会計検査院が今月公表した2010年度の決算検査報告では、税金のムダ遣いなどと指摘された金額が計4283億円に上りました。震災復興や社会保障の財源などで国民の負担増が避けられない中、ムダゼロへの取り組みを一層進めていくために、検査院の機能強化が求められています。
ムダ遣い 4283億円 使えない岸壁など防災対策でも問題目立つ
参考写真 2010年度決算検査報告で、税金のムダ遣いや不正経理などと指摘されたケースは全体で568件、4283億8758万円に上りました。このうち、法令違反などの「不当事項」は425件、141億4122万円です。指摘金額の総額は、1兆7904億円と突出した09年度から4分の1以下になりましたが、これまででは2番目に高い金額。3番目の08年度(2364億円)と比べると、ほぼ倍増しています。
 検査院はここ数年、有効に使われていない特別会計などの「埋蔵金」について積極的に指摘してきました。
 今回の検査でも、一般会計が財源を国債発行に頼っている状況とは正反対に、特別会計や独立行政法人から多額の剰余金が“発掘”されました。
 例えば、新たに原子力発電所が建てられる自治体への交付金支払いに備えて、エネルギー対策特別会計で積み立てている「周辺地域整備資金」 について検査院は、東京電力福島第1原発事故などの影響で新規建設が遅れることから「657億円は縮減が可能」と指摘、経済産業省に資金規模の見直しを求めています。
 一方、3月の東日本大震災を受け、防災対策でも問題の指摘が目立ちました。
 港湾施設の大規模地震対策として、緊急物資の輸送確保などのために耐震化された岸壁(耐震強化岸壁)なのに、輸送に支障を来す消波ブロックが置かれていたり、コンテナを積み下ろすクレーンの免震化が行われていないことが判明。検査院は「大規模地震発生直後に十分に機能を発 揮できない恐れがある」と指摘しました。問題があった岸壁の整備費は、国費相当額で792億円を超えていました。
 土砂災害の警戒区域などへの指定についても、19道府県で、必要な調査を実施しながら指定されていない地域が6万カ所以上に達しました。このうち、調査を終えてから2年以上が経過している2万3524カ所に限っても、調査費は41億円超(うち国費は13億円超)に上っていました。
 検査院は今後、多額の費用が投入される震災復興事業についても、現場の状況に配慮しながら検査を行う方針です。被災地のためにも、適切な予算執行が望まれています。
検査の現状と課題、指摘の対処は省庁任せ、予算に反映させる仕組みが必要
 会計検査院は予算の一層の効率化を達成するため、いわゆるPDCAサイクル(予算の編成→執行→評価→次の予算への反映)の各段階における税金の使われ方を検査し、問題があれば原因や改善方法なども含めて指摘しています。
 検査のポイントは、主に(1)正確性(2)合規性(3) 経済性(4)効率性(5)有効性―の5点です。
 具体的には、所有財産が決算書に正しく記載されているか(正確性)、対象外のものに補助金を交付していないか(合規性)、工事の計画が不経済、非効率なものになっていないか(経済性、効率性)など、多角的な観点からチェックします。こうした検査は一定の成果を挙げていますが、課題は検査院の指摘をどう予算に反映させるかです。
 検査院は検査結果が予算に反映されるよう、国会や財政当局、検査の対象機関に説明を行っていますが、指摘事項への実際の対処は、基本的に指摘を受けた省庁や団体に任されています。
 職員による不正経理をはじめ、いいかげんな契約や予算の過大な見積もりなど同じような指摘が毎年度の検査報告で繰り返される実態は改める必要があります。
 法令違反などの「不当事項」に対しては、会計検査院法で「是正改善の処置をさせることができる」(第 34条)と定められていますが、それすら実行されているとは言い難い現実があります。
 10年度の検査報告には、1946年度から2009年度までの検査報告で指摘された不当事項について、是正措置が行われていないものは合わせて507 件、131億円余りに上ることが示されています。
 検査院の指摘にきちんと対処させるためには、まず検査院の権限を強化しなければなりません。
 また、そもそも検査院が指摘した問題点について、行政内部のチェックで防止・発見・修正できるようになれば、かなりのムダが省けるようになります。
 検査院の指摘を予算に反映させる仕組みの検討が求められているのです。
会計検査院の機能強化に関する公明の取り組み
 公明党は税金のムダ遣いをなくすため、会計検査院の権限強化を一貫して訴えるとともに、国会における決算審査の充実などに全力で取り組んできました。
 検査院の判断で行った検査内容を随時、国会に報告できるようにした2005年の会計検査院法改正をリードしたほか、決算検査報告の国会提出時期の前倒しなども実現してきました。
 2009年からは、検査院による「不当事項」の指摘の実効性を高めるため、指摘を受けた省庁などに対して、是正措置などの状況報告を義務付ける会計検査院法改正案を繰り返し提出しています。
 公明党は、検査院の権限を強める法改正の実現を急ぐとともに、ムダの一掃へさらに力を注いでいく覚悟です。
参考:平成22年度決算検査報告の概要