2月4日、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党県議団は、東京電力福島第2原子力発電所を訪問。増田尚宏所長をはじめ幹部職員より、一昨年3月11日事故当時の状況や復旧計画の進捗状況を聞き取り調査するとともに、施設内を視察しました。特に、使用済み核燃料の保管状況などを詳細に説明を受けました。
 事故復旧状況について増田所長から、今年3月末までに1号機から4号機の全ての原子炉の注水・冷却設備の復旧が完了するとの報告がありました。これまで仮設電源で運用していた2号機が1月30日に復旧、最後まで修理が遅れていた1号機も3月末までの復旧見通しが立ったとのことでした。
 4基ある原子炉のうち、1号機の海水熱交換器建屋には震災当日、津波が侵入し、大きな被害を受けました。配電盤は海水に漬かったため、赤さびと細かい砂が付いた状態になっています。津波被害を直接こうむった1号機の復旧工事の進捗状況は、現在約7割。今後、電源盤や非常用ディーゼル発電設備、電源ケーブルなどの復旧作業を進めます。2号機は1月30日までに残留熱除去機器冷却系や非常用ディーゼル発電設備、原子炉補機冷却系などの電源やケーブルなどの復旧工事が完了しました。
 3、4号機については、冷温停止の維持に必要な設備について、本設設備への復旧がすでに完了しています。今回、公明党県議団は3号機について、実際に視察しました。
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(写真は燃料プールを視察する公明党県議団、右から八島いさお県議、高崎進県議、増田尚宏所長、井手よしひろ県議。なお、写真はいずれも東京電力が撮影し、ご提供いただきました)
福島第2原発は「紙一重」で安全性を確保
 福島第2原発は、未曽有の大惨事を招いた福島第1原発の南、約12キロに位置しています。福島第1原発と同様に東日本大震災による津波被害を受けました。原子炉事故対応の三大原則は「原子炉を止める」「原子炉を冷やす」「放射性物質を閉じ込める」です。
 福島第1原発と第2原発の差はなんだったか?それは、「原子炉を冷やす」ための外部電源がいかに速やかに復旧できたか、できなかったかにつきます。
 津波来襲後ほどなく、福島第1原発は「全電源喪失」が確認されました。夜には原子力災害緊急事態の宣言が出され、半径3キロ以内の住民に避難指示が出されました。同じく第2原発でも翌12日に緊急事態が宣言され、半径10キロの住民に避難指示が出されました。
 第2原発では、いずれもフル稼働中だった1〜4号機の4基とも自動停止しました。3号機を除いて冷却機能が一時喪失しましたが、14日には1、2号機が冷温停止状態になり、15日朝には4号機も冷温停止が確認されました。
 増田所長の説明によると、全電源喪失に至った福島第1原発とは異なり、第2原発では、4系統ある外部電源のうち1系統が、まさに生き残ったのです。このため、冷却のための注水作業が継続できましたし、原子炉内の様々な数値データの確認が可能となり、必要な対策を打つことができました。
 限られた電源を確保するために、動員できる職員全員で数十キロの仮設電源ケーブルを担いで9キロも敷設するなど、突貫工事が続きました。増田所長は、「福島第1原発ほど状態がひどくならなかったが、紙一重だった」と率直な感想を語ってくださいました。
3号機の原子炉建屋内を現地調査
 福島第1原発の敷地内に入ると、想像以上に改修が進んでおり、外観からは被災した様子はすでに見受けられませんでした。敷地内の放射線量は毎時0.4〜1.1μSvで福島第1原発由来の放射能の影響です。
 施設内の会議室で、増田所長の説明や意見交換を行い、防護服に着替えて原発内の施設を視察しました。
 一行は、まず「研修棟」でサイトシミュレーターでの運転員の訓練の模様を視察。特に、全電源喪失などの過酷事故を想定した訓練の状況を体感しました。
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(写真はサイトシミュレーターを視察する公明党県議団)

 引き続き3号機の原子炉建屋内を調査しました。この3号機は、“沸騰水型軽水炉”。1985年6月稼動。出力110万kW。東芝製での原子炉です。東海第2発電所と同時代の原子炉ですが、内部の構造は明るく、メンテナンス性も高いように感じられました。
 使用済み燃料の保管状況を確認するため、最上部の燃料プールを実際に見せていただきました。現在3号機には使用済燃料体1596体、新燃料体184体が保管されています。深いブルーの純粋中に沈められた使用済燃料体からは、つねに崩壊熱が発せられ、周辺の照明に照らされて薄い湯気が感じられます。この燃料体を安全に管理し続けることが必要になります。
参考写真 震災当時1〜4号機の炉内には、各々764体の燃料体が架装されていました。各燃料プールには計7020体の使用済み核燃料と未使用の新しい燃料がありました。事故以来、燃料体がプールから露出するような事態は全くなく、燃料を十分冷やすことができています。増田所長は「健全性に問題は全くありません」と語っています。
 今年10月、4号機原子炉内の764体を燃料プールに移動。平成26年度までに1〜3号機についても、炉内にある燃料体をプールに移し、炉内や燃料の健全性を点検します。
 使用済み核燃料の貯蔵施設は、青森県の施設だけです。健全性が確認された燃料は、むつ市で13年10月に事業開始予定の中間貯蔵施設、または六ケ所村の再処理工場に搬出される見通しですが、具体的な計画はまだありません。
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(写真は原子炉格納容器の直下を視察する公明党県議団)
 燃料プールの視察を後、原子炉建屋内の主要装置を視察し、津波で直接的な被害があった海水熱交換器施設の復旧状況を調査しました。津波は単なる海水だけではなく、大量の砂や堆積物を残しているため、その対応に苦心している様子を聴き取りしました。
福島第2原発の視察調査を終えて
 現在、福島県や福島県議会は福島第1原発6基、第2原発4基、合計10基の廃炉を国に求めています。福島第1原発については正式な廃炉が決まっていますが、まだ福島第2原発については結論が出ていません。原子炉の安全性が確保され、核燃料が健全に保管されるまで、なお多くの道のりが待っています。
 今回、福島第2原発の視察を終えて、増田所長以下東電社員、関連会社社員の並々ならぬ努力を深く感じることが出来ました。一刻も早く国の責任で、福島第2発電所の今後の方針を明確に示す必要があることを痛感しました。国は現場の努力を無駄にしてはいけません。