橋本知事への申し入れ 5月27日、井手よしひろ県議ら茨城県議会公明党議員会は、茨城県庁に泉幸一生活環境部長を訪ね、23日発生したJ−PARC(東海村白方)内の実験施設での放射性物質の漏えい事件に関して、説明を聴取するとともに橋本昌知事宛の申し入れ書を手渡しました。
 これには公明党の井手県議、八島功男県議(土浦市選出)が参加、生活環境部から泉部長と服部隆全原子力安全対策課長が説明並びに申し入れを受けました。
 泉部長は、「J−PARCは茨城県にとって重要な施設。放射性物質の漏えいや研究員が被ばくしたことは大変遺憾」と述べました。その上で、「施設周辺への放射性物質の影響は、現在のところ異常は確認できない」と説明しました。また「排気ファンに放射性物質のフィルターがなかったことや通報が遅れたことも大きな問題だとして、J−PARCセンターなどに原因究明や再発防止策、信頼開発を強く求めていく」と語りました。
J−PARC事業者への申し入れ その後、井手県議らは東海村のJ−PARCセンターに移動。大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構(高エネ研・機構長:鈴木厚人)、独立行政法人日本原子力研究開発機構(原子力機構・副理事長:辻倉米蔵)宛の申入書を高エネ研素粒子原子核研究所山内正則所長、原子力機構東海研究センター冨田英二副センター長兼管理部長に手渡しました。これには、地元東海村の岡崎悟、植木伸寿両公明党村議も参加しました。
 冨田副センター長は「予期しない大量の放射性物質の放出事故を起こし、たいへん申し訳ありません。通報も33時間も遅れ、深く反省しています。原因究明と信頼回復に全力を挙げてまいります」と述べました。山内所長は「この施設は原子力機構との共同事業です。想定外の事故で、地元の皆さまにご心配をお掛けし、たいへんショックを受けています。申し訳ない思いです。さらに、直後の対応も反省することが多々ございます」と語りました。
 井手県議は「放射性物質の放出は23日午前11:55一回だけだったのか」「なぜ、放射性物質の施設外への漏えいを(空間線量の上昇を)、J−PARCのモニタリングポストで捉えられなかったのか」などと質問しました。岡崎村議は「施設の換気装置に放射性物質の遮るフィルターが付いていないことは、全く理解できない。法令に定められた以上の安全対策が必要」と指摘しました。植木村議は「被ばくした研究者の内部被ばく調査は、翌日になって申し出によって行われたと聞いているが、なぜ、その場で行わなかったのか」と質問、人命第一の体制整備を訴えました。

J−PARC内の施設での放射性物質漏洩に関する申し入れ書
2013年5月27日

茨城県知事 橋本昌 殿

 5月23日、J−PARC内(茨城県東海村白方)の日本原子力研究開発機構のハドロン実験施設で、金に陽子ビームを照射して素粒子を発生させる実験中に、発生した放射性物質が施設外に漏洩するという事故が発生しました。
 事故当時この施設には、55人が出入りしており、女性2人を含む30人が内部被ばくしていたことがわかりました。
 被ばく量は、日本人が1年間に自然界から浴びるのと同レベルの0.6〜1.7ミリ・シーベルトで、被ばくした方々は自宅などに戻っており、健康への影響は少ないとみられます。しかし、30人もの人が内部被ばくした事故は、福島第一原発事故やJCO臨界事故につぐ規模の事故であり、深刻な事故であると認識しています。
 事故が起こったJ−PARCは世界最先端の加速器で、今後の研究開発や地域振興のために大きな期待が掛かっているだけに、茨城県民として慚愧の念に堪えません。
 原子炉とは違って、重大な事故は起こらないという安易な姿勢が、30人もの内部被ばく者を出すという重大な事故に繋がりました。現場の研究者の判断で、放射性物質が漏洩しているにもかかわらず、警報をリセットして運転を続けたことも大きな問題です。
 また、連絡報告の遅れも看過できません。放射性物質の汚染や被ばくが判明した時点で速やかに県や東海村には報告すべきすが、県への報告までに事故発生から33時間を要しました。県と周辺自治体が機構と結んでいる原子力安全協定では、放射能漏れなどの際に連絡に時間の規定はありませんが、連絡報告体制の見直しが不可欠です。
 さらに、放射性物質の屋外への漏洩の原因となった排気ファンは、放射性物質のフィルター装置などは設置されていませんでした。こうした簡易な形式の排気ファンで良いのか、抜本的な設備、装置の安全基準の再検討も必要です。
 こうした状況を鑑み、貴職にありましては、J−PARCの安全性の確保に従前にもまして取り組んでいただきたく、下記のようなご対応をいただけますよう、ここに緊急の申し入れをいたします。

