくばとの連携が期待できます。
 また茨城県は、優秀な人材の確保、新鮮で多彩な農産物、魚介類などの食材、台風や雪などの自然災害な少ないなど快適な住環境にも恵まれています。
 東洋経済HRオンラインの記事は、いささかシニカルな表現ですが、茨城の実態を知らせてくれる記事になっています。正直少し嬉しい記事です。
茨城県の名物は「工場立地」という意外な真実
東洋経済HRオンライン(2011/02/23)
 茨城県の名物が、“筑波山とワラに包まれた水戸納豆”だけだと思っていたら大間違いを犯すことになる。
 茨城県を中核とする北関東が今や工場立地では日本一のスポットになっている。2000〜09年の10年間の工場立地面積累計で、茨城県は1200ヘクタール(ha)と断トツである。
 以下、工場立地のベスト5を並べると、静岡県959ha、愛知県948ha、群馬県856ha、兵庫県750haということになる。茨城県がナンバーワンの工場立地であることは、意外な事実である。
 最近、茨城県に新規に立地した企業を見ても、日野自動車、メルセデス・ベンツ、コマツ、日立建機、アシックス、雪印、伊藤ハムと多彩だ。はてさて、企業はなぜ茨城県に工場を持っていくのか。
首都圏市場と世界市場を両にらみで工場進出
 茨城県は、国内マーケットをにらめば、巨大な首都圏市場に近接している。これはともあれ地政学からいって大きなアドバンテージだ。
 しかも労働力人口があり、日立グループなどを基軸とした産業基盤の蓄積がある。工場用地となる平地も豊富で、しかも地価が安い。東京への通勤圏である神奈川、千葉、埼玉に比べれば、地価はウソのように安い。
 そのうえ、物流を支えるインフラが整備されている。東北、常磐の両自動車道、特に常磐は渋滞がないことで知られる。最近では、その両自動車道を横断する北関東、首都圏中央連絡の自動車道が貫通されようとしている。タテ、ヨコに自動車道が交錯し、物流は万全だ。
 港湾も茨城港(日立港・常陸那珂港・大洗港)、鹿島港がある。中国などのアジアを含めた世界市場への製品物流を考えれば、これらの港湾インフラが大きな武器になる。首都圏市場だけでなく、世界市場をにらんで工場立地できる利点がある。
 そんなこんなで茨城県の有効求人倍率もプラスで推移している、というのだから、さらに“意外な話”ということになる。
日野自動車の本社工場移転で雇用は急拡大
 トヨタ系の日野自動車の茨城県・古河への本社工場(66万平方メートル)移転は、かなり仰天もののインパクトがある。
 日野自動車は、社名のように東京・日野市に本社工場を置いてきたのだが、拡張余地がない。環境制約からも困難さを増すばかりで、しかも労働力を確保するのもままならない。しかし、古河に本社工場を移転すれば、それらのボトルネックが一挙に解消できる。
 「平らで広大な土地が関東圏に残されていた」。日野自動車が古河に新工場を決めた端的な理由を、同社の鈴木敏也・執行役員はそう語っている。
 鈴木氏はさらにこうも述べている。「新工場には500億〜600億円の第一期投資を行い、3000人を超える人間が働く場所になる」。かくて、日野自動車は「古河自動車」に進化するわけである。
 ここでは自動車部品ユニットの新モジュール化(分割別体構造化)がなされ、新モジュールがグローバルな生産工場に配送される。そして、その新モジュールを世界の各マーケットに近い所でノックダウン組み立て生産する。
 「なぜ、日本の古河なのか」――。鈴木氏の語るところでは、「それは世界、グローバルマーケットをにらんで」というのである。自動車の大規模工場が意を決して進出したことの意味は小さくない。自動車部品、機械関連の下請け・周辺の産業、企業が追随してくることもあるだろう。
 グローバルが変われば、日本も変わらなければならない。いつまでも変われない日本人も変わらなければならないときに差しかかってきている、とは先読みに過ぎるだろうか。
(東洋経済HRオンライン編集部)

参考:茨城の工業団地
参考写真