特定秘密保護法を語る

「特定秘密保護法案」の審議に思う
公明党衆議院議員・伊佐進一

伊佐進一 昨夜(12月6日)遅く、「特定秘密保護法」が参議院で可決され、法案は成立しました。これまで私のところにも、多くの方々から心配の声、懸念の声を頂いて参りました。「戦時中の治安維持法の復活じゃないか。」「日本は、いつか来た道に戻るのか」「公明党は、自民党に追従するだけの存在になったのか」新聞各紙を見比べてみても、本法案を連日、徹底的に批判する新聞と、中立に分析する新聞に、はっきりと分かれました。
 私が今回の法案審議の中で、感じたこと、考えたことを少し、書き記したいと思います。

1.法案はなぜ必要か
 我々公明党は、現在の日本にとって、この法案は必要だと判断して賛成しました。なぜ、必要なのか。
 日本は、「専守防衛」の国です。つまり、我が国の思いや考え方を、武力をもって実現することは、憲法第9条が禁じています。つまり、国益を実現していく手段としては、武力ではなく、話し合いで、「外交」で戦っていく必要があるのです。そしてその「外交」において、最も重要なのが「情報」なんです。
 中国が突如、「防空識別圏」を設定しました。こうした一方的な宣言によって、尖閣諸島を含めた南西方面の危険度が、一気に高まりました。マッハの速度で動いている航空機同士では、瞬間的な何らかのきっかけで、突然の「撃ち合い」が始まらないとも限りません。我々は、こうした武力衝突、あるいは戦争に発展してしまうという事態は、何としても避けなければいけません。「外交」で解決していかねばならないのです。その時に、最も重要なのが、「情報」なんです。中国の真意がどこにあるのか。日本が取りうるべき選択肢は、どれくらいあるのか。こうした「情報」で勝つことが、「外交」の勝利であり、ひいては地域の平和と安定を実現していくことができるのです。私は、そう信じています。
 では、今の政府の情報管理はどうなっているのかと言うと、非常に「ずさん」な状況です。これまで、「外交」の根幹である「情報」が、幾度となく漏れ続けて来ています。報道に出た事件もあるし、そうでない事例もあるでしょう。
 私が北京の大使館で勤務していたときも、秘密情報を扱う機会がありました。そもそも、今の政府の極秘情報、あるいは秘情報は、役人自身の判断で、「勝手に」決められるんです。そしてさらに、「勝手に」破棄できるんです。これが、政府の秘密情報管理の現状なんです。こうした「ずさん」な情報管理に、しっかりとルールをつくろう、これが今回の「特定情報保護法」の趣旨なんです。
2.「知る権利」は守られるのか
 一方で、基本的人権にかかわる、妥協できない大事な観点があります。それは、々駝韻痢崔里觚⇒」を徹底して守ることであり、またそのための「報道の自由」を守ることです。そしてまた、∪府が、国民に知られると都合の悪い情報について、「勝手に」特定秘密としないよう監視することです。さらには、たとえ「秘密」となったとしても、一定期間が過ぎた後には、その「秘密」を公開して、その時の政府の判断は正しかったのかどうか、後世の歴史の審判を受ける必要があります。
 我々公明党は、政府から最初の案を受け取った時に、この上記3つの観点から、法案について徹底的に議論しました。我々公明党の大事な仕事の一つは、巨大与党である自民党に対して、もし行き過ぎたところがあれば修正させ、バランスのとれた政治としていく。国民の声を反映させて、偏りすぎない、中道の政治を行っていくことだと思います。そこで同法案についても、「反対」の立場である団体や個人にも会議に出席して頂いて、合計13回にわたって議論を重ねてきました。その結果、我々は上記3点に対して、以下のような修正を行いました。

 崔里觚⇒」については、最初の政府案には、「報道の自由に十分配慮する」という条文しかありませんでした。「十分」とは、どれだけなのか。「配慮する」では、単なる努力規定、精神規定となってしまうのではないか。こうした懸念から、我々は「国民の知る権利」をまず、はっきりと明記させました。そして、具体的に、通常の取材活動、これまでメディアが行ってきた取材活動は、「罰せられない」という、具体的な条文を盛り込みました。
 各党との修正協議の結果、さらに条文を追加しました。一般の方々は「秘密情報」を得たからといって罰せられることはありません。あくまで「スパイ目的」、あるいは「国民の安全・安心を脅かす目的」をもって、しかも「金庫を破る」などの違法の行為でなければ、罰することが出来ない、との条文も入れ込んだのです。