【申し入れ事項】
  1. 高エネルギー加速器研究機構、日本原子力研究開発機構への指導、監督を徹底し、J−PARCの信頼回復に全力を挙げること。
  2. 放射性物質の漏洩事故原因を徹底的に究明し、再発防止に全力を挙げること。
  3. 装置の運転マニュアルを明確化し、装置内での実験・作業に係わる全ての関係者に徹底すること。
  4. 事故発生時の連絡・報告体制を全面的に見直し、県民への広報体制を充実させること。
  5. 排気ファンを始めとする施設内の装置、機器の安全基準の再検討を至急行うこと。


J−PARC内の施設での放射性物質漏洩に関する申し入れ書
2013年5月27日

大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構
機構長 鈴木厚人 殿
独立行政法人日本原子力研究開発機構
副理事長 辻倉米蔵 殿

 5月23日、J−PARC内(茨城県東海村白方)の日本原子力研究開発機構のハドロン実験施設で、金に陽子ビームを照射して素粒子を発生させる実験中に、発生した放射性物質が施設外に漏洩するという事故が発生しました。
 事故当時この施設には、55人が出入りしており、女性2人を含む30人が内部被ばくしていたことがわかりました。
 被ばく量は、日本人が1年間に自然界から浴びるのと同レベルの0.6〜1.7ミリ・シーベルトで、被ばくした方々は自宅などに戻っており、健康への影響は少ないとみられます。しかし、30人もの人が内部被ばくした事故は、福島第一原発事故やJCO臨界事故につぐ規模の事故であり、深刻な事故であると認識しています。
 事故が起こったJ−PARCは世界最先端の加速器で、今後の研究開発や地域振興のために大きな期待が掛かっているだけに、茨城県民として慚愧の念に堪えません。
 原子炉とは違って、重大な事故は起こらないという安易な姿勢が、30人もの内部被ばく者を出すという重大な事故に繋がりました。現場の研究者の判断で、放射性物質が漏洩しているにもかかわらず、警報をリセットして運転を続けたことも大きな問題です。
 また、連絡報告の遅れも看過できません。放射性物質の汚染や被ばくが判明した時点で速やかに県や東海村には報告すべきすが、県への報告までに事故発生から33時間を要しました。県と周辺自治体が機構と結んでいる原子力安全協定では、放射能漏れなどの際に連絡に時間の規定はありませんが、連絡報告体制の見直しが不可欠です。
 さらに、放射性物質の屋外への漏洩の原因となった排気ファンは、放射性物質のフィルター装置などは設置されていませんでした。こうした簡易な形式の排気ファンで良いのか、抜本的な設備、装置の安全基準の再検討も必要です。
 こうした状況を鑑み、貴職にありましては、J−PARCの安全性の確保に従前にもまして取り組んでいただきたく、下記のようなご対応をいただけますよう、ここに緊急の申し入れをいたします。

【申し入れ事項】
  1. 放射性物質の漏洩事故原因を徹底的に究明し、再発防止並びにJ−PARCの信頼回復に全力を挙げること。
  2. 装置の運転マニュアルを明確化し、装置内での実験・作業に係わる全ての関係者に徹底すること。
  3. 事故発生時の連絡・報告体制を全面的に見直し、県民への広報体制を充実させること。
  4. 排気ファンを始めとする施設内の装置、機器の安全基準の再検討を至急行うこと。