参考写真 11月16日、東京電力福島第1原発の事故後、福島市大波地区の農家が生産したコシヒカリの玄米から、国の暫定基準値(1キロ当たり500ベクレル)を超える630ベクレルの放射性セシウムが検出されたことが判明しました。政府は翌17日、大波地区でつくられたコメの出荷制限を福島県の佐藤雄平知事に指示しました。
 日本人の主食であるコメの放射能検査体制について、農林水産省と福島県は特に慎重に検査態勢を敷いていました。田植え前に土壌を検査し、基準を超えた土地への作付けを禁止しました。収穫前には予備調査、収穫後に本調査と二回の検査を通して水際で、汚染米を防ぐ努力をしてきました。その結果、福島県は全検体が規制値を下回ったとして、10月12日に安全宣言を出していました。
 しかし、農家の依頼でJA新ふくしまが、対象のコメを自主検査して、基準値を超えたことが判明しました。
 農家が生産したコメ840キロは全量市場には流通していません。JA新ふくしまは、このうち300キロを、倉庫に保管し、隔離しています。JA新ふくしまは、管内の全出荷者1800戸のコメの検査も行うことにしています。
 大波地区は、山あいの農村地帯。コメが作られた水田は、山からの沢水を利用していたといわれています。報道によると、その水に放射性セシウムが多く含まれていた可能性が指摘されています。井手よしひろ県議が同地区を訪問し、国が進める除染作業を視察した際も、面的に毎時1マイクロシーベルトを超えていました。こうした高線量の放射性セシウムは、水に溶けた形で濃縮されるため、水の集まる場所に放射性物質も集まる傾向があります。
 なぜ、この農家のコメが放射性セシウムによって汚染されたか、国は徹底的にその原因を調査し、明らかにする必要があります。
 また、コメの検査態勢も見直す必要があります。
 大波地区の稲作農家は154戸ですが、検査はたった3地点にすぎません。やはりサンプル検査には限界があったと言わざるを得ません。
 コメの放射能汚染は、今年限りの問題ではありません。今後、数十年の単位で続けなくてはならない問題です。
 消費者の安全のためには、全量検査が望ましいことは論を待ちません。全国的にその検査が無理であるならば、最低限、放射性物質汚染対処特措法による「汚染状況重点調査地域」については、全てのコメを検査することが必要です。
(写真は、大波地区の水田と除染作業が行われる民家)
コメ基準値超の放射性物質検出
 (2011/11/25更新)福島市の大波地区で収穫されたコメから、国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出された問題で、新たにこの地区の別の5戸の農家から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出されました。
 このうち1戸の農家の水田では1キログラムあたり1270ベクレルの放射性セシウムが検出されたことが県の調査でわかりました。