∪府が恣意的に、都合の悪い情報を隠すのではないかという点については、政府案に対して、公明党は外部からのチェックを行う機能を盛り込ませました。「有識者会議」というものをつくり、政府が「秘密」指定する基準をつくる際、チェックする機関を設置することとなりました。さらに修正協議を重ね、「情報保全観察室」や「保全監視委員会」など、それぞれの機関が何重にも、政府の秘密指定をチェックできるように措置しました。
 国会に秘密情報が来なくなるのでは、というご懸念も頂きましたが、それは全く逆です。これまでは、政府の役人が「これは秘密ですので、開示できません」と言えば、国民の代表たる国会にも、情報提供をする必要がありませんでした。しかし、今回の法案では、国会の求めに応じて、特定秘密も提供「しなければならない」としたのです。政府に対するチェック機能として、たくさんの機関が設置されますが、ではどこが一番、強力なチェック機関かと言えば、それは間違いなく、「国権の最高機関」たる国会なんです。もちろん、秘密情報を受け取る際には、国会自らが情報を守る体制づくり、ルール作りをするのは、言うまでもありません。

1扮鵑鉾詭となるのではないかという懸念に対しては、以下のやり取りがありました。行政府の最高の意思決定機関は、総理や各大臣が参加する「閣議」です。ところが、「閣議」でのやり取りは、実は公開されていないどころか、その議事録すら作っていない状況です。これは、世界から見ても、あまりにいい加減です。同じ議院内閣制をとっているイギリスやドイツでは、「閣議」の内容は、30年後に情報公開されます。日本がこれまで、「閣議」の議事録すら作ってこなかったのは、明治維新の時代、山縣有朋・内務卿が、「議事録は、つくらなくて良し!」と決めてからであり、ずーっとそのまま変わっていないということです。
 これについて、公明党の山口代表は、参議院本会議で安倍首相に質問をしました。現在の「閣議」の状況を改善すべきだ、情報公開すべきだと詰め寄りました。結果、安倍首相からは、具体的に改正に向けて検討を進めるする、との答弁を引き出したのです。

 このように、政府案を作成する自公協議の時からすでに、公明党は自民党に対して、かなり激しく議論をぶつけてきました。今回、法案を担当した温和な先輩議員が、官邸入りしている自民党幹部を怒鳴りあげて、ここまでの修正を差し込んできました。公明党が自民党に「追従している」というご心配は、まったくありません。逆に、自民党から見れば、あまりにうるさく、「簡単でない」連立パトナーだと思います。

3.法案審議は「強引」だったのか
 さて、では「特定秘密保護法案」の審議は、強引で、拙速で、自公政権の「傲慢さ」の表れだったんでしょうか。それは、まったく違います。私が「国会対策委員会」の委員として、目の前で見てきた各党との審議の過程、舞台裏についてお伝えしたいと思います。
 民主党は、当初から法案に反対でした。自民党も公明党も、「反対であれば議論をしましょう」、「どこが反対で、どのように修正すべきか、対案をください」と、早くから民主党に投げかけてきました。ところが、待てど暮らせど、民主党の対案はでてきません。そのうち、みんなの党が対案を示し、修正協議が始まりました。政府案に修正を加え、結果、みんなの党も賛成に回りました。その後、維新の会が対案を示してきたので、早速、自公と維新の間で修正協議となりました。非常に実りある協議となり、維新の会の意見も入れて、法案は修正されました。維新の会も、「満額回答だ」と満足し、賛成に回りました。
 ここで、焦ったのが民主党です。みんなの党も維新の会も修正協議を行い、賛成となりました。民主党だけが置いていかれるとの不安からでしょうか。審議も終息を迎えつつある11月19日、突然、対案を出してきました。
 自民党と公明党は、「特定秘密保護法案」を衆議院で可決する目標として、21日を目指していました。各党と審議を重ねてきて、ようやく終わりが見えてきた時になって、突如、民主党が対案を出してきたのです。当初の目標からすれば、審議できる日数は1、2日であり、民主党の対案は遅きに失した感がありあました。しかしそれでも、我々はより丁寧な国会運営をすべきだとして、あえて採決を1週間近く延期したのです。結果、26日の採決となりました。その間、福島の地に舞台を移した地方公聴会での質疑も行い、また参考人質疑も2回、開催いたしました。
 結果として、衆議院において同法案は、45時間の審議を行いました。通常、重要な法案の審議時間の目安は、40時間と言われています。それを上回る審議を行ったのです。しかし、民主党は言いました。「われわれの修正案を、もっとしっかり議論すべきだ。与党は、多数の議席で、急いで押し切ろうとしている。」この論調に、同法案反対の新聞数社がのってきました。
 私が残念に思うのは、なぜ民主党は、対案をぎりぎりまで示してこなかったのかということです。みんなの党も、維新の会も、担当した国会議員は、真摯に法案に向き合って、早々に対案を示してくれました。民主党も他の党と同様に、対案をしめし、一緒に修正審議を行うことができれば、彼らにとっても良い結果を得られたでしょう。そして、こうした批判も、起こりようがなかったでしょう。なぜなら、実際の審議時間は、これまでの国会から見ても、十分であったと言えるわけですから。
 では、維新の会はどうだったのか。彼らは、結局、衆議院の採決を棄権し、退席しました。上記のとおり、維新の会とは、実りある協議の結果、修正案がまとまりました。そして、維新の会全議員の参加する会議において、修正案への賛成を決定したとのことでした。
 しかし、問題はこれからです。維新の会の上層部、年齢層の高い、いわゆる「東京維新の会」の方々が、急に反対を始めました。公式には、急に反対を表明した理由は、はっきりとは示されてはいません。与党に対する野党のプライドなんでしょうか。維新の会の内部で、法案に対する態度が、「大阪維新の会」と「東京維新の会」とで、真っ二つに割れてしまったんです。
 もしこのまま採決をするようなことになれば、維新が割れていることが、国民の目の前で明らかになってしまいます。カメラの前で、賛成と反対が、はっきりと見えてしまう。これはまずいと思ったのか、そんな姿をさらしてしまうくらいならと、結局、維新は本会議場から全員、退席し、採決を棄権してしまいました。修正案12項目のうち、8つもの修正が維新の意見によるものであり、そして法案の提出者であったにもかかわらずです。党内の事情を優先して、退席してしまったんです。
 結局、法案の内容についていえば、自民党、公明党だけでなく、維新の会もみんなの党も賛成です。また、民主党がぎりぎりになって提出してきた対案も、その内容は、政府案と大きな差がありません。つまり、実は法案の中身については、ほとんどの政党が賛成なんです。
 もちろん、なんでも反対の、一部政党もあります。でも、思い出して頂きたいのは、尖閣諸島での漁船衝突事故のビデオ動画が、海上保安庁から流出した事件がありました。その時、「何でも反対党」の方々は、何と言ったか。「政府の情報管理が甘い!」「厳罰に処すべきだ!」という論調で、徹底的に政府を批判してきたんです。この批判からすれば、今回の法案には当然、賛成すべきですが、今は「情報を自由にすべきだ」「刑罰が重すぎる」と反対に回っています。そういう、なんでも反対の政党を除けば、実は法案の内容に関しては、ほとんどすべての政党が賛成だったんです。

