権利の制限は違憲。夏の参院選で投票できるよう与党が公選法改正案まとめる
120731kaogo 成年後見人が付くと選挙権を失うとする公職選挙法11条1項1号の規定について、公明党は、被後見人の選挙権回復を早期に実現させるよう強く主張してきました。5月7日には、自民、公明両党で、同規定を削除する公選法改正案をまとめ、夏の参院選からの導入に向け、月内の成立をめざしています。
 東京地裁は3月14日、被後見人の名児耶匠さんが選挙権を求めた訴訟で「規定は社会的身分による選挙権の差別を禁じた憲法に違反する」として、公選法の規定を違憲とする判決を言い渡しました。3月19日には、名児耶さんらが公明党の北側一雄副代表らに対し、公選法の早期見直しや、国の控訴断念を要請。これを受け北側副代表らは4月26日、政府に控訴を断念するよう直接要請しましたが、政府は、判決が確定すれば自治体の選挙事務が混乱する、などとして控訴しました。
 しかし、公明党は「選挙権は、国民主権と議会制民主主義の根幹をなす、最も重要な国民の権利」として、自民党にも協力を呼び掛け、取り組みを加速。4月12日には、与党両党による成年被後見人と選挙権に関するプロジェクトチームの初会合を開催。議論を重ね、与党案をまとめました。
 与党案では、被後見人は選挙権を失うとした公選法の規定を削除するほか、身体障がい者などに認められている代理投票を被後見人にも認めるよう改められています。
牛久在住の名児耶さんの思いを実現
 「娘は成人してから27年間、地方選挙も含めて、ほぼ欠かさず投票を楽しみにしてきた」。茨城県牛久市在住で、3月に出た東京地裁判決の原告・名児耶匠さんの父・清吉さんは、そう穏やかに語ります。
 匠さんはダウン症で知的障がいを抱えています。投票所で投票する際、匠さんは多少の時間を要するが、補助する人は必要としません。自ら投票用紙に記入し投票してきました。投票後は、一社会人としての権利を行使できた達成感からか、ニコニコと笑顔で家路につくのが常だったといわれています。
 毎週月曜から木曜の午前中は仕事をし、手芸が趣味の匠さんでしたが、2007年、清吉さんを後見人に成年後見制度の利用を申し立ててから「選挙はがき」が届かなくなりました。公職選挙法11条1項1号では、成年被後見人の選挙権を認めていないためです。
 「私は国と共犯で娘の選挙権を奪ってしまった。何としても、取り戻さなければ」。ざんきに堪えず、清吉さんは匠さんの選挙権を回復するための行動を始めました。東京地裁判決で裁判長は、公選法11条の規定について憲法で定める国民主権を支える選挙権の制限は許されないとし、「どうぞ選挙権を行使して社会に参加してください」と匠さんに語り掛けました。
 成年後見制度は2000年4月にスタート。認知症や知的・精神障がいなどで、判断能力が不十分な人の財産管理、福祉サービスの契約などを本人に代わり「後見人」が行います。制度開始から13年が経過しました。同時期に施行された介護保険制度と併せ高齢社会を支える「車の両輪」とされたが、認識不足や手続きの煩雑さなどもあり、需要が高いにもかかわらず利用件数の低調さが問題になっています。
 こうした現状を打開するため、公明党は2010年12月、「成年後見制度促進プロジェクトチーム」を設立。関係団体、関係機関へのヒアリングや調査活動を積み重ね、12年7月には成年後見制度の効果的な利用促進を柱とする成年後見制度利用促進法案の綱要骨子を発表。これには公選法11条の規定見直しも盛り込みました。