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 日本は今、世界にも例のないスピードで少子高齢化が進んでいます。社会保障と税の一体改革については、“増税先行”とのイメージが強調されがちですが、そもそもは、社会保障機能の維持・強化を目的としています。
 年金給付や医療・介護のサービス提供費、子育てや障がい者支援、生活保護費などに充てる国の社会保障給付費は、右肩上がりで増大しています。これは少子高齢化と日本人の平均寿命が延びたことが最大の原因です。
 国立社会保障・人口問題研究所が2011年10月に公表した2009年度の社会保障給付費は99.8兆円で、前年度より5.7兆円増えています。このうち年金に51.7兆円、医療に30.8兆円が充てられました。国民1人当たりの社会保障給付費は、78万3100円となっています。
 翌2010年度には社会保障給付費が100兆円の大台を超え、12年度は予算ベースで109.5兆円。厚生労働省は25年度には150兆円を超えるとの見通しを示しています。
 100兆円を超える巨額の社会保障給付費の財源は、大きく分けて個人と事業主が払う「社会保険料」と、国・地方の「税」の二つから成り立っています。しかし近年、保険料収入は横ばいで推移しており、増え続ける給付費との差は広がるばかりです。この差額を国と地方の税金で埋めているのです。(上掲のビデオ参照)
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 例えば2012年度の社会保障給付は109.5兆円なのに対し、保険料は60.6兆円、国と地方の税負担は40.3兆円で、このうち国は約30兆円を負担しています=グラフ下参照。2012年度の国の予算総額は90兆円超ですが、約半分は国債(借金)に頼っています。社会保障給付費も、国の税負担分約30兆円の多くが借金で賄われていると言えます。これは、今の世代の社会保障を支えるために、毎年、将来世代にツケを回している状態が続いているということです。
 こうした背景からも分かる通り、今回の一体改革は決して増税先行ではなく、「『借金先行』の異常事態をようやく解消する道筋をつけるというのが本当のところ」(7月2日付「毎日新聞」社説)なのです。増え続ける社会保障給付費を賄うために、どう安定的に財源を確保するのか。また、財源が安定していてこそ社会保障政策の維持・強化を図ることができます。この問題はどの党が政権を担っても避けられない、日本にとって待ったなしの重要課題なのです。