子猫のイメージ写真 動物の命の価値がたったの78円?
 かわいがっていた捨て猫が殺処分されたことをきっかけに、動物が廃棄物のように殺される現実を知った小学6年生の女の子が、「胸がはりさけそう」な衝撃と命の重さについてつづった作文「78円の命」が、愛知県豊橋市で大きな反響を呼んでいます。昨年の「豊橋市中学生話し方大会」で最優秀賞に選ばれたこの作文は、インターネットを通じて全国にも感動を広げ、豊橋市の教育委員会はこのほど、公明党の宮澤佐知子市議の提案を受け、この作文を小・中学校の道徳教材として活用することを決定しました。動物の殺処分ゼロをめざす改正動物愛護管理法が公明党の推進で先月から施行されたこともあり、「全国の人に読んでもらいたい」(動物愛護団体)と期待が高まっています。
 作文は、豊橋市立青陵中学校1年の谷山千華さんが東田小学校6年生の時に書きました。かわいがっていた捨て猫が子どもを産んだことから始まります。ある日、子猫がいなくなり、殺処分されたことを知りました。初めて聞く“殺処分”という言葉。「死んだ後はごみのようにすぐに焼かれてしまう。動物の処分、1匹につき78円」という現実に「胸が張りさけそうになった」と綴られています。千華さんは、子猫を探して鳴き続ける母猫を抱きしめながら命の重さを考え続けました。眠れない夜を過ごし、「最期まで育てる自信がなければ飼ってはいけないことを学んだ」のでした。
 千華さんは、「事実をもっとみんなに知ってもらいたい」との思いを作文に込めました。
 市内外に感動が広がりました。豊橋市で「地域猫」(不妊手術をして野良猫が増えないよう管理)の活動をしている東三河動物福祉の会ハーツ(鈴木きみ子代表)が、作文をブログに載せると、「パネル展示したい」(広島県)などの感想が殺到。バーツの会の尽力で県校長会やPTAが発行する家庭教育月刊誌にも掲載されました。(参考:東三河動物福祉の会ハーツのHP
子猫のイメージ写真 自身も地域猫活動に携わる宮澤議員は今年9月定例会で、この作文を学校で生かすよう提案しました。答弁した加藤正俊教育長が「道徳授業の題材として活用する」と明言、最初の授業が今月28日に市内の小学校で実施されることになりました。ハーツの古橋幸子副代表は「捨て猫を減らすには飼い主の意識改革が最も大事。宮澤議員のおかげで前進した」と感謝を寄せています。
 教材として活用されることに千華さんは「捨て猫がいない街づくりへの、きっかけになればうれしい」と語っています。作文に心を動かされた母親の泰代さんも地域猫活動を始めました。
 昨年度、豊橋市で殺処分された猫は270匹。うち209匹は子猫で、野良猫の不妊対策の重要性を裏付けています。
「命の教育」に積極活用
豊橋市教育委員会加藤正俊教育長
 「78円の命」を何回も読んだ。心に深く響いた。子ども時代にいい教材に出会えたことはいつか必ず花を開く。 今後、この作文を積極的に活用していきたい。対象は小学校高学年がいい。3、4年生でウサギなど小動物の飼育を通して命の重さや死というものを体験的に学んでいるので、作文に込められた気持ちは必ず共感を得られると思う。
 今の日本に必要なのは、子どもたちの「心」をどうつくるかであり、そのためには教育で命の大切さを教えることが最も重要だ。本市の教育も「命の教育」を根本に据えている。その意味で「78円の命」は大事に使いたい教材だ。

78円の命
第41回豊橋市小中学生話し方大会最優秀賞作品
小学6年生・谷山千華さん
 
近所に捨てネコがいる。
そのネコは目がくりっとしていて、しっぽがくるっと曲がっている。
かわいい声をあげていつも私についてくる。

真っ黒なネコだったので、魔女の宅急便から『キキ』と勝手に名付けてかわいがった。
人なつっこい性格からいつの間にか近所の人気者になっていった。

子ネコだったキキも2年たった頃にうれしい出来事があった。
赤ちゃんを産んだのだ。
でもキキは捨てネコだったので、行き場所のない子ネコたちを近所の〇〇さんが預かってくれた。
毎日のように子ネコを見に行って、まるで自分の飼いネコのようにかわいがった。

ある日、突然子ネコの姿が見えなくなった。
そこで〇〇さんに尋ねてみると、「〇〇センターに連れて行ったよ」と、うつむきながら言った。

私はうまく聞き取れず、何を言っているか分からなかったが、
たぶん新しい飼い主が見つかる所に連れて行って幸せに暮らせるんだなと思った。

次の日、学校でこのことを友達に話したら「保健所だろ?それ殺されちゃうよ」といった。
私はむきになって言い返した。「そんなはずない。絶対幸せになってるよ」

殺されちゃうという言葉がみょうに心にひっかかり、授業中も保健所の事で頭がいっぱいだった。
走って家に帰ると、急いでパソコンの前に座った。

『保健所』で検索するとそこには想像もできないざんこくなことがたくさんのっていた。
飼い主から見捨てられた動物は日付ごとにおりに入れられ、そこで3日の間、飼い主をひたすら待ち続けるのだ。
そして飼い主が見つからなかった時には、死が待っている。
10匹単位で小さな穴に押し込められ、二酸化炭素が送り込まれる。
数分もがき、苦しみ、死んだ後はごみのようにすぐに焼かれてしまうのだ。

動物の処分1匹につき78円。
動物の命の価値がたったの78円でしかないように思えて胸が張りさけそうになった。
そして、とても怖くなった。
残念ながら、友達の話は本当だった。調べなければ良かったと後悔した。

現実には年間20万匹以上の動物がこんなにも悲しい運命にある事を知り、さらに大きなショックを受けた。
動物とはいえ、人間がかけがえのない命を勝手にうばってしまってもいいのだろうか。
もちろん人間にも、どうしても動物を育てられない理由があるのは分かっている。
一体どうすればいいのか分からなくなった。

キキがずっと鳴いている。大きな声で鳴いている。
いなくなった赤ちゃんを探しているのだろうか。
鳴き叫ぶその声を聞くたびに、パソコンで見た映像が頭に浮かび、いてもたってもいられなくなり眠れない夜が続いた。

キキのかわいい声もいつの間にかガラガラ声に変わり、切なくなった。
言葉が分かるなら話をしたい。私はキキをぎゅっと抱きしめた。

最近キキの姿を見かけなくなった。
もしかしてキキも保健所に連れて行かれたのかと一瞬ひやっとした。

それから1週間後、おなかに包帯を巻いたキキを見かけた。
〇〇さんがこれから赤ちゃんを産めない体に手術をしてくれたのだ。
私は心から感謝した。
この先キキも赤ちゃんも捨てられずにすむという安心した気持ちと、〇〇さん家のネコになってしまったんだというさみしい気持ちとで複雑だった。
正直、とてもうらやましかった。

命を守るのは私が考えるほど簡単なことではない。かわいいと思うだけでは動物は育てられない。
生き物を飼うということは1つの命にきちんと責任を持つことだ。
おもちゃのように捨ててはいけない。
だから、ちゃんと最期まで育ててやれるという自信がなければ飼ってはいけない事を学んだ。

今も近所には何匹かの捨てネコがいる。
私はこのネコたちをかわいがってもいいのかどうか、ずっと悩んでいる。

(このブログ記事は、2013/10/6付け公明新聞記事、2013/6/29付け朝日新聞をもとに作成いたしました)