ふくまるとコシヒカリ 11月20日開れた決算特別委員会、農林水産部の部門別審査で、井手よしひろ県議は茨城県のオリジナル米「ふくまる」の販売促進について、執行部の対応を質しました。
 「ふくまる」は昨年12月、茨城県産米銘柄化協議会(事務局:JA全農いばらき米穀課)が全国に向けお披露目をした、コメのオリジナル品種です。コメの消費形態が家庭から中食・外食需要へと移行する中、時代にあった品種の育成が必要であるとして開発に取り組んできました。
 「ふくまる」の特徴は大粒で炊き増えがよく、冷めても粘りがあって食味の低下が少ないこと。また異常気象などの影響も受けにくく品質が安定していることも大きな特徴です。
 試食をした実感では、おにぎりなどにして食べると、コシヒカリなどよりも美味しいと思われます。
 今年度産からの一般栽培と販売をめざし、23年度から県内5JAの6ほ場で実証試験と炊飯適正試験が実施されました。
 24年度は、面積を拡大して試験栽培を行った結果、コシヒカリよりも平均100kg/10aほど多く収穫でき、等級もすべて1等を確保できました。
 また、コシヒカリと比べ、出穂期・成熟期が7〜10日早いことや、稈長が短いため耐倒伏性に優れること、特性に合わせた管理で2割程度増収が可能であること、千粒重は3g程度重く玄米外観品質が優れていることなどのすぐれた性質があることも明らかになりました。
 試食した米穀卸関係者からは「粒の大きさが大きな長所。皿に盛ったときにボリューム感が出る」など、高い評価が寄せられています。茨城県はコシヒカリの作付が8割を超えることから収穫作業の集中が課題となっており、生産者の作業分散に対応する点からも「ふくまる」の普及は期待されています。
 平成24年度、9ヘクタールの試験栽培を行い、本年度は約500ヘクタールの拡大。平成27年には栽培面積1000ヘクタールを目標に、生産と需要の拡大に取り組んでいます。
“ふくまる”の魅力を語り、戦略的な広報戦略を
 こうした大きな可能性を持つ期待の品種「ふくまる」なのですが、茨城県の打ち出し方は、非常に稚拙だったと言わざるを得ません。「ふくまる」を業務用米とのレッテルを貼って販売しようといているのです。業務用米と銘打たれたコメに対して、消費者は正当な評価を下してくれるでしょうか。たとえ業務用に使っていただくにしても、美味しさと価格のバランスの中で、結果的に業者はおコメを選ぶのであって、生産者がはじめからコシヒカリなどに比べると食味は落ちますよと宣言する必要は全くありません。
 井手県議は、「おにぎりにしたらコシヒカリよりうまい」、「噛めば噛むほど、美味しくなるコメ」といった「ふくまる」の特徴を積極的にPRすべきだと、決算委員会では主張しました。
 以下、フードアナリスト藤原浩氏と五ツ星お米マイスター西島豊造氏の「ふくまる」に対する重要な指摘を、転載してご紹介します。

茨城県議会農林水産委員会<参考人からの意見聴取>
フードアナリスト藤原浩氏の発言
藤原浩氏 実は、戦略的に、24年度から、業務用という形で茨城県が固有の銘柄として打ち出してきた、「ふくまる」というお米があるのですけれども、これ自体も、私自身の評価の中では、恐らく、山形県のつや姫に匹敵する、もしくはそれを超えるお米のおいしさがあるという評価でございます。
 できれば、生産としてのアウトプット、パンフレットに業務用という言葉を残すことはやはりマイナスではないかなと。
 今、食べるということにおいて、一般の消費者の方々に、生活の時間短縮のために便利な商材が非常に多くなっているのです。例えば、チンをして簡単に食べられる御飯というのは、かみ、かみ、ごっくんというそしゃくの回数が非常に少なくておいしく食べられるような設計になっているのです。ところが、食べるということの理解は、口の中で唾液と混ざってリキッドになったものしか未来というのはおいしいという感覚を得られないのです。
 そうすると、かみ、かみ、ごっくんというそしゃくの短い食べ方で七会のコシヒカリや「ふくまる」を食べたとして、一般消費者の方はおいしさのピークを迎える前に飲み込んでしまっているのです。恐らく、茨城県産のものの評価が低いのは、食べ方の本当のロジックを御存じない消費者の方が、日常のコンビニエンスストアや簡易なスーパーで買ったものと同じ食べ方をしてしまっているのです。時間を短縮して食べるものは、全てにおいて、柔らかくして、香りを強くして、唾液をたくさん出して、かみ、かみ、ごっくんとできる設計なのです。
 ところが、本来、自然の力をかりて命のリレーのできる正しい生産物というのは、かみ、かみ、かみ、かみ、かみ、かみ、ごっくんとすることで本当の味のピークを迎えるのですが、そうしたアウトプットは生産物や流通に一切乗っていないのです。
 七会のコシヒカリ、私どもは、家に帰りましたら、娘や家族に、とにかく、15回は最低でもかむ。30回かんだら最高の香りや味が膨らんでくるのだという食べ方を指導しているのです。私の周り、友達たちが、新潟の魚沼産のコシヒカリから七会のコシヒカリや北條米などにお米をかえていただいたという中で、たくさんかんだらおいしさが引き出された。今までお米のおいしさを知らないで飲み込んでいたという意見がたくさん出てくるのです。
 つまるところ、我々は、生産者の努力に対して、どう流通したか、どうデザインしたらブランド化なのかというようなことを多く指導されてきたという声を聞きましたけれども、ブランド化というのは、私にとっては人磨きだと思うのです。人間を磨かずしてブランド化というのはあり得ない。木を見て森を見ないということで、デザインを、例えば、価格をどうするかということは二次的なものです。

暗雲立ちこめる「ふくまる」:五ツ星お米マイスター西島豊造の「豊かに造ろう」
西島豊造氏(写真:一般財団法人ニッポンドットコム) 昨日、茨城県笠間市の生産者たちが来る前に、県職員が茨城県産米の資料などを持ってきてくれた。
その中に「ふくまる」と「一番星」の資料もあった。
<中略>
 茨城県も秋田県も、他の産地もそうなんだけど、なんで時間をかけて誕生させた品種を、最初から「業務用向け」って言い切ってしまうのだろうか。
 地元の主力品種よりも評価が下だから?
 最初から「業務用向け」って言われたら、生産者は作りたがらないだろうし、まず価格も上がって行かない。
 最初は一般家庭用に、必死になって販売してみて、コシヒカリを超えられるかどうかを確かめて、流行の食文化に合うかに挑戦してみて、新しい時代に合うか合わないかを見極めてからでも、遅くはないのではないだろうか。
 最初から業務用米と言ってしまったからには、既に価格は茨城県産コシヒカリの下となって当然。
 上に設定されたら、買う人は少ないであろう。
 自分にしたって、興味が半減してしまっているし・・・
 ブランド化の道も閉ざされているし。
 自分としては、最初から諦めモードなら、新品種のお披露目も必要ないとおもうのだが。
 なぜなら、そんな扱いの品種は、数年後には市場から消えてしまうかもしれない。
 それなら、予算の無駄使いをしてしまうだけだと、思うのだけれど。
 どうなんだろうかな?