130508houkichi 近年、耕作放棄地の増加が深刻化しています。1年以上作付けされず、今後耕作される見通しのない農地を耕作放棄地と呼んでいます。農水省では、農業主体者への支援を拡充させ、耕作放棄地の早期解消を図るために、平成21年度から5年計画で「耕作放棄地再生利用緊急対策」事業を展開していますが、明年3月で本事業実施期間が終了してしまうことから、来年度以降の新たな耕作放棄地再生利用対策の早期の具体化が強く望めています。
 耕作放棄地は、病害虫の発生源、イノシシなど有害鳥獣のすみか、廃棄物の不法投棄の誘発など、農業生産へ支障をきたすだけでなく、農村景観に様々な悪影響を及ぼしてもいます。
 地域住民の生活環境を守り、農業生産の基盤である農地を確保するためには、荒廃した農地の再生利用を加速させることが重要です。
 平成22年の時点で、日本全国の耕作放棄地は、39.6万ha(埼玉県の面積に相当)でした。昭和60年までは、およそ13万haと横ばいでしたが、平成2年以降から増加傾向に転じ、この20年間で約3倍にまで広がっています。
 茨城県においては、平成22年における耕作放棄地面積は21,120haとなっており、平成17年と比較すると763ha(3.7%)の増となっているものの、増加率は鈍化しています。
 耕作放棄地の最も大きな発生要因は、農業者の高齢化の進行と後継者の不在、農作物価格の低迷などで営業が続けられなくなっていることです。
 農水省によると、今後5年で現在250万人いる農家のうち70万人 以上が引退する見込みとなっており、高齢農家の農地をいかに意欲ある若い農家や農業生産法人に引き継いでいくかが最大の課題となっています。
 農水省では、農業主体者への支援を拡充させ、耕作放棄地の早期解消を図るために、平成21年度から5年計画で「耕作放棄地再生利用緊急対策」事業を開始しました。
 この事業は、引き受け手が行う耕作放棄地の再生や土づくり、再生農地を利用する就農者への研修、作付・加工・販売の施行、必要な施設の整備、権利関係の調査・調整等に交付金を支給する制度で、今日までに多くの地域が交付金を活用して農地を再生しています。
 農水省の平成25年度予算には、重点項目として「耕作放棄地再生利用緊急対策交付金」約45億円が盛り込まれていますが、対策事業の最終年度となっており、明年3月で本事業実施期間が終了してしまいます。
耕作放棄地を最大活用のために農地集約
 こうした状況の中、政府は農業の競争力強化に向けて、農地の集約化を促す都道府県単位の「農地中間管理機構(仮称)」を新設する方針を示しています。農地中間管理機構は大規模生産者と小規模農家との間で農地の貸し借りを仲介するなどして、農業経営の規模拡大や耕作放棄地の解消につなげていく予定です。
 農水省は、機構による農地所有権の取得や、借り手が見つかるまでの一時管理のコストとして数千億円規模の国費投入も想定。農業用水路などインフラ整備も積極的に進め、意欲のある農家の農業経営拡大を後押しします。小規模農家が多い現状を改善、国内農業強化を図ることが目的です。農水省は、今後、農地集約と耕作放棄地解消に向けた数値目標を設ける考えも表明しています。
 農地集約については、現在、都道府県が出資・運営する「農地保有合理化法人」が主に遊休農地の売買を仲介しています。しかし、財政基盤が弱く、取り扱い実績は年間約8000ヘクタール程度にとどまっています。農水省は農地対策の抜本的強化が必要と判断、国費投入で国も積極的に関与する農地集約の新機構設立に動くことになりました。
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