参考写真 1月25日、橋本昌茨城県知事は、枝野幸男経済産業大臣に対して「東日本大震災・原発事故に関する要望書」を提出しました。
 この中で橋本知事は、東海第2原子力発電所の運転再開問題に関して、「東海第2原子力発電所における地震・津波の影響について、徹底した調査を行うとともに、その情報を分かりやすく公開すること。また、東海第2原発を再起動するかどうかの判断にあたっては、万全な安全対策を講ずるだけでなく、東海第2原発の置かれている状況を十分に勘案するとともに、立地地域や周辺自治体、さらには地域住民の意見を十分に反映させること」と要望し、再稼動に慎重な姿勢を示しました。
 さらに、「30キロ圏内に100万人が居住し、運転開始から34年が経過しようとしている。東京駅から大変近い状況も勘案しながら検討していただきたい」と強調しました。
 これに対し、枝野経産相は「東海第二発電所の再稼働については、まだ検討段階であり、様々なことについて地元と相談していくことは重要であると考えている。早期に結論を出すことが可能なのかも含めて早急に検討を進めていきたい」と答えました。
 橋本知事は、今まで再稼動問題について、国の判断を待つことを最優先に専門家の議論を方向性を見定めるとして、自らの意見を明確に示すことはありませんでした。この日の要望内容は、再稼動に関して慎重な姿勢を明確に示すものとして注目されます。
 この他、橋本知事は、原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助金の優先的な配分、第三次補正予算に盛り込まれた「再生可能エネルギー発電設備等導入支援復興対策事業費補助金」の対象地域に本県を含めること、放射性汚染水の安易な海洋放出が行わないこと、全ての原発損害の早急な賠償、などについて要望しました。
東日本大震災・原発事故に関する要望書

 福島原発事故は本県におきましても、県民生活や経済活動に極めて大きな影響を及ぼしております。東海第二原子力発電所につきましては、現在定期検査が行われているところでありますが、今後のあり方について国の具体的な方針が示されないなか、その動向について県民の関心が大変高まっているところであります。
 一方、県民の健康不安や原発事故による風評被害については、極めて厳しい状況が続いており、特に企業立地につきましては、平成23年通期における立地件数で、平年の約3割まで落ち込む見込みであり、その回復を図ることが本県経済の復興のために喫緊の課題となっております。
 このような中、国の新年度予算案において、本県など三県で要望いたしました企業立地促進補助のほか、中小企業の施設復旧等を支援するグループ補助などを措置していただいたことに心より御礼申し上げます。
 しかしながら、福島原発事故の影響は想像以上に大きく、関係者からは、なお一層の対策を要請されているところであります。
 本県といたしましては、今後とも国の支援を十分に活用しながら、復旧・復興に全力で取り組んでいくつもりでありますが、経済産業大臣におかれましては、本県の置かれている状況を十分にご理解いただき、下記事項について特別なるご配慮をお願いいたします。
 平成24年1月25日

