1月7日、次期衆院選に向け、民主党がマニフェスト(政権公約)の策定作業に着手するとの報道がありました。仙谷由人政調会長代行が会長を務める「経済財政・社会調査会」が、1月中には有識者などからのヒアリングを始めると言われています。
新政権公約の作成に着手=仙谷氏主導、難航は必至−民主
時事通信(2012/1/7)
 今年中の衆院解散の可能性が指摘される中、民主党は次期衆院選マニフェスト(政権公約)の作成に着手する。今月下旬にも「経済財政・社会調査会」(会長・仙谷由人政調会長代行)が始動、有識者のヒアリングを経て党内論議を加速させる方針だ。仙谷氏は、野党が「ばらまき」と批判する子ども手当などの看板政策を大幅に見直し、財政再建に軸足を置く内容を目指すとみられる。しかし、消費増税反対派の反発は確実で、調整は難航必至だ。
参考写真 「財政再建に軸足」とか「実現性を重視」などと報道されていますが、あまりにも国民をバカにした話ではないでしょうか?
 民主党が政権を奪取した2009年マニフェストこそ、現在の民主党政権の政策基盤であり、その十分な検証なくして、国民に新たな公約などできるわけがありません。
 この時のマニフェストには、「中学卒業までの子ども1人当たり月額2万6000円の子ども手当」「高速道路料金の原則無料化」「ガソリン税などの暫定税率を廃止し2.5兆円の減税」「年金制度を一元化し、月額7万円の最低保障年金を実現」「後期高齢者医療制度の廃止」など、華々しい政策がずらりと並んでいました。「八ッ場ダムの建設中止」も大いに注目されました。
 しかし、2012年度予算政府案や税制改正大綱で明らかになったように、これらの公約はことごとく守られず、実現の見通しも立っていません。八ッ場ダムも建設継続が決まりました。2009年マニフェストは完全に崩壊したのです。
 これは、野党が実現を妨害したのでも、東日本大震災で財源が不足したためでもありません。初めから財源の裏付けがなかったのです。民主党幹部は、マニフェスト実現に必要な総額16.8兆円を生み出す方法を問われると、「予算の組み替え」や「歳出削減」で可能だと主張。消費税について、当時の鳩山代表は「当面の間は5%で十分まかなえるという試算が出ている。4年間は増税の議論をする必要はない」と豪語していました。
 しかし、政権を奪取して、初めて財源確保が困難だと気付いたのか、民主党は2010年の参院選マニフェストで、「消費税を含む税制の抜本改革に関する協議を超党派で開始します」との一文を盛り込みました。通常の政策経費さえ調達が困難になり、16.8兆円の財源を必要とするマニフェストなど実現不可能であることを事実上、認めたものといえます。
 現在、民主党内では「消費税増税派」と「マニフェスト順守派」が対立しているようです。前者は、マニフェストの破綻を知りながら、それを正式に認めない点で不誠実です。後者は、マニフェストの崩壊を理解できない点で、政治家としての判断力に疑問符が付きます。
 虚構の公約で国民を欺いた民主党の責任は、非常に重いものがあります。マニフェストとともに政権の正当性も崩壊していることを強く指摘しておきたい思います。