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 3月5日、井手よしひろ県議は、県議会代表質問で橋本知事に対して、東日本大震災の災害対策本部の議事録の公開を求めました。
 県の危機管理の総括を伺う質問の最後に、千年に一度というこの未曾有の災害の教訓を、いかに後世の県民に引き継ぐか質問を致します。
 まず、災害対策本の会議録について確認します。民主党政権では、国の危機管理を担う重要な会議の議事録が作られていなかったことが発覚し、大きな問題となっています。茨城県の一連の災対本部会議などの議事録は正確に残されていると考えますが、改めて確認をさせていただきます。また、今後の大きな教訓に、県民にもホームページなどで公開することを提案いたします。
 さらに、災対本部に限らず、県、および市町村の危機管理の記録を、歴史的アーカイブとして後世に伝えるべきだと提案します。県立図書館、または歴史館等に東日本大震災資料館を創設し、公的な資料のみならず、県民からの記録文、写真、動画などを一堂に収集する事業を計画すべきです。特に、被災状況を示す写真や動画などは、デジタルアーカイブとしてネット上に公開することを提案いたします。
 危機管理の記録をいかに後世に残すか、知事のお考えをお聞かせ下さい。

 この提案をもとに、茨城県では3月27日から災害対策本部の議事録を消防防災課のホームページ上で公開しました。
 今回、公開されたのは、震災当日の3月11日から4月1日までの全18回分の会議議事録です。災害対策本部会議は、茨城県災害対策本部条例施行規則をもとに設置され、県知事(災害対策本部長)が主宰します。県庁6階の災害対策本部会議室で行われます。
 東日本大震災では、3月11日18:02から18:39まで、第1回会議が行われました。冒頭、県警本部長から被害状況が伝えられましたが「常陸太田で女性1名死亡、常総市で死亡1名が報告されているが、地震で車を降りた際の交通事故かもしれない。住友金属のコンビナートで火災が3件発生し、うち2件は鎮火とのこと」との簡単な報告で、ほとんど情報が掌握できなかった様子が垣間見られます。
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 11日23:00から行われた第2回会議では、「官邸からの要請により福島県の原発周辺住民が避難するための民間バスの先導を手配した」ことが報告されました。知事が「福島は何人?」避難するのかという問いに、県警本部長「確認する」と答える場面が掲載されています。
 12日9:02から開かれた第3回会議では、初めて自衛隊施設学校長が参加し、自衛隊の活動状況を報告しています。自衛隊施設学校長が「2普通連隊及び施設学校のおよそ各300名、計1000名が集結している。県と調整を図りながら出動を行っていく」と報告。知事が「土砂の撤去とか。どのような支援活動をしていただけるのか」と質問すると、「第1段階では情報収集及び人命救助を最優先とする。海岸沿いの県北・県央・鹿行に1隊ずつ出動することになる。第2段階として本格的な復旧活動に入る」と回答。さらに施設学校長は「古河及び勝田には重機があるが、仙台に派遣される可能性があるため、県内で使用できるかは未定」と説明しました。
 12日15:40からの第4回会議では、原子力対策班より「テレビ報道のとおり、福島の1号機で爆発が起こり、骨組だけが残った模様。ただいま原子力保安院に確認しているところ。福島県から原子力保安院を通して安定ヨウ素の確保の要請があった。保健福祉部と協議して調整したい。なお、避難エリアから県境までの距離は約80kmである。1015マイクロシーベルトという値は、JCO 事故に匹敵する大事故である」と報告されています。原発事故に対しては、国から全く情報の提供がなく、テレビ報道に頼って県の対応が検討されている状況が手の取るように分かります。同時に、保安院からは安定ヨウ素材の配布準備を求める要請があったことも分かります。
 13日の第5回会議では、各部署からガソリンの枯渇が強く訴えられています。県では、官邸に数度にわたって茨城県へのガソリンの手配を直接要請しましたが、全くこの時点まで国の対応はなかった模様です。知事が、防災ヘリで県内を上空から視察した模様を報告。「防災ヘリで大洗町役場に行ったが、津波で浸っている。町民のショックはあるが、高台に逃げることを強く宣伝し、すぐ対応することが大事である。六角堂の赤色が見えなかったから海に落ちたのだろう。(日立港では)黒こげになった完成自動車の山も見えた。北茨城の断崖もかなり削られているようだ。大洗港区で液状化が発生しており、復旧に時間がかかる。鹿島港でも液状化が見られたし、円筒形のタンクの上の部分が火事で無くなっている。鹿行大橋は真ん中で無くなっている。コンテナも打ち上げられている。ヘリ視察により新たな情報は無かったが、復旧が大事であると思う。高速道路に亀裂、陥没、落差があり、復旧には時間がかかると思う。ガソリンについては、津波のおそれがあって災害船が活用できない。各分野でがんばっていただきたい」と知事は発言しています。
 今回公開されたのは、災害対策本部会議という県の危機管理のほんの一部だけの会議録です。しかし、その中には、非常に情報が少ない中で、その場その場で危機対応を行わなくてはならなかったか、現場の厳しい状況が露わになっています。
(写真上:第1回災対本部会議、写真下:災害対策本部の模様、いずれも井手よしひろ県議が撮影)
参考:東日本大震災に関わる災害対策本部会議の議事録