「エコフロンティかさま」も建設償還金を超長期化、県に債務負担を解消
参考写真 6月29日、茨城県は井手よしひろ県議が、昨年6月の県議会総務企画委員会で提案した地方公共団体の新たな資金調達法である「日本版レベニュー債」を発行することを正式に発表しました。
 県環境保全事業団が運営する公共の最終処分場「エコフロンティアかさま」を安定的に経営するために、「日本版レベニュー債」を発行し100億円を調達することになりました。
 そもそも、レベニュー債とは、レベニューボンドともいわれ、日本では事業目的別歳入債券と訳されます。地方自治体において、事業の目的別に発行される債券です。具体的には、水道事業における浄水場、下水道事業における下水処理場、市立病院や市民ホールなど公共施設と資金が直接的に対応する。浄水場債券、下水処理場債券、市立病院債券や市民ホール債券というような事例が想定されていました。
 このレベニュー債はアメリカの自治体では全体の6割程度を占めていると言われていますが、県の環境保全事業団が発行する今回の事例が日本では初めてとなります。
 通常発行されている地方債との違いは、償還の原資が一般的な税金によるものか、発行の目的の事業からあがる収益によるものかの違いです。
参考:井手県議、レベニュー債の積極的な調査研究を提案
参考写真 県環境保全事業団は、県が全額出資する三セク。2005年に開業したエコフロンティアかさまの総建設費約246億円のうち182億円を金融機関から調達し、操業10年間で毎年20億円ずつ返済する計画でした。しかし、当初計画した通り廃棄物が集まらず、収入に比べて返済額が過大となり、残高90億円の返済計画を見直す必要性に迫られていました。(環境保全事業団は、年間の処分場維持費16億〜17億円に対し売上金25〜27億円と黒字基調でしたが、無理な借入金返済が経営を圧迫していました。不足する資金を県の短期貸付金で凌いでいました。それでも2010年度には、約1億円の黒字を達成し、ムーディーズ・ジャパンからA1の評価を受けています)。
 昨年6月の井手県議などの提案を踏まえ、昨年8月には、外資系のゴールドマン・サックス証券(GS)を交え検討を具体化。エコフロンティア笠間は将来的にも収益性は高いために、新生信託銀行が受託し証券化。優先受益権をGS社に譲渡して投資家に販売することになりました。6月21日に、事業団、GS社、新生信託の三社が正式に契約を交わしました。償還期間24年以内、調達金利は2.51%です。
 レベニュー債に発行で、毎年の返済額は年間4億円に圧縮され、経営環境が改善します。
 県のメリットとしては、2010年度当初で、55億円に膨らんだ事業団への短期貸付金の縮減が図られます。レベニュー債は、県の債務保証がいらないために、住宅供給公社などの破綻処理で莫大な債務を背負ったことを考えると、県民のリスクを回避することが出来ました。

茨城県議会総務企画委員会議事録(2010/6/10)
井手よしひろ県議
 この債券(レベニュー債)は、今まで私どもが発行を経験している地方債と違いまして、いわゆる事業ごとの目的別に債券を発行して資金を調達する。
 例えば、下水道事業であるとか、上水道事業であるとか、市立病院であるとか、市民ホールであるとか、こういったものに幾らの資金が必要であるというところを明確にして、その売り上げや、そこから得られる利益をもとにしてその債権の返済に当たるという、非常に収支の目的、また、返済の金額をどこから出すかという、いわゆるキャッシュフローから債権を返済をするという非常にわかりやすい構造になっている債券だそうで、アメリカなどの地方自治体は、ほぼ半分以上、6割近くがこのレベニュー債による資金調達であるというふうに新聞等には、また、さまざまな資料には書いてありました。
 しかし、なかなか日本には定着できずに、今回、青森県が初めて有料道路の負債の返済にこのレベニュー債を活用する。そして、その債権を返済するためには、有料道路の通行料で元利を払う、返済をするという仕組みを検討しているということでございますけれども、茨城県の税務当局は、こういった一つの債券でございますから、こういったものについて今検討をされているのか、また、青森県の実情を御存じであればお示しいただきたいと思います。
鈴木財政課長兼行財政改革・地方分権推進室次長
 レベニュー債ということで、大変申しわけないのですけれども、私も委員と同様に、昨日の日経新聞の記事を読んだ限りの情報でございますが、今まさに御説明いただきましたように、一定の収入を得られるということで、その収入を充当するという、借り入れということで承知しております。
 ただ、それを本県の事業の中にということについては、正直申しまして、現実にはまだ特段の研究はしておりません。
井手県議
 この青森県も、なかなか今まで一つのレベニュー債の実現をできなかったようですけれども、今回、何でこれができるようになったかというと、いわゆる幹事社といいますか、債券を引き受けてくださるところが、ゴールドマンサックスがそこについたということ、外資系ですよね。その証券会社が青森県との交渉のいわゆる舞台に乗ってくれた。これが交渉が進んだ原因だというふうに、青森の県会議員に聞いたら、その話をしていました。茨城は勉強できないのですかね。
財政課長
 直接的にレベニュー債ということで、ちょっと私も不勉強な面があって申しわけないのですけれども、資金調達につきましては、御案内のように、昨今、県債の借入残高が急増しておりまして、1兆8,000億円、1兆9,000億円ということで一般会計でなろうとしております。
 その資金の調達をどう効率的に、合理的にやっていくかというのは、本当に私どもにとって最大の課題でございまして、昨年度中途から、民間の銀行の経験者の方を資金管理の──資金管理監というポストなのですけれども、期限つきということで採用させていただきまして、資金調達の多様化ということで、今、鋭意、いろいろな研究を進めているところでございます。
 その中で、一つ、始めたということではないのですけれども、超長期債ということで、今までは主に10年の借り入れが主でございましたけれども、20年の借り入れを行うとか、それから、ゴールドマンサックス、いわゆるシンジケート、そういう取りまとめをしていただく都市銀行的なものになろうかと思うのですけれども、そういったところと情報交換というか、勉強会、銀行さんの方でもいろいろ情報をお持ちですので、そういったところを始めたところでございます。
井手委員
 このレベニュー債のいいところは、きちんと借りる目的、返す原資、それが明記されますから、いわゆる一般会計から切り離せることができるというメリットが大きいと思うのです。一般会計の中での仕事をこれで賄うということは、逆に趣旨が違ってきてしまうのかもしれませんけれども、水道事業であるとか、いわゆる特別会計の中の手法としては、見るものも、検討するに値するものがたくさんあると思いますので、どうか御検討をいただきたいと思います。