防災研でのヒアリング 9月9日、井手よしひろ県議ら公明党県議会議員会は、つくば市の防災科学技術研究所を訪れ、“竜巻”の発生メカニズムやその予報体制、住民も安全を守る体制整備などについて聞き取り調査を行いました。
 この日の説明・意見交換には、防災科学技術研究所アウトリーチ・国際研究推進センター竹田健児センター長、観測・予測研究領域水・土砂防災ユニット岩波越ユニット長、鈴木真一主任研究員があたっていただきました。
 9月2日、埼玉県越谷市から千葉県野田市にかけて被害をもたらした竜巻について、防災研はこの竜巻を引き起こした積乱雲の立体動画をコンピューターで再現し、被害の調査結果とともに公開しています。

参考:2013年9月2日に埼玉県越谷市等に被害をもたらした竜巻について(速報)

 この観測にあたっては、防災研が神奈川県海老名市と千葉県木更津市に設置している「XバンドMPレーダ」の観測結果を活用しました。通常は、360度全方位の観測をしているXバンドMPレーダを、北方面にだけ向け、2分ごとの詳細なデーターを取得しました。これによると、積乱雲は13:30には、高さ約10キロメートルに達していました。越谷市付近に西南西方向から接近しながら急速に発達し、14:00頃には、高さ15キロメートルを超えました。積乱雲の中で雨や氷の粒が密集し、毎時100ミリの猛烈な雨を降らす領域も、14:00には地表付近まで降りていました。
 積乱雲は毎秒10数メートルで移動し、竜巻は積乱雲の最盛期から衰退期へと移るタイミングで、積乱雲の南東端に位置する秒速30メートルの強風域で発生していたとみられます。
 今回の観測で威力発揮したXバンドMPレーダは、正式名称をXバンド・マルチパラメータ・レーダと呼び、Xバンド(波長3cm)の水平・垂直の二種類の偏波を同時に送受信することによって、在来型の気象レーダよりも精度よく降雨強度を推定することのできるレーダです。従来の広域レーダに比べ、高頻度(5倍:5分間隔→1分間隔)、高分解能(16倍:1kmメッシュ→250メッシュ)での観測が可能です。観測範囲は半径約60km(広域レーダは半径約120km)です。
XバンドMPレーダの特徴は、
1.波長が短いため、精度の高い観測が可能(250mメッシュ)。
2.雨粒の形状を把握することができ、雨量を推定するため精度が高い(落下する雨粒が大きいほど上下に扁平する性質を利用して、雨の強さを観測することができます)。地上雨量計での補正が不要なため、ほぼリアルタイム での情報配信が可能。
などがあり、ゲリラ豪雨の観測に威力を発揮します。反面、観測できる範囲が半径60キロと広域レーダの半分程度(面積では4分の1程度)と狭いため、複数台のネットワークを構築して観測に体制をと整える必要があります。
 防災研では、このXバンドMPレーダの開発研究を行ってきましたが、今後は雲(雲粒)それ自体を観測できるレーダ(雲レーダ)の研究を行っています。
参考:防災科学技術研究所「Xバンド・マルチパラメータレーダ」について

国交省の“XRAINシステム”とiPhoneアプリ“Go雨!探知機”
 XバンドMPレーダーは、高分解能(高精度)、高いリアルタイム性、雨の移動方向・位相速度の観測が可能といった、優れた特性があります。しかし、非常に強い降雨域の後方において電波が減衰・消散してしまい、観測不能となる場合があります。
 そこで、観測地域を複数のレーダで囲むように配置することが基本となります。
 国交省では、ゲリラ豪雨などの観測のために、全国にXバンドMPレーダーの観測網を整備する計画です。このシステムをXRAINと呼んでいます。
XRAINシステム
 すでに全国27基が稼動中でしたが、この9月上旬から北関東、東北地方の8基が稼動し、35基体制となりました。26年度中には九州地方の3基の運用が始まり、全国で38期体制となります。
関東地方の範囲拡大 今回の8基増設で、関東地域の観測網が大幅に強化されました。従来、2基(関東局、新横浜新局)で観測を行っていましたが、新規(氏家局、八斗島局、船橋局)の配信開始により、観測範囲が拡大(千葉県、埼玉県、茨城県、群馬県等)するとともに、複数基で観測される範囲の観測精度が向上しました。
 8月8日のブログ「日本気象協会がゲリラ豪雨対応アプリ公表」で紹介した情報提供範囲も大幅に拡大され、茨城県全域で活用できるようになりました。iPhone利用者は、アプリ「Go雨!探知機ーXバンドMPレーダー」を是非一度インストールしてみてください。日本気象協会が無料提供しています。
参考:「Go雨!探知機ーXバンドMPレーダー」(iTunes)