ヒマラヤの氷河の減衰 9月27日、気候変動に関する政府間パネル(IPCC)は、地球温暖化の原因が二酸化炭素(CO2)である可能性が「極めて強い」とした第5次評価報告書を承認しました。
 IPCCは、有効な対策が取られなかった場合、今世紀末に地球の平均気温が最大4.8度、海面水位は最大82センチ上昇すると予測しています。人間の活動が温暖化の主要な原因である可能性を「極めて高い」(95%以上)とし、2007年の第4次報告書の「90%以上」より表現を強めました。
 各国は2020年以降の新たな温暖化対策の国際枠組みを2015年に作る予定で、報告書は、交渉に大きく影響します。
 報告書は、世界の気温が1880〜2012年に平均0.85度上昇したと分析。海では3000メートルより深い層でも水温が上昇している可能性が高いと初めて指摘しました。大気中のCO2濃度は産業革命前の1.4倍に急増。海に溶けるCO2が増え、海洋酸性化が進むことはほぼ確実としています。
 また、今後取られる温暖化対策の効果によって、CO2濃度が変化する4種類のシナリオを想定し、それぞれ今世紀末の地球を予測。海面水位は、南極やグリーンランドの氷が解ける影響を新たに計算に入れた結果、第4次報告書の18〜59センチを上回る26〜82センチ上昇すると分析しました。
 一方、有効な対策を取らないままCO2濃度上昇が続けば、気温は2.6〜4.8度上昇するとしました。逆に、今世紀中に濃度を下降に転じさせられれば、0.3〜1.7度の上昇幅に抑えられるとしました。
 残念ながら、この報告書が予測する未来は明るいものではありません。
 陸地・海洋の温度上昇や北極圏の雪氷の減少、海面の水位上昇などが今以上に深刻化します。大雨や洪水、干ばつ、熱波などの極端な気象の発生も増加します。
 平均気温の上昇は、農林水産物の生産に大きな打撃を与え、食料問題に波及していきます。海面の水位上昇は、人間が利用できる土地の減少につながる懸念があります。極端な気象の発生増加は、より大きな災害をもたらします。
 こうした地球規模の危機を食い止めるため、各国政府は早急に対策を進めなければなりません。2015年に全ての国を対象とした、CO2排出削減のための法的枠組みを採択し、20年から運用を開始する予定です。しかし、肝心の具体案は全く見えていないのも現実です。
 全ての国を対象とする法的枠組みの採択に、日本が果たすべき役割は大きいもにがあります。しかし、東京電力福島第1原発の事故以降、火力発電への依存度が増加し、国内のCO2の排出量が増加しています。国際社会に環境面で貢献するには、苦しい立場です。
 まずは、停滞気味な国内の温暖化対策を力強く進め、自信を持って国際協議の場に臨めるようにすべきです。
 日本には世界に誇る省エネや再生可能エネルギーの技術があります。温暖化対策で世界に模範を示す力を持っています。
 環境・エネルギー分野は新しい成長分野です。その芽を大事に育てることが、経済成長と国内の温暖化対策を同時に推し進めることにつながります。
 特に、風力による発電量は東日本大震災前の原子力の発電量を、はるかに上回る潜在力を秘めています。日本の技術力に定評がある洋上風力発電は、世界的に優位に立てるはずです。
 政府は今月中旬から始まる臨時国会を「成長戦略実行国会」と名付けました。環境と経済を両立させて、日本の成長力を大きく引き出す議論を活発に展開しなくてはなりません。