参考写真 3月12日、県議会保健福祉委員会が開催され、「子どもの放射線健康影響調査」に関わる議論が行われました。 
 昨年12月27日、橋本知事は、茨城県、岩手県、宮城県の3県知事連名により、国に対し、放射線による住民への健康影響調査については、実施の必要性、対象者、実施内容、実施主体などに関する統一的な基準を示すとともに、関係自治体に負担を生じさせないよう、国の責任において万全の財政措置を講ずるよう要望書を提出しました。県独自の健康影響調査については、専門家の意見を聞いた上で、その必要はないとしています。
 一方、県議会としては、特別委員会の中間報告の中で、「子どもや妊産婦等希望者への健康影響調査の実施など、県民の不安を払拭するための施策を推進すべきである」と、県独自の健康影響調査の実施を知事に求めています。
 茨城県には、県立中央病院と水戸医療センターなどにホールボディカウンターが整備されているなど、他県に比べても放射線から県民の健康を守る体制は進んでいます。まず、任意の検査体制を整えるなど、一歩進んだ対応を決断すべきであるというのが、井手よしひろ県議ら公明党の基本的な考え方です。
 こうした議論の中、守谷市の市民団体から「茨城子どもの健康調査を求める請願」が提出されました。
 この請願では、橋本知事の対応を「『実施したら、行政が健康調査を必要と判断し、逆に不安を招く』と会見し、12月以降は『対象となる人の基準を国が示すべき』と国に判断を委ねている」と、批判しています。その上で、「健康調査を行い、客観的科学データーを示すことで県民の不安軽減や今後の放射線対策に役立てることができる」と、健康影響調査の実施を強く求めています。その上で、放射性物質汚染対処特措法に基づく、県内20市町村の子供たちに対して、ホールボディーカンターによる放射線量調査を求めています。
 福島原発事故の責任は、国と東京電力にあることは明白で、知事が言うところの国が子どもの健康影響調査を行うことは、当然です。
 しかし、県民の不安がますます増幅する中で、茨城県は、福島県や栃木県、宮城県など一部で健康調査を行なっている場所より線量が低く、専門家の意見によって影響調査の必要がないからという理由だけで、健康調査を求める声を門前払いにして良いのかという疑問が残ります。
 少なくても、どのような健康調査を行うか、誰を対象にするのか、どの程度健康調査にかかる費用がかかるのか、県独自に調査をする必要があります。福島県の事例を見るに、この時点でのホールボディーカウンター調査は、有効性が小さいと考えられます。しかし、例えば「小山市が実施しようとしている5年後に甲状腺の検査を18歳以下の全ての住民に行う。そのために、毎年基金を設け予算を積み立てる」といった、晩発性の影響に対する検査などを工夫する必要があります。
 市民団体の請願は採決の結果、採択賛成2(公明・共産)、継続審議7(自民・民主・自民県政クラブ)で、継続審議されることになりました。
 なお、最終日に採択予定の国への意見書は以下の通りです。
東京電力福島第一原子力発電所事故による放射線被ばくの健康影響に関する意見書(案)
 東京電力株式会社福島第一原子力発電所で発生した事故は、大量の放射性物質を外部に放出し、食品、水道水、大気、海水、土壌等に拡散した。事故発生からすでに1年が経とうとする現在もなお、通常時と比べて高い放射線が福島県のみならず、広範囲にわたり観測されている。
 このような状況が長期にわたることで、子どもを抱える母親などから健康に対する不安の声が高まっており、放射線被ばくによる住民の健康影響調査に関する対応方針を早急に策定することが求められているところである。
 現在、放射線の健康影響調査については各自治体がそれぞれの判断や手法で対応しているが、本来、国が基準や方針を示し、系統だてて実施すべきものである。
 よって、政府及び国会においては、誰もが安心して暮らすことができるよう、下記の項目の早期実現について強く要望する。
  1. 放射線による住民への健康影響調査について、実施の必要性、対象者、実施内容、実施主体などに関する統一的な基準を早急に示すこと。

  2. 健康影響調査の実施の際には、各自治体と連携し、国が直接実施する体制を構築するとともに、関係自治体に負担を生じさせないよう、国の責任において万全の財政措置を講ずること。

  3. 放射線・放射性物質の人体影響、放射線防護の方法等に関する知識の普及啓発を図るなど、不安解消に向けた取り組みを積極的に行うこと。

以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
平成24年3月
茨城県議会議長磯崎久喜雄
(提出先)
衆議院議長
参議院議長
内閣総理大臣
厚生労働大臣
経済産業大臣
環境大臣
内閣官房長官