参考写真 3月9日の県議会文教警察委員会で突如浮上した「県生涯学習センターの再編」問題について、10日、県教育庁生涯学習課長らと約2時間にわたり意見交換を行いました。
 まず、この検討を行った「茨城県生涯学習推進検討委員会」の経緯を確認しました。この委員会の要綱によると、「第1条 本県生涯学習の推進の方向性や望ましい推進体制をふまえ、県生涯学習センターの在り方について検討するため、茨城県生涯学習推進検討委員会を設置する」となっています。昨年10月3日に設置され、任期は今年3月31日までとなっています。10人の委員で構成され、10月27日、11月24日、12月21日、1月31日、2月14日と5回の審議(審議時間延べ12時間)を行い、報告書をまとめました。
 一番の問題は、生涯学習センターの再編という大きな県政の課題にもかかわらず、こうした委員会の設置が県議会(当時は県議会文教治安委員会)に何の報告もなく行われていたという事実です。
 正確に表現すると、その設置目的を矮小化して県議会に報告していました。「生涯学習推進検討委員会」が県議会の議論の俎上に上ったのは、12月議会の常任委員会での小野寺教育長の報告の中で1箇所触れられているだけです。それも、水戸生涯学習センターの震災復旧状況の説明の中で、次のように触れられています。
 「学校以外の教育機関等でございます。(震災で被害を被った施設は)22施設ありましたが、現在、全館休館中となっておりますのは、水戸生涯学習センターの1施設のみでございます。こちらにつきましては、ここに記載してございますように、現在、移転を含めた復旧方法、どのようにするのかということと、あわせまして、今後の県の生涯学習センター全体のあり方につきましても検討いたしますため、有識者で構成いたします生涯学習推進検討委員会を、先般立ち上げまして、現在検討中でございます。来年2月に報告書をまとめる予定になっております」(平成23年第4回定例県議会議事録より引用)

 当時、文教治安委員会の委員であった井手よしひろ県議は、使えなくなった水戸生涯学習センターの復旧・復興のための検討委員会と誤って理解し、全く問題視しませんでした。直接の所管である生涯学習課長よりは、全く検討委員会の説明はありませんでした。
 震災復旧ということを隠れ蓑にして、生涯学習センター再編の重大事を、わずか5回の密室の審議で方向性を出してくる、県教育庁の姿勢に大きな不信感を抱くに至りました。
 その上で、検討委員会の生涯学習センターの再編の方向性について、その詳細を確認しました。
1.再編の方向(移行期間含む。)
(1)水戸生涯学習センター
 茨城県生涯学習推進センター(仮称)として、研究開発事業、人材育成・研修事業、学習情報提供事業、連携促進事業を重点的に実施する。
 また、開発したプログラムを検証するためのモデル講座や事業を実施し、実施上の課題を調査分析し、市町村や他のセクターを支援できる機能を付与する。
このため、平成24年度からは、県と一体となった県域の生涯学習事業連絡会議や各事業型コンソーシアムによって「個人の要望」や「社会の要請」の学習機会の充実やコンソーシアム事業の企画及び運営を行う。
(2)県北、鹿行、県南、県西生涯学習センター
 事業は、「社会の要請」や新しい公共に関連する事業を取り入れていくが、おおむね平成27年までに茨城県生涯学習推進センター(仮称)に統合していく。
 その間、4つのセンターが担ってきた学習機会や学習の場の提供は、生涯学習事業連絡会議や事業型コンソーシアムを活用し、市町村生涯学習課、公民館及び大学(生涯学習センター)と共同事業や連携事業の具体的作業を通して移行していく。
 事業型コンソーシアムについては、平成24年度には、県は学校支援及び防災教育に係るコンソーシアムを設置し、市町村や学校とモデル事業を展開する。さらに平成25年度からは4センターにおいても、趣味教養、社会貢献及び新しい公共を担う人材育成などの分野でコンソーシアムを設置し、各地域において事業を展開する。
(3)女性プラザ
 男女共同参画センターとして、男女共同参画推進に関する拠点施設とすること等を検討していく。
2.再編に当たっての配慮、事項
(1)教育事務所の機能
 地域の教育力の向上や家庭の教育力の向上、さらに地域ぐるみで学校教育の充実を図っていくためには、市町村教育員会や小中学校との連携が必要である。
 このため、各教育事務所に社会教育セクションを設けるなどして、社会教育の充実に資する必要がある。
(2)各セクターへの支援・連携
 再編にあたり、県の事業を各セクターへ委ねていくことが考えられるが、県は再編がスムーズに行われるような具体的な事業を展開することにより、市町村の要望に応じて、生涯学習センターは事業を市町村、大学等と共同企画して実施する。
 大学の専門的講座については、県や市町村‘等が学習機会のニーズを提供する他、実施に当たり情報提供や広報を担う。
 現代的課題、地域課題及び新しい公共を担う人材の育成を県、市町村、NPO等が具体的な事業を通して連携して実施する。
(3)セクタ一間の連携の強化
 生涯学習事業の推進のためには、 セクタ一間の新たなネットワークの構築と事業の連携が不可欠である。事業を通して多様な関係者・関係機関や県民が関わりを深め、連携を確固なものとすることが大切である。
 この検討結果を一読すると、そこから見えてくる県教育庁の生涯学習センター再編の狙いは、県の関与の強化、生涯学習予算削減の2点に尽きるのではないかという疑念が深まりました。
 そもそも平成20年の中教審答申によって、生涯学習は「個人の要望」と「社会の要請」のバランスを取ることが強調されています。ここで言う「個人の要望」とは、平たく言えば「趣味や教養」と言い換えることが出来ると思います。
 一方、「社会の要請」とは、少子化の進行、地域・家庭の教育力の低下、超高齢社会の到来、深刻化する環境問題、フリーターやニートの増加などの若年者雇用問題など多岐にわたる日本社会の問題解決を、市民の主体的な社会参加を支援し、地域社会全体で地域の課題に取り組むことで解決しようという立場です。現在の5つの生涯学習が独立して運営されている状況では、この「社会の要請」に応えることは出来ず、県教育庁の関与を強化する必要があると、判断したものであると考えられます。
 さらに、その運営にコンソーシアムという発想を導入し、市町村や大学など実際に様々な生涯学習の機会をすでに提供しているセクターを巻き込むことにより、県自体の予算や労力をカットしようとする本音が見え隠れします。
 9日の委員会で、小野寺教育長は「平成24年度当初を目途に、最終的に県の方針を決定する」と報告しましたが、このような拙速は絶対に許されません。平成24年度1年間掛けて、県議会文教警察委員会の重点審議項目の一つとして、しっかりと議論を積み上げる必要があると、強く主張します。
参考:茨城県生涯教育推進検討委員会について(県教育庁より資料提供:PDF版)