参考写真 8月26日、東京電力福島第1原発事故で放射性物質に汚染された廃棄物の処理や土壌などの除染を国の責任で行う「放射性物質汚染対処特別措置法」が議員立法として成立しました。
 今回の原発事故では、大量の放射性物質が放出され、農畜産物や土壌、建物をはじめ環境汚染が各地に広がっています。しかし、これまで一般環境中に放出された放射性物質による汚染に対処する法律がなかったことに加え、政府が新法案を提出できず、対応が遅れたことが被災地の混乱を招き、復旧・復興の足かせになっていました。汚染で不安を抱く住民の健康を守り、避難者が一日も早く故郷に戻るためにも早期の法整備が急務でした。
 公明・自民と与党はともに骨子案を持ち寄り、スピード重視の観点から協議。与野党が骨子案から法案を策定した新しい合意形成の形で議員立法が成立しました。
――放射性物質汚染対処特別措置法のポイント
 汚染が著しい土壌などの除染が必要な地域を「特別地域」に指定。国が地方公共団体の意見を聞いて除染措置の実施計画を立て、除染します。地域の指定や基準は今後、基本方針や環境省令で定めることになりますが、特別地域は原発から20キロ圏内の警戒区域や計画的避難区域を想定しています。
 また、放射線量が局地的に高いホットスポットや特定避難勧奨地点など、特別地域以外で汚染が懸念される地域は、国が「汚染状況重点調査地域」に指定し、都道府県や市町村が除染を行います。必要に応じて国が代行し、都道府県知事や市町村長が国に対し、地域指定を要請することも可能です。
 がれきなどの汚染廃棄物については、汚染状況により特別に管理が必要な地域を「対策地域」に指定。国が処理計画を立て、収集から処分までを国の責任で行います。対策地域以外でも一定基準を超えるものは、国が処理。一定基準以外で8000ベクレル以下のものは現行通り、廃棄物処理法に基づき一般廃棄物として処分します。
――公明党が主張が盛り込まれた内容
 第一に、国の責任と地方公共団体の役割の明確化です。今回の汚染は原発事故が原因なので当然責任は東電にありますが、原子力政策を推進してきた国にも重大な責任があります。公明党は、放射性廃棄物の処理や除染は東電と国が責任を持って実施し、あくまで自治体は運用面において協力することを訴え、明記しました。
 また、処理に対する費用負担に関しても、まず国が全額負担し、後に東電に求償するようにして、自治体は一切負担しないものと主張し、条文に規定しました。
 さらに、がれき等の最終処分場の確保については、放射線濃度が高くない場合でも、住民の不安を拭い去ることは難しく、自治体による確保は困難なため、国の責任で確保することとしました。
 そのほか、重点調査地域の除染措置を都道府県や市町村が行うことについては、体制や技術面などで対処が難しいという事態に配慮し、自治体の要請があれば国が代行し、必ず請け負うとしました。
――2012年1月1日施行
 「放射性物質汚染対処特別措置法」の施行日は、地域指定や技術基準の策定等に時間を要するため、来年1月1日とされました。しかし、除染は早急に取り組むべき喫緊の課題であり、本法の枠組みが動き出すまでの間、原子力災害対策本部が8月26日に公表した「除染に関する緊急実施基本方針」に基づき、自治体や地域住民と連携して除染の取り組みを支援してまいります。