○東海第二原子力発電所について
東海第二原子力発電所における今回の地震・津波の影響について、徹底した調査を行うとともに、その情報を分かりやすく公開すること。また、東海第二原発を再起動するかどうかの判断にあたっては、万全な安全対策を講ずるだけでなく、東海第二原発の置かれている状況を十分に勘案するとともに、立地地域や周辺自治体、さらには地域住民の意見を十分に反映させること。
○企業立地支援について
(1)平成24年度予算で創設された原子力災害周辺地域産業復興企業立地補助金(140億円)については、茨城県、栃木県、宮城県が対象とされているが、各県ごとの配分枠は明確にされていない。企業誘致については、風評被害の少ない地域の方が進めやすいと考えられるので、このまま各県の枠を決めずに事業を進めると、補助金の創設目的である風評被害が深刻な地域への立地促進のためでなく、相対的に立地しやすい地域のために使われてしまうことが強く懸念される。一方、本県における平成23年通期における立地件数は20件と見込まれ、平年(5か年平均)の65件と比べて約3割まで落ち込むなど、原発事故による影響は極めて深刻である。
このような事情をご理解いただき、今後とも本県が全国トップクラスの企業誘致を実現していけるよう、本県分として十分な補助金額を確保するとともに、事業の効果的な執行に資するため各県ごとの配分額を早急に提示され
たいこと。
(2)原発事故の影響により、西日本の企業や海外の企業等が立地を敬遠・断念する事例が相次いでいることから、風評の払拭に向けた国内外企業への正確な情報発信や投資促進の取組を強化すること。
○再生可能エネルギー発電設備等にかかる補助金について
地球温暖化防止とエネルギー供給源の多様化・分散化、さらには被災地域の経済の活性化に資するため、第三次補正予算に盛り込まれた「再生可能エネルギー発電設備等導入支援復興対策事業費補助金」の対象地域に本県を含
めること。
○エネルギー政策等について
エネルギー政策基本法を改正し、「安全の確保」が全てに優先することを明記するとともに、現行の基本計画の改定にあたっては、原子力の安全性の確保についての記載を充実させること。
また、電気料金の値上げが避けられないなか、国内産業の振興と雇用の確保との両立に向け的確な対策を講じること。
○原子力安全対策の強化について
福島原発事故については、徹底的な原因究明及び詳細な解析等を行い、早期に情報を公開するとともに、安全審査指針の見直し等抜本的な対策を進めること。
また、「ストレステスト」に関して、運転再開の可否等の判断に係る国の具体的手続きや判断根拠について、国民に明確に説明すること。
○高レベル放射性廃棄物について
東海再処理施設に貯蔵されている高レベル放射性液体廃棄物については、速やかにガラス固化体に加工すること。
その結果、同施設におけるガラス固化体の保管能力420 本を遥かに超えてしまうことになるので、同施設に保管されているガラス固化体の早急な搬出を図ること。
○原子力防災対策の強化について
原子力防災対策のあり方、原子力施設の種類ごとの災害想定等を早急に見直すとともに、新たに設定されるUPZ等の範囲において実施すべき具体的な防災対策を速やかに示すこと。
○放射性汚染水について
放射性汚染水の安易な海洋放出が行われないよう、地下水流入に対する抜本的対策を早急に講じさせるなど、東京電力に対して適切に指導・監督を行うこと。
○建築用資材に係る放射線量の基準について
住居等に使用する建築用資材について、住民の健康に直接的な影響が懸念されることから、出荷又は使用時の放射線量について基準を速やかに策定すること。
○全ての損害の早急な賠償について
原発事故と相当因果関係が認められる損害を全て賠償の対象とし、早急に賠償金全額を支払うなど、国と東京電力の責任において万全の対応を行うこと。
特に、ホテル、旅館、土産物店、ゴルフ場、不動産業などにおける売上げ減少等について幅広く賠償の対象とすること。
また、自主的避難等に係る損害の賠償に当たっては、中間指針追補に示された自主的避難等対象区域との近接性や放射線量等を十分に考慮して対象区域を設定すること。
○健康影響調査の実施に関する基準等の明確化について
健康影響調査については、各自治体がばらばらに実施しているが、国において対象者・実施内容・実施主体などに関する基準を示し、統一的に実施するとともに、関係自治体に負担を生じさせないよう、国の責任において万全の財政措置を講ずること。

要望に対する枝野幸男経済産業大臣の発言
  • 地震だけでなく原発事故により、福島県に次いで、茨城県が大きな被害を受けていることは十分承知している。

  • 企業立地の支援については、企業から申出をしてもらうことになるが、関東経済産業局には集中して取り組むように伝えており、茨城県でも平年と同じ結果となるように努めていきたい。

  • 東海第二発電所の再稼働については、まだ検討段階であり、様々なことについて地元と相談していくことは重要であると考えている。早期に結論を出すことが可能なのかも含めて早急に検討を進めていきたい。

  • 健康影響調査については、環境省と一体となって、国民の不安や心配を解消するためには、どのような検査方法が適切であるか、どのような説明をしていくことが良いのか検討しているところである。

  • 昨年は海水浴場の入込客数が激減しているが、今年は回復できるよう海の安全性についてもチェックしていくことが重要であると認識している。