茨城県の国民医療費 茨城県の国民医療費は平成20年度には7254億円に達し、17年度の6989億円に比べると3.8%増加しています。県の第2医療費適正化計画では、計画目標を達成したとしても、平成29年度の医療費は9432億円に増大します。これは、20年度比で1.3倍となる計算です。
 医療費の削減や県民の健康を守るためには、「予防医療」の充実が不可欠です。
 特にその中でも、健診制度の充実やその受診率の向上、様々なワクチン接種への補助制度の充実と接種率向上は、重要な課題です。
 例えば、がん検診について言えば、がん検診の最大の目的は、いうまでもなく早期のがんを見つけることです。早期にがんを発見して、適切治療を行えば、すでにがんは不治の病ではありません。
 茨城県では、がん検診実施指針を定め各市町村等が主体となり胃がん、肺がん、大腸がん、乳がん、子宮がん、子宮頸がんなどの検診を実施しています。
 しかし、平成22年の国民生活基礎調査によると胃がん検診の受診率は32.6%、肺がんが26.6%、大腸がんが25.6%、乳がんが39.8%、子宮がんが36.5%と、残念ながら非常に低いことが問題です。
 なぜ、受診率が低いのか、今年3月に発表された内閣府の「がん対策に関する世論調査」によると、検診を受けない理由として、「受ける時間がない」(47.4%)が最も多く、「がんと分かるのが怖い」(36.2%)、「経済的に負担」(35.4%)と続いています。
 しかし、受診率が上がれば早期発見・早期治療につながることは火を見るより明らかです。現在、がんで亡くなる人は年間約35万人。がんの罹患と死亡数の増加は主に高齢化が理由ですが、40代以降で死亡原因の第1位を占めるなど、働き盛り世代にとっても無関係ではありません。国民一人一人の積極的な意識向上と企業側の支援態勢が重要です。
 政府が定めた「がん対策推進基本計画」は、平成28年度までに検診受診率を50%に引き上げる目標を掲げ、企業が率先して検診の大切さを呼び掛ける「がん検診企業アクション」への協力を進めています。3月31日現在、984企業・団体が賛同し、受診率向上に取り組んでいます。
 このうち、受診率を把握している162企業・団体の平均受診率は、73.7%と非常に高くなっています。こうした職場での検診率アップに先進的に取り組む企業は、まだ、一握りにすぎません。まだまだ、がん検診に配慮しない企業や社員の受診率を把握していない企業の方が多いのが実態です。
 企業にとって、社員は会社の命運を左右する財産です。人材の健康管理に無関心でいると、貴重な戦力を失う恐れも出てきます。受診時間を就労扱いにするなど、受診しやすい環境づくりも必要です。
 一方、公明党が主導した乳がん・子宮頸がん・大腸がんの無料クーポンが受診率押し上げに大きな効果を挙げてきました。今年度は制度導入から5年目で、見直し時期を迎えます。今夏までに厚労省の検討会が、がん検診のあり方の方針をまとめることになっています。検診の費用負担と受診率は密接な関係があるだけに、無料クーポンは是非とも継続すべきです。
 受診率を高めるには、他の対策との連携も必要です。例えば、コール・リコール(個別受診勧奨)制度の導入です。無料クーポンなどで検診案内したにもかかわらず受診しない人に、手紙や電話などで、あらためて踏み込んだ案内をする制度です。イギリスでは、この制度の導入で40%だった受診率が80%を上回わりました。
 また、がん検診自体も今までのやり方が良いのか、不断の見直しが必要です。例えば、胃がん検診は永年にわたってレントゲン、バリウム検診が続けられています。しかし、この方式は被験者への負担が重く、早期がんの発見率は余り高くないと言われています。そこで、ピロリ菌ABCリスク検査を導入し、リスクの高い被験者を内視鏡で直接検査する方式を導入すれば、費用負担、身体的な負担も大きく改善されます。こうした思いきった施策の転換が迫られています。
 2人に1人は、がんになる時代です。検診の正しい知識や普及啓発に、検診方法の見直しなど、県は積極的に取り組むべきです。

 また、感染症の予防に効果を発揮するワクチン接種の普及と接種率の向上、公的支援の充実も必要です。
 今年4月から、公明党の強い働き掛けが実り、子宮頸がん予防、インフルエンザ菌b型(ヒブ)、小児用肺炎球菌の3ワクチンが、国が感染予防のために必要としている「定期接種」に追加されました。対象年齢のうちに市町村が契約した医療機関などで予防接種を受ける場合、接種費用の9割が公費負担の対象範囲となり、経済的負担が非常に軽減されました。
 一方、3ワクチンが新たに定期接種化されたものの、厚生労働省の予防接種部会では昨年5月、水痘、おたふくかぜ、成人用肺炎球菌、B型肝炎、の4ワクチンについても予防接種法の対象疾病に追加すべきとの提言をまとめています。私ども公明党は、これら4ワクチンの追加を強く求めていきます。
 特に、成人用肺炎球菌ワクチンは、インフルエンザの予防接種などと同時に接種することで、高齢者の主な死亡原因の一つである肺炎を劇的に予防することが出来ます。茨城県内では44市町村中25市町村で助成が行われていますが、残り19市町村の助成制度の導入が喫緊の課題となっています。
 現在、子宮頸がん予防ワクチン接種による副反応に注目が集まり、積極的な行政の接種勧奨が控えられていますが、いずれのワクチンもその効果は世界的に見ても証明されています。県は、粛々と接種勧奨を進めるべきだと考えます。