131207hashi 公明党の防災・減災ニューディール政策の考え方を具現化した「強くしなやかな国民生活の実現を図るための防災・減災等に資する国土強靱化基本法案」が成立しました。この国土強靱化基本法は、東日本大震災を教訓とし、大規模災害に備えた強靱な国づくりを進めることが目的です。いつ起きてもおかしくない首都直下地震や南海トラフ地震は、東日本大震災や阪神淡路大震災をはるかに上回る被害が予想されています。南海トラフ、首都直下の大地震の防災対策を強化するため、二つの特別措置法が、11月22日に成立しました。防災減災対策は国土の全域にわたって行われる必要があります。その基本理念を定めたのが国土強靱化基本法なのです。
 国土強靱化というと、公共事業ばらまきの“土建国家”を想定する人もいますが、そうではありません。強靱な国とは、災害に強い国土を意味するだけではありません。従来の狭い意味での「防災」の範囲を超え、国土政策、産業政策等も含めた総合的な対応が求められているのです。その上で必要な公共事業にきちんと予算を配分していくということです。
 昨年12月に起きた笹子トンネルの天井板落下事故のように、老朽化などで破損の恐れがある道路や橋等が問題になっています。高度成長期に造られた社会インフラが、一斉に更新時期を迎えるなかで、限られた予算を使って、いかに維持・管理・更新をしていくか、それが課題となっています。
 それには、不具合が見つかれば、早めに補修する予防保全の視点が最も重要になります。政府は先月、国の老朽化対策の全体像を示す「インフラ長寿命化基本計画」を策定しました。
 今回の国土強靱化基本法でも、日本の弱点を探る、いわば「国土の健康診断」を進めることになっています。災害に対するインフラの課題等を洗い出す「脆弱性評価」を実施しそれをもとに政策の優先順位をつけます。まさに公明党が主張していた「国土総点検運動」です。
 その評価結果を踏まえ、首相を本部長とする推進本部は、社会資本整備重点計画等の国の各種計画の指針となる「国土強靱化基本計画」を来年5月をめどに策定する予定になっています。同基本計画のもととなる「国土強靱化政策大綱」も年内に決定される見込みです。
国土強靱化の大前提は東日本大震災からの復旧・復興
 強靱な国づくりの前提は、東日本大震災からの復旧・復興に他なりません。脆弱性評価の基準が、地震発生確率のような災害リスクだけを重視し、首都圏、南海トラフに近い太平洋沿岸地域ばかりに政策が施策の目が向けば、東北の被災地がなおだりにされかねません。被災地の地域力、経済力を、被災前の130%くらいまで高めることができれば、他地域で災害が起きた場合に、今度は東北地方が支える側になることができます。各地域が、お互いに支え合う強靱な国づくりを目指すべす必要があるのです。

国土強靱化に不可欠なソフト面の充実
 国土強靱化基本法には、公明党の主張を受けて、防災教育の推進といったソフト面の対策強化も盛り込まれています。インフラ整備等のハード面と同等のソフト面の充実がなければ、国民の安心・安全を確保することはできません。
 東日本大震災では、巨大な堤防では迫り来る津波をせることはできませんでした。先祖から伝えられた「津波てんでんこ」の精神で、地震が起きたがまず逃げる、こうしたソフト面の施策が国民の命を守る大きな視点であることが再確認されました。
 国土強靱化基本法の主役は国民です。国が一方的に国民を守るための計画ではありません。国民一人一人が、災害について学び、それぞれの場所で重層的に防災体制を強化していくことが、実は最も大事です。
 国家の強靱化の第一歩は、自分たちの住宅の強靱化から始まるといっても過言ではありません。防災・減災の基本は「自助」です。「自助」があって初めて、「共助」が可能になります。そして「自助」と「共助」が、「公助」を有効にします。
 国土強靱化基本法の成立をきっかけに、国、自治体、企業、そして国民の役割が明確になっていくことが大事です。
 特に「自助」を強化するためには、子供の頃から、防災に備える素養を身につけることが重要です。学校できちんと防災教育を進める必要があります。そのためには、大学の教員養成課程での教員の防災教育力の充実が不可欠になります。教育こそ国道強靱化を下支えすることになります。

南海トラフ地震対策特措法
 南海トラフ巨大地震に備え、特に甚大な津波被害が想定される太平洋沿岸等の市町村を、国が「特別地域」に指定。住民の集団移転や避難施設整備等に関して、事業の達成期間を定めた計画の作成を義務づける。
 特別地域では、住民が高台に移転する場合に農地を住民に転用しやすくしたり、学校や病院等の移転を国が財政支援する。また、市町村が津波避難タワー等を整備する際、事業費に対する国の補助割合も引き上げる。南海トラフ地震対策特措法は年内に施行される予定。

首都直下地震対策特措法
 首都直下地震が発生した際に、国会や裁判所等国の中枢機能を維持するための対策を促す。国は大きな被害が予想される「緊急対策区域」を指定し、業務継続等に関する計画を作る。一方、埼玉、千葉、東京、神奈川等各自治体が、木造住宅密集地域の不燃化対策や石油コンビナートの耐震化、帰宅困難者対策等に関する実施計画を策定する。
 また、国が東京・霞ヶ関や永田町を「基盤整備地区に」にして、東京都等はライフラインの耐震化や避難場所となる公園の整備、区域内の滞在者らの安全確保に向けた計画を策定する。首都直下地震対策特措法は年内に施行される予定。

インフラ長寿命化基本計画
 インフラの管理者である国と自治体が、2016年度までに全体的な維持管理体制や中長期的なコストの見直しを示した行動計画をつくる。2030年頃には、おもな施設をセンサーやロボット等で監視、点検する仕組みを作り、老朽化が原因で起こる事故ゼロにすることを目指す。