新政権に毅然と対応、政治空白で失った国益回復を

 今国会のスタートは、バラマキ体質の予算の議論から始まった。そして大震災と原発事故に遭遇し、われわれは「被災地の復旧・復興に向けて、政治休戦をしてでも協力する」と言ったが、政府・与党の対応は極めて緩慢だった。(菅直人首相に)内閣不信任案を突き付け、以後、(菅首相の)“偽装退陣”による政治空白が続く。
 その間、遅々として進まない震災対応や外交の空白は目に余り「必要な立法活動は国会が中心にならなければならない」ということで、わが党の提案が丸のみされた復興基本法や、原発の賠償仮払い法などを次々と成立させた。
 衆院で24本、参院で4本。合計28本の議員立法が成立した。歴史上まれに見る数であり、これは野党が立法活動をリードしたということに他ならない。参院のねじれの構造は、議員立法を推進すると前向きに捉える一面も必要だ。
 議員立法をリードする中で、民自公の3党を軸に合意形成の土俵をつくり出してきた。既に、予算のバラマキを改めると同時に、歳入確保のための赤字国債発行法案を成立させたという結果もある。この3党合意は、今後の政治を見る上で重要なエポック(画期的な出来事)だ。
 (国会)最終盤で新たな民主党政権が誕生したが、評価はこれからだ。新体制に強く求めたいのは、3党で既に合意したものはしっかり守り実行する。また、築かれた合意の土俵を生かして、とりわけ復旧・復興の課題、当面の最優先課題に真摯に取り組むことだ。われわれも積極的な提案も含めて、今後前向きに対応したい。
 また、速やかに(臨時国会を召集し)本会議を開いて、新首相の所信を内外に明らかにすべきだ。代表質問、予算委員会を開き、基本的な議論を国民に提供することを求めていく。
 外交や安全保障、円高などの経済対応などさまざまな課題がある。失われた国益を回復すると同時に、日米、日中といった重要な外交関係を立て直さなければならない。それに対して、野党の立場から、毅然と物を申していく。
 午前中の参院本会議で、(西岡武夫)議長から異例の言及があった。一つは、震災対応の遅れは、ねじれ状況の参院のせいではなく、むしろ政府・与党の怠慢に帰するところが大きいという厳しい指摘。もう一つは、最高裁から憲法違反と断罪された選挙制度について、投票価値の平等を実現するために、真摯に成案を得なければならないということ。正鵠を射た発言だ。選挙制度(改革)は、衆院にも同じ課題が突き付けられている。憲法に適合する議論を誠実に推進していかなければならない。
 (野田新首相は)民主党で3人目の首相だ。(民主党は)総選挙で掲げたマニフェスト(政権公約)も、骨格的な部分を見直すという方向性を出しているので、しっかりやり遂げてもらいたい。そうなれば政権の正統性もぐらつき、(いずれ)国民の信を問う時が来ると見なければならない。常在戦場を心掛けてきたが、あらためて公明党の日本政治における役割、存在価値を自ら見直し、備えを固めたい。
 今年の統一選や統一外、被災地における選挙を経て、新たな「戦力」が続々と誕生してきた。公明党の第一の持ち味は、そうした地方議員、国会議員のネットワークを通じて政策を実現していく「チーム力」の発揮にある。力強い団結の下に、日本の政治の未来を切り開いていこう。