決められない政治を打破
増税先行に歯止め、軽減税率などの具体化に全力

参考写真 8月10日、社会保障と税の一体改革関連法案が、参院本会議で可決・成​立しました。
 衆議院の特別委員会で129時間、参議院の特別委員会で85時間​という長時間の審議を踏まえての成立です。参議院での採決直前に、​解散時期の確約を巡る民主、自民の攻防戦があり、一時期は法案成​立が危ぶまれていただけに、難産の末の成立といえるでしょう。
 今の世代の社会保障給付を将来世代からの借金で賄っている現状を改善し、社会保障機能を維持・強化する意義は大きなものがあります。政局の混乱を乗り越えて、社会保障と税の一体改革関連法案が成立したことを率直に評価したいと思います。
 法案成立で一段落したものの、これで全てが終わったわけではあり​ません。むしろ、これからが本番です。公明党が、3党合意に盛り込んだ条件が、課題として残っ​ているからです。
 社会保障の全体像については、有識者などによる「国民会議」を設置し、1年以内に結論を出すことになっています。今回の一体改革では年金と子育て関連の施策が充実しましたが、国民会議では医療や介護を含め全体像を議論することになっています。政府は速やかに国民会議を設置し、議論を始めるべきです。
 景気回復については、公明党が提唱する「防災・減災ニューディール」を実行すべきです。インフラの老朽化対策など大規模災害に備えた防災・減災対策は“待ったなし”です。思い切った公共投資はデフレ脱却や雇用創出も期待でき、経済活性化に欠かせません。
 消費税の低所得者対策としては、国民の要望が強い軽減税率や、給付つき税額控除の議論を進めるべきです。
 また、事業者に対する消費税の転嫁対策や、住宅や自動車の買い控え対策、所得の再分配機能を強化する所得税、資産課税の見直しなども具体化しなければならない。国会議員歳費の恒久削減など、身を切る改革も不可欠です。
 公明党が先頭に立ち、一体改革を成し遂げていきたいと決意を新たにしています。
 一方、一体改革法の成立によって、「ムダを削れば財源は確保できる」「消費税は上げない」といった2009年衆院選時の民主党の主張が、いかに無責任で、国民を愚弄するものであったかが証明されたことになります。野田首相は3党で確認した通り、早期に衆院解散、総選挙を実施すべきです。
 8月11日の新聞各紙は社説で、社会保障と税の一体改革関連法案の成立を概ね、高く評価しました。
 その中でも、読売新聞の評価は一番妥当なものだと考えます。以下の参考のために掲載します。
一体改革法成立 財政健全化へ歴史的な一歩だ
2012/8/11読売新聞社説
◆首相の「国益優先」を支持する◆
借金体質の国家財政を健全化するという長年の懸案の解決に向けて、歴史的な一歩である。
消費税率引き上げを柱とする社会保障・税一体改革関連法が参院本会議で、民主、自民、公明3党などの賛成多数で可決、成立した。
審議に200時間以上をかけ、圧倒的多数の賛成で成立させた。高く評価したい。先送りを続けてきた政治に転機をもたらすことを期待する。
◆消費増税に共同の責任◆
野田首相は法成立後の記者会見の冒頭、民主党政権公約(マニフェスト)に言及し、「消費税引き上げを記載していなかったことを深くおわびしたい」と述べた。
国民に負担を求める改革は緒に就いたばかりだ。真摯しんしな姿勢で国民の理解を広げる必要がある。
消費税率引き上げ法の成立によって、現行5%の税率は2014年4月に8%、15年10月に10%へと段階的に引き上げられる。
それまでに衆院選と参院選が確実に行われる。
消費増税の是非が争点になるだろう。選挙の結果、政権が代わり、反増税の勢力が台頭しようとも、民自公3党は「消費税10%」の実現まで責任を共有するべきである。
自民党の谷垣総裁は、3党合意には、消費税引き上げの環境を整えるための経済対策も含まれるとの見解を示している。
世界経済が不安定さを増す中、日本の国債が暴落する事態は回避しなければならない。財政再建へ確かな道筋をつけ、国債の信認を高めていくことが肝要である。
増税に伴う低所得者対策については、年末の13年度税制改正に向けた議論で詰めることになる。
食料品などの消費税を低くする軽減税率は8%への引き上げ時に導入すべきだ。活字文化と民主主義を守るため、新聞や書籍への適用も検討しなければならない。
社会保障制度改革は、着実に前進する。総合的な子育て支援策は、高齢者向けに偏っている社会保障政策と財源を全世代型に再構築するものだ。年金制度も、パート労働者への厚生年金適用拡大など、懸案がかなり改善に向かう。
「増税先行」の批判は当たらない。3党は社会保障制度改革国民会議を速やかに発足させ、中長期的な制度改革の議論を始めるべきだ。今回見送った給付減などによる効率化も欠かせない。
<中略>
◆格差是正が解散の前提◆
問題なのは、野田首相が自公両党に「近いうちに国民に信を問う」と、早期解散を約束したことに関し、輿石幹事長がこだわる必要はないと発言したことである。
輿石氏は、首相や谷垣氏が9月に迎える党首選で再選されない場合には、3党合意は無効になるとの見方も示した。
谷垣氏が、この発言に「政党政治が何たるかを心得ていない。厳しく糾弾しなければならない」と激怒し、民主党との対決姿勢を強めたのも無理はない。
首相の意に沿わず、自公両党との合意を軽んじるかのような輿石氏の言動は目に余る。
衆院解散・総選挙の環境を整えるには選挙制度改革が不可欠だ。最高裁は現在の「1票の格差」を「違憲状態」と判断している。
国会の怠慢で、格差是正措置を講じずに衆院選に踏み切れば、憲法違反として選挙無効の判決が出る可能性も否めない。
民自公3党は、小選挙区の「0増5減」を先行実施し、格差を是正することが急務である。