参考写真 4月16日、井手よしひろ県議は東海村役場に村上達也村長を訪ね、東電福島第一原子力発電所の事故に対する所感や東海第二発電所の再開問題などについて意見交換を行いました。これには、地元東海村村議会の井坂成子副議長、岡崎悟村議も同席しました。
 井手県議が、「福島第一原発の政府の事故対応は後手後手に回り、周辺住民や国民への情報の公開も十分ではない。原発事故をより深刻にしているのは、菅総理をはじめ政府民主党の責任が重いのではないか」とたずねたの対して、村上村長は「JCO事故の際の政府の対応は、初動の立ち上がりの鈍さや所感毎の縦割り行政の弊害など多くの問題を感じた。その点、今回の事故対応は体制づくりが迅速で、官邸のリーダーシップも感じられる」と語りました。しかし、「メルトダウンを防ぐための海水注入のタイミングやベントの時期は、遅きに失した感がある。政府の国民への情報公開は、放射性物質の拡散を予測するSPEEDIのデータを公開しないなど、危機感に欠けていると思う」と語りました。その上で、「原発事故対応について、ロシアをはじめとする諸外国の専門家の意見や、反原発の立場の学者の意見にも、菅総理は耳を貸すべきだろうだろう」とも述べ、政権の独善性を批判しました。
 福島原発事故の影響は、東海村にとってどのようなものがあるかとの井手県議の質問に、「村民の間では原発に対する不安が高まっている。住民の多くが、原子力は安全で、チェルノブイリのような事故は起こらないと思っていた。しかし、原発でいったん大きな事故が起きたら、全村避難という事態になることを、まざまざと見せつけられた。村民の命を預かるものとしては、今までの延長線では、原子力政策を考えることは出来ない」と、村上村長は応じました。
 東海第二発電所の震災対応については、「これまでは、何基もある非常用電源が全部止まることはない、“外部電源喪失”は絶対にない、という説明を信じてきた。しかし、全部ダメになることもありうることがわかった。15メートルの防潮堤をつくって津波対策をすればいいというような付け焼き刃の対応でいいとは思っていない。極論を言えば、原子炉が全て水中に没しても安全に停止するような抜本的な対策を施す必要がある」という考えを示しました。
 その上で、村上村長は、「東海村は首都圏に、最も近く福島の原発よりも厳しい場所にある。そうしたことを含めながら運転再開について考える必要がある。そのことは、東海村民だけではなく、30キロ圏100万人の生命と生活を守ることにも通じる」と述べ、運転再開については慎重に検討する必要があるとの認識を示しました。
東海第二原発の再開時期は“白紙”
 東海第二原発は、震災発生直後に自動停止し、その後、外部電源を失われました。3基ある非常用ディーゼル発電機のうち1基が津波の影響を受け、故障しましたが、残る2基で原子炉の冷却を続け、3日後の3月15日に「冷温停止状態」に安定しました。
 5月11日、東海第二発電所を運営する日本原子力発電は、2011年度の事業計画を公表しました。それによると、福島第一原発事故を受けて地震・津波対策に最優先で取り組むとしています。東海第二原発の運転再開時期は現時点で「白紙」としています。予定していた出力向上計画とプルサーマル計画は、見送りとするとしています。
 日本原電は震災後、短期的な地震・津波対策として、重要建屋の浸水対策や低圧電源車の導入などの安全対策を講じてきました。
 中・長期的な地震・津波対策としては、今年11月をめどに、高圧電源車の導入、使用済み燃料貯蔵プールの給水機能の強化などを予定しています。また、来年9月頃までには、重要建屋の水密扉の強化、発電機の冷却に必要な海水のくみ上げポンプを津波から守る防護壁(現在6.1メートル)のかさ上げなどを行うとしています。
 さらに、福島第一原発を襲った15メートル級の津波に対応するため、防潮堤の設置を検討しています。ただし、防潮堤設置は3年程度要することが明らかにされており、運転再開に向けた地震・津波対策には含まれていません。
(写真は、東海第二原子力発電所)