参考写真 毎日新聞の地方版に「『脱原発』は可能か」という、特集記事が掲載されています。東海第2発電所に関する背反する二人の意見を共に掲載し、読者に「脱原発」に関する、様々な視点を提供するのが目的。読んでいても、非常に興味深い意見が紹介しれています。
 その中でも、特に印象的だったのが、「原発事故で避難した元原電役員T.Kさんのインタビュー記事です。T.Kさんは、1944年生まれ。1974〜81年まで東海原発に勤務し、東海第2原発の建設などのプロジェクトに携わりました。原電退職後の05年から日本原子力産業協会(東京都)の役員を務め、現在、福島原発事故のため福島県富岡町の自宅から避難、須賀川市の借り上げ住宅で暮らしています。
 村上達也東海村長の「脱原発」発言をどう受け止めているかとの毎日新聞の記者の問いかけに、T.K氏は「東海第2原発は村長のポケットマネーでできたものではなく、建設したのは原電だ。これまで電力料金や税金を支払ってきた国民の財産とも言える。原発の即停止は社会経済に大きな影響がある。これをどうするかは、国民的な合意によらねばならない」と回答しています。
 このことばに、現在の原電や東電など電力事業者の奢りの本質が垣間見られると思います。確かに、原電も東電も民間事業者であり、相当の企業努力を積み重ねて今日があることは理解できます。
 しかし、それは国策としての電力事業で、総括原価方式という絶対に黒字になる、言い換えれば、費用を全て利用者に転嫁できる仕組みの中で運営されてきた企業であることを忘れてはなりません。T.K氏は、東海第2原発は「これまで電力料金や税金を支払ってきた国民の財産とも言える」のであり「建設したのは原電だ」とのことばとは、明らかに矛盾するということが、自分自身では理解できていないようです。
 地元の住民の代表である村上村長のことばを矮小化する態度は、どうしても理解できません。
 党人の立場を離れて、東海原発から8キロ地点に住む一人の市民として提案させていただくならば、日本原電は国有化または特殊法人化すべきだと思います。T.K氏は「原電は水力も火力も持っておらず、残る一つの主要原発である敦賀原発(福井)も停止している。発電に伴う収入が原電に入らなくなれば、廃炉費用や廃棄物処理費用などが消費者負担になる可能性もある。再稼働が遅れるだけでも原電が債務超過状態になり、東海第2の社員や協力企業など広範囲に影響が出ることは避けられないだろう」と語っています。私もその通りだと思います。
 しかし、だからといって安直に老朽化し、周辺住民へのリスクが高い原電の2つの原子炉を再稼動させることは出来ません。国民(企業も含む)は、電気料として原電にお金を払うことも、税金で払うことも、その財布は同じです。そう考えるならば、日本原電を国の管理として、発電用原子炉は全て停止させ、国内54機の原子炉を順次廃炉にするための専門集団として再組織化することが得策ではないでしょうか。日本の原子力発電のリーディングカンパニーを、原子力のソフトランディングのトップ企業に変身させることを提案します。
 地域住民の安全を守り、地域の住民の雇用を守る方策として、国には真剣に検討していただきたいと思います。
「脱原発」は可能か
毎日新聞茨城版(2012/1/17付け)
原発事故で避難した元原電役員T.Kさん
◆村上達也東海村長の「脱原発」発言をどう受け止めているか
◇考えの方向性はいいが、東海第2原発は村長のポケットマネーでできたものではなく、建設したのは原電だ。これまで電力料金や税金を支払ってきた国民の財産とも言える。原発の即停止は社会経済に大きな影響がある。
これをどうするかは、国民的な合意によらねばならない。村長としては、福島原発事故の徹底的な原因究明と、安全対策がどこまでできるかを確認することを明らかにするよう、国や電力会社に促す責任がある。
◆東海第2原発は再稼働すべきか
◇避難者の立場としては、現在のような未熟な防災対策では動かしてもらいたくない。だが廃炉にすれば、安い発電単価の電源を失う。その上、原電は水力も火力も持っておらず、残る一つの主要原発である敦賀原発(福井)も停止している。発電に伴う収入が原電に入らなくなれば、廃炉費用や廃棄物処理費用などが消費者負担になる可能性もある。再稼働が遅れるだけでも原電が債務超過状態になり、東海第2の社員や協力企業など広範囲に影響が出ることは避けられないだろう。
◆東海村が進める「原子力センター構想」をどう評価するか
◇J−PARCなど村内の研究施設を活用することは理にかなっているが、日本原子力研究開発機構に依存しすぎる面があるのではないか。原発関連に依存しないまちづくりを目指すなら、これに代わる収入を考える必要がある。そうなれば、周辺自治体との合併や、放射線に関する民間研究機関などの集積を目指すことが課題になる。また研究施設の事故に対して住民の安全を十分に確保する必要があるし、施設から出る放射性廃棄物の問題もある。外国人研究者が村へ来やすいようにするなら、成田空港をはじめとする交通アクセス改善も必要だ。