今年4月から定期接種化になった子宮頸がんワクチンを接種したことで、重篤な副作用が出ているとの報道があります。また、一部の医師や研究者、保護者などから不安の声が聞かれます。そこで、公明党厚生労働部会長の渡辺孝男参院議員に見解や公明新聞などの記事を元に、子宮頸がんワクチンの安全性についてまとめてみました。
失神など多くは一過性で回復
薬の成分ではなく注射の刺激で発症の可能性

 子宮頸がんワクチンの副作用に不安が広がっていますが、子宮頸がんワクチンに限らず、どのようなワクチンでも、ごく稀に副作用が起こり得ることは知られています。子宮頸がんワクチンによる副作用の大多数は、注射を打つことに対する痛み、恐怖、不安などからくる一時的な血圧低下、顔面蒼白、失神といった症状だと報告されています。これらは一過性の症状で、いずれもほどなく回復しています。
 テレビなどでは、けいれんを起こした女子生徒の映像も放送されましたが、日本産婦人科医会では、「複合性局所疼痛症候群」の疑いがあるとの見解を示しています。また、これらの症状はワクチンの成分によるものではなく、「注射針等の刺激がきっかけになって発症すると考えられ」、因果関係についても不明だと説明しています。
 また厚労省の検討会も同様の理由から、すぐに接種を中止する必要はないと判断しています。
 一部のマスコミ報道では、今年4月からの子宮頸がんワクチンが定期接種化は、時期尚早だったとの指摘もあります。しかし、欧米先進国では日本より5年ほど早く定期接種化され、億を超える回数が接種されています。むしろ日本の導入が遅すぎたという指摘があったことを忘れてはなりません。
 副作用が稀に起こる可能性がある一方で、若い女性の前がん状態の細胞は減少しており、有効性も確認されています。副作用のリスクよりも子宮頸がん予防のメリットの方が高いことが分かっているため、世界的にも推進の流れがあります。そうした背景から、公明党も早期の定期接種化を推進してきました。極論ではありますが、ワクチンで救える人命の数と副作用の確率を比べると、充分に接種する効果が高いということです(副作用があっても仕方が無いという意味ではありません)。
 では、副作用がどうしても心配だという場合はどうすればよいのでしょうか?
 過去に予防接種で失神などを起こしたことがあるとか、アレルギーや他に病気がある場合には、事前に主治医と相談し、場合によっては接種を見送るという選択肢もあります。
 いずれにしても、子宮頸がんで毎年3000人強が亡くなっていることを考えて、冷静な対応が必要です。
子宮頸がんワクチン、副作用で重篤106件
朝日新聞デジタル版(2013/5/16)
 子宮頸(けい)がんのワクチンで接種後の健康被害が報告されている問題で、厚生労働省の検討会は16日、医療機関などから報告されていない例も含めて調査を進めることを確認した。因果関係を判断するための情報が不足しているためという。接種の一時中止などは必要ないとの意見で一致した。
 厚労省が検討会に示した資料によると、販売が開始された2009年12月以降、3月末時点の副作用報告は1968件。接種者数でみると、1万人に1人から2万5千人に1人の割合になる。
 同省によると、製薬会社のグラクソ・スミスクライン製造のワクチンでは、医療機関から1001件、製造販売会社から704件、別の製薬会社、MSD製造のワクチンは、医療機関から195件、製造販売会社から68件の報告があった。接種者数に対する報告の割合は0・004〜0・014%。これまで報告されていた割合と、違いはなかった。医療機関側が接種との関連があるとした例は733件だった。
 医療機関からは担当医が重篤と判断した例も報告され、グラクソ製は91件(接種者数に占める割合0・0013%)、MSD製は15件(同0・0009%)だった。製造販売会社からの報告772件は基本的にすべて重篤例という。今年に入り報告された例では、失神や意識消失、感覚障害、流産などがあった。
 このワクチンをめぐっては、今年3月、接種後に歩行障害が出るなどして、長期間休学したなどの訴えがあり、接種者の親らでつくる団体が同省などに被害実態の調査を求めている。団体からは24件の健康被害の報告があり、うち17件は医療機関などから副作用報告としてあげられていなかった。同省は今後、担当医に問い合わせるなどして接種との因果関係を調査。次回以降の検討会に報告し、専門家の意見を仰ぐ。