再稼動か、廃炉か、二者択一では東海村の未来は開けない
参考写真 1月22日、東海村議選(定数20)の投開票が行われ、新たな議員が決まりました。公明党の2候補は、5位、7位といずれも上位当選を果たしました。当選者の党派別の内訳は、公明2人、共産2人、民主1人で他は無所属で15人でした。
 注目の投票率は、前回 を7.48%も下回る59.52%と低迷。過去最低となりました。
 東日本大震災、福島第1原発事故後、初めて行われる選挙で、地震により緊急停止し、津波により緊急冷却用発電機の一部に深刻なダメージを受けた東海第2発電所の再稼働が大きな焦点であった選挙戦でした。
 マスコミの多くは、この村議選が原発の再稼働か、廃炉かの二者択一を迫る報道を繰り返しました。しかし、過去最低の投票率、反原発を掲げた共産党の現職の大幅減票、日立製作所や原子力事業の労組が推す候補の大量得票などの結果を見ると、マスコミの目算は見事にはずれたようです。
 毎日新聞が企画したアンケート調査がその恒例です。廃炉か継続を問う、紋切り型の質問に、回答した候補者はわずか21人中14人でした。アンケート自体がボイコットされたといっても過言ではありません。公明党の2候補は、しっかりと回答はしましたが、「その他」と答えざるを得ませんでした。(当然、その他と回答した理由を細かく記述しましたが、紙面で紹介されることはありませんでした)
 投票日翌日の23日、朝日新聞は、その解説記事で「結論先送り」との見出しを付けました。しかし、それは村議選という民意の結論を軽視するものです。現時点で、東海村民は再稼働か、廃炉かという早急な結論を出さず、慎重に議論を深めよとの判断を下したととらえるべきです。朝日新聞も「結論」とは、村議会が「再稼動反対」「廃炉」という結論を出すことを前提にしているようですが、これはあくまでも朝日新聞の主張であり、<解説>記事の域を超えています。
 東海第2発電所を廃炉にした場合、雇用や関連事業者の仕事は守られるのか、村の財政への影響はどうなるのか、そもそも日本原電はどのように存続させるのか、等など住民の不安に村議会は応えなくてはなりません。原子力発電に頼らない、東海村の活性化策を明確に示す必要もあります。日本で最初に原始の灯がともった東海村は、次なる選択に冷静な判断をするための準備をしているのです。
 なお、県議会公明党は、福島原発の事故が収束し、15メートル級の津波対策が万全となり、30キロ圏内の緊急対応体制が整備されるまで、東海第2発電所の再稼働は容認できないという立場に、いささかも変わりはありません。その条件が満たされなければ、東海第2発電所は廃炉にするべきです。
許されぬ結論先送り
朝日新聞(2012/1/23茨城版)
<解説>村議選は、村上村長が思い描いた「東海第二原発の運転再開の是非を真っ正面から問う選挙戦」にはならなかった。
 告示が1カ月後に迫った昨年12月、候補者が定数に満たなくなるのではという観測が流れた。最終的に定数を1人上回って選挙戦に突入したものの、現職を中心に、東日本大震災を受けて、選挙運動の時間を午前9時から午後6時までに自粛するよう申し合わせたという話も取りざたされた。低調ぶりは否めない。
 1999年9月のJCO臨界事故後の村議選でも、告示前に無投票ムードが流れた。東京電力福島第一原発の事故から1年とたたない村議選で、再び同じような現象が起きた。なぜ、候補者が出にくいのか。
 引退した議員の一人は「推進も反対も言いにくい状況なのに、選挙になれば村民に『あんたはどっち』と突きっけられる。そこまで求められるのは正直なところしんどく、勢い、議員の仕事を敬遠することにつながるのでは」とみる。
 確かに今や県内外の多くの人が注視する東海第二原発の問題に、村民を代表して向き合わなければならない村議の責任は極めて重い。
 福島では15万人以上が避難を強いられ、村内でも放射線量が上がった。「国のエネルギー政策が固まらない段階では賛否を明確にできない」。こう主張した候補者がいたが、村民が抱える切実な不安を前に、問題を先送りにするための言い訳に聞こえた。
 東海第二原発の定期検査は8月に終了する見通しだ。あわせて、「2030年に電力供給の53%を原発でまかなう」とした国のエネルギー基本計画が夏までには見直される。
 村上達也村長が脱原発にかじ舵を切るなか、遠からず村議会も何らかの意思表示を求められる。結論の先送りはもう許されない。