茨大地域研がアンケート調査結果を公表
 11月25日、茨城大学地域総合研究所(茨大地域研)が実施した『原発事故と日常生活に関するアンケート調査』の結果が公開されました。今回のアンケート調査は、水戸市住民のうち20歳〜65歳の有権者3000名を水戸市選挙管理委員会の選挙人名簿から無作為に抽出して行われました。調査票有効回収数は867通で有効回収率は28.9%でした。
 東海第2原子力発電所の再稼働の是非についての設問では、89%が再稼働に慎重な考えであることが分かりました。
「なるべく早く運転再開した方がよい」4%、「現在の老朽化した原子炉に代わる新型炉を新設する」4%、「耐震・防潮対策を徹底するまで運転再開するべきではない」40%、「再稼働は凍結し、東海第二原発の今後について白紙から議論すべき」15%、「運転を停止したまま廃炉に向けて準備し原子炉の新増設はしない」34%との回答でした。
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 この結果は、今後の東海第2発電所の再稼働の議論にも大きな影響を及ぼしそうです。 
 また、「東海第二原発は営業運転開始から32年以上たち、経年変化に合わせた保守・点検・評価や劣化対策が行われています。電力会社の事業計画では、今後この原発の発電出力をさらに向上させながら稼働継続していく計画です。あなたはこのような事業計画についてどのようにお考えですか」との設問の結果は、今年9月に公表された東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市の住民を対象としたアンケート調査との対比が、非常に特徴的となりました。
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 東海村では、「慎重に運転すれば危険はない」との回答が60%であったのに対して、水戸市では21%に過ぎず、反対に「保守・点検を適切に行い慎重に運転しても危険」との回答が東海村27%、水戸市64%となっており、全く逆転した回答割合となりました。
アンケート調査結果での世論誘導は問題
 ところで、この茨大地域研のアンケート調査を報道した毎日新聞(2011/11/26付け)の記事について、一言、論評しておきたいと思います。
東海第2原発:9割が再稼働慎重 水戸市民に茨大がアンケ
 日本原子力発電東海第2原子力発電所(東海村)の再稼働の是非について、水戸市民に対して茨城大学地域総合研究所が実施した住民アンケートで、約9割が再稼働に慎重な考えであることが分かった。このうち「廃炉に向けた準備を」と答えた人は3割以上。また、東海村の村上達也村長が言及している再稼働時の住民投票実施に対し、肯定的な意見が6割以上を占めた。
 今回の調査は、県庁所在地の水戸市が同原発の半径20キロ圏内に含まれる上、居住人口が70万人以上と全国最多なことから初めて実施。20〜65歳の男女計3000人に調査票を郵送し、7〜8月に867人から回答を得た。水戸市に先立ち東海村と隣接3市の住民約4000人を対象にアンケートを実施、約7割が再稼働に慎重との結果が出ている。

と記していますが、問題点が3つあります。(下線はブログ管理者が加筆しました)
 その第1は、「東海村の村上達也村長が言及している再稼働時の住民投票実施に対し、肯定的な意見が6割以上を占めた」との表現です。アンケートの設問には、「再稼働時の住民投票」の是非を問うたものはありません。問17に「原子力施設の建設や新たな発電事業の実施などの問題は住民投票で決定するべきだ」との設問があります。茨大地域研の分析では、「これまで国策として推進されてきた原子力発電所をはじめとした原子力関連施設の建設であるが、福島第一原発事故後には、関連施設の新設・増設だけではなく運転停止した既存原発の再稼働についても地元の了解なしには前に進まない状況になってきている。そのような中で、住民投票という地元住民の意思表示の手段が原子力政策との関係であらためて注目を浴びるようになってきている。東海第二原発の再稼働問題を抱える地元住民でもある水戸市民の6割以上が住民投票による意思決定を必要と考えている結果として、注目される」と記載されています。しかし、この設問から多くの住民が再稼働時の住民投票を求めているという結論の出し方は、非常に乱暴であり、恣意的ではないでしょうか。素直に設問で「再稼働時にも住民投票を行うべきだ」と、問いかけるべきでした。この茨大地域研の見解に輪をかけて「東海村の村上達也村長が言及している」と記事にすることは、書き手の主観であり、報道の域を脱していると思います。
 第2に、「今回の調査は、県庁所在地の水戸市が同原発の半径20キロ圏内に含まれる上、居住人口が70万人以上と全国最多なことから初めて実施」とありますが、茨大地域研のアンケート報告書には、「居住人口が70万人以上と全国最多なことから初めて実施」とは全く書かれていません。これも、記者がアンケート調査結果に付け加えた不確かな情報です。
 第3に、東海村、日立市、ひたちなか市、那珂市の調査では、「耐震防潮対策を徹底するまで運転再開すべきではない」40%、「再稼働は凍結して地域で白紙から議論すべき」13%、「運転停止したまま廃炉に向けて準備を」32%であり、再稼働に慎重な意見は85%に達しています。「約7割が再稼働に慎重」との表現は事実誤認だと指摘しておきます。
 なお、わたくしは、東海第2発電所の再稼働には慎重な立場であり、東海村をはじめとする周辺自治体の住民投票(自治体による住民アンケート)も吝かではないと思っています。しかし、アンケート調査で世論を誘導しようとする手法には同意できません。
参考:『原発事故と日常生活に関するアンケート調査』結果の概要・水戸市民3000人を対象にしたアンケート
参考:「地域社会と原子力に関するアンケート調査供弖覯未粒詰廖陛豎ぢ次日立市、ひたちなか市、那珂市民4000人へのアンケート調査)