参考写真 まもなく東日本大震災それに続く福島原発の事故かから1年を迎えようとしていおます。原発事故対応、放射線対策の中で、県民の最大の関心事は、広範に放射性物質で汚染された地域の除染をどのように行なっていくかという課題と県民、特に子供たちの健康被害をどのようにして極小化していくかという課題です。
 その中でも、子どもたちの健康調査を実施するか、しないかの問題は保護者の意見と県や行政の考え方の溝が埋まらない、深刻な問題となっています。
 茨城県はこれまで26市町村で放射線の健康に対する影響についての講演会を開き、延べ4221人が参加しました。県教育委員会も県内5会場で講演会を主催し、861人が専門家の話に耳を傾けました。
 しかし、保護者の不安は一向に解消されていません。講演会では「健康に影響はない」と説明する専門家や県の担当者に対して、そもそもその専門家が、原発容認なのか、反原発なのかというの今までの立ち位置まで問題とし、「原発を進めてきた専門家の話をそのまま信用ずることはできない」との不信の声が多く聞こえてきます。
 昨年(2011年)11月には、県内外の保護者でつくる48団体が、子どもの健康調査の実施を求める要望書を橋本県知事に提出しました。
 県議会も特別委員会の中間報告の中で、「子どもや妊産婦等希望者への健康影響調査の実施など、県民の不安を払拭するための施策を推進すべきである」であると、健康影響調査の実施、県民の不安払拭を強く求めています。
 一方、県の立場は専門家の意見を踏まえて、県独自の健康診断は行わない方針を決めています。その上で、橋本知事は、昨年12月27日、茨城県、岩手県、宮城県の3県知事連名により、国に対し、放射線による住民への健康影響調査については、実施の必要性、対象者、実施内容、実施主体などに関する統一的な基準を示すとともに、関係自治体に負担を生じさせないよう、国の責任において万全の財政措置を講ずるよう要望書を提出しました。
栃木県は東海村の原研機構でWBC検査実施
 このような中、2月27日、栃木県は県民の放射性物質への不安を少なくしようと一部の地域の子どもを対象に内部被ばくの検査を3月、専用の装置がある茨城県内の施設で行うことになりました。この検査は栃木県が設けた専門家の会議で「放射線量を目に見える形で明らかにして県民の不安を解消すべき」という意見が出されたことを受けて県が実施するものです。
 対象は県の調査で比較的高い放射線量が確認された那須塩原市の一部の地域に住む0歳から15歳までのおよそ100人のうち、保護者が希望する子どもです。この地域は、那須塩原市の金沢小学校で1時間あたり1.55マイクロシーベルト(2011年5月19日計測)という、茨城県内の汚染より一桁多い線量が記録されています。検査は3月10日と11日に行われ、東海村の日本原子力研究開発機構(原子力機構)でホールボディーカウンターを使って放射性物質が体内に取り込まれたかどうかを調べます。
 茨城県には、県立中央病院と水戸医療センターにホールボディカウンターが整備されおり、原子力機構など国内産先端の研究機関が数多く存在しています。他県に比べても放射線から県民の健康を守る体制は進んでいます。まず、国に対して健康診断に強くその実施を要望するとともに、任意の検査体制を整えるなど、一歩進んだ対応を決断すべきです。