年金試算、先送りのはずが…一転して公表へ
読売新聞(2012/2/6)
 政府・民主党は6日、年金抜本改革の財源試算について、3月に予定する消費税率引き上げ関連法案の提出前に、公表する方針を決めた。
 野田首相らが同日昼に国会内で開いた政府・民主三役会議で決定した。
 試算は民主党内で昨年に作成され、月額7万円の最低保障年金制度の創設に消費税率が最大7.1%必要になると見込んでいる。同党幹部は三役会議後、「2、3日中に党内への説明を行う」と語った。公表方法などについては、前原政調会長に一任された。政府・民主党はこれまで試算の公表を先送りする方向で検討していたが、野党が社会保障・税一体改革に関する協議を受け入れる条件の一つとして試算の公表を強く求めているため、方針転換した。

提唱から8年以上たっても具体化しない「絵に描いた餅」。年金を“政争の具”にしてきた罪は重い
参考写真 2月6日、民主党は公明党などの野党が強く求めていた、具体的な年金試案を公表することになりました。
 民主党は2003年のマニフェストで年金制度の抜本改革を提唱して以来、年金制度の一元化と最低保障年金の創設を主張してきました。しかし、8年以上が経過しても全く具体化していません。これでは「絵に描いた餅」と言うしかありません。
 民主党は2009年のマニフェストで「消費税を財源とする『最低保障年金』を創設し、全ての人が(月額)7万円以上の年金を受け取れるようにする」と書いています。これを実現するには巨額の消費税が必要です。
 報道によれば、民主党が昨年作成した試算では、最低保障年金の額を年収260万円から減らして690万円で打ち切る場合、2075年度では消費税率に換算して7.1%もの増税が必要になるとされています。これは民主党政権が社会保障と税の一体改革の素案で示した10%への引き上げとは、全く別枠で必要となるものです。
 しかも、年収420万円以上の中高所得者は、現在の制度よりも年金額が減ることも報じられています。
 この試算はあまりにも都合が悪いため、政府・民主党は公表しないことに決めてしました。
 なぜ、民主党は、そんな「年金の改悪」を主張しているのでしょうか?
 結局、それは選挙に勝つための道具として、年金を利用してきたということだと指摘したいと思います。
 民主党は野党時代、年金に対する国民の不安をあおりにあおり、「年金制度を抜本改革すれば老後は安心」というイメージ戦略を貫いてきました。
 選挙に勝つことが目的だったから、これまで具体的な制度設計を考えてこなかったとしか思えません。
 現在の制度でも、老後は安心は担保されています。公明党が主導した2004年の年金改革は、しっかりした統計資料を基に設計し、積立金の活用などで持続可能な制度に仕上げたものです。2009年の財政状況の検証でも順調に推移しているとの結論が得られています。
 無年金・低年金対策などは急務ですが、制度の骨格を変更する必要は、全くありません。
 民主党が公表するという、年金改革の具体像がどのようなものか、私たち国民はしっかりと検証しなくてはなりません。そして、この民主党年金案が如何に荒唐無稽なものかを証明し、政府・民主党にその撤回と国民への謝罪を強く求めたいと思います。
(写真は、民主党政権の年金改革案を厳しく批判する井手よしひろ県議。2012/1/21撮影)