来年4月から消費税率が5%から8%に引き上げられることが正式に決定する中、年金支給額の減額に不満の声が高まっています。今年10月から。年金額の「特例水準」を解消するため、サラーリーマンが加入する厚生年金や自営業者、農業者らの国民年金額が、3年かけて合計2.5%引き下げられます。具体的には、10月から来年3月分までが1%、平成26年4月から27年3月までが1%。27年4月から0.5%と段階的に引き下げられることになります。実際の支給額減は今年12月支給分からになります。
 そもそも「特例水準」とはどういう意味でしようか。本来、厚生年金や国民年金などの年金額は、物価の変動に応じて、毎年度見直しされています。この仕組みは「物価スライド」と呼ばれ、年金額の実質的な価値を維持するために設けられました。物価が上がれば、その分、年金額も上昇するよう制度設計されています。しかし、反対に物価が下がれば、年金額も下がることはあり知られていません。
 日本経済は、長らくデフレ不況が続いていました。2000年度から03年度の3年間、物価は下落しましたが、高齢者の生活に配慮して、特例的に年金額を据え置く措置が取られました。このために、現在の年金額は、本来の年金額よりも2.5%高い水準で支払われています。これが年金の「特例水準」です。
 「特例水準」の維持のためには、毎年1兆円の過払いが生じており、いままでの累計では約8兆円に上ります。これは、結果的に、将来世代への負担先送りになっています。そこで、昨年11月、民主党政権下で年金額を段階的に引き下げる改正年金法が成立しました。
 厚生労働省の試算では、今年12月支給分から、国民年金で(満額65.000円)で月額660円程度で、27年4月からは1600円程度の減額となります。
 厚生年金では、標準世帯(夫婦2人分約月額23万円)で、月額2300円程度、最終的には約6000円程度のマイナスになります。
 ただ今後、アベノミクス戦略の効果で景気が回復し、ゆるやかな物価上昇も予想されます。物価が上昇すれば年金額も物価スライドされますので、減額幅の圧縮は十分に考えられます。
 年金などの社会保障を守るために、消費税を引き上げるのに、なぜ年金が減ってしまうのかとのご不満の声も寄せられています。
消費税率の引き上げと年金の充実
 消費税の増税分は、基礎年金の国庫負担分を3分の1から2分の1に引き上げるためにも使われます。現在は、この費用は将来の国民の負担となる国債で賄っています。消費税の増税で、はじめて“100年安心の年金改革”が完結することになります。
 消費増税時には、年金生活者のために様々な対策を公明党が提案し、実現させました。
 例えば、8%への増税時には、「簡素な給付再措置」が実施され、市町村税の非課税者に1万円を支給し、老齢年金や児童扶養手当の受給者には5000円が加算されます。
 また、昨年11月には、社会保障と税の一体改革の中で、低所得の年金受給者に実質的な年金加算である「福祉的な給付」として、最大で月額5000円の「年金生活者支援給付金」を支給する法律も成立しています。