4.日本の「民主主義は破壊」されたのか
 日本の「民主主義の破壊だ!」とおっしゃる方々もおられます。「少数意見を踏みにじる暴挙だ!」、あるいは「強行採決だ!」との意見に対して、昨日(12月6日)の読売新聞には、非常に鋭い論説が掲載されています。
 民主主義における意思決定、法律制定は、まず政府が法案を提出するところから始まります。それを国会において議論をして、最後は可決、否決を多数決で決めるわけです。衆参両院の「過半数」の賛成で成立することは、日本国憲法第56条、59条に定められています。
 しかし一方、少数意見の尊重も、民主主義の条件です。絶対多数を得ている自公政権は、「過半数」を越えているので、本来なら政府案のまま、成立させることもできました。各党との修正協議に応じることなく、多数をもって政府案を成立させることもできました。ところが、丁寧な国会運営を図るために、あえてみんなの党、維新の会などの協議に応じて、野党の納得も得ながら、法案審議を進めることを、重視してきました。実際に、多くの修正が取り入れられ、ぎりぎりまで各党とも協議をかさねてきました。
 民主党のいう「民主主義の破壊」と言うのは、何を指しているのでしょうか。「少数意見を尊重する」だけでは不十分で、「少数意見の言うとおりにせよ」、と言うことなんでしょうか。
 非常に残念だったのは、一部野党が最後は、時間稼ぎ戦略をとったことです。つまり、審議途中のまま12月6日の会期が終われば、廃案にすることができます。そこで、ついには、民主党議員は国会審議に出てこなくなりました。民主党以外の各党が、何度呼びかけても出てこない。自分たちが提案者であった、中国の「防空識別圏」に抗議する国会決議にすら出てこない。挙句の果てに、安倍内閣を解散させるべきという、内閣不信任決議案を提出しました。
 なぜ内閣不信任を提出したかの理由について民主党の海江田代表は、「国会でしっかりと審議時間が確保されない」から、あるいは「強行採決」したから、というものでした。しかしこれは、実は「内閣」とは関係がありません。「国会運営上」の問題、与野党間の問題なんです。それを行政府である「内閣」のせいにすることに、違和感を覚えている野党議員も多くいました。
 結局、不信任決議案は否決されました。これまで、不信任決議は国会定数の5分の1、すなわち96名以上の支持があれば、「記名投票」となります。つまり、誰が賛成して、誰が反対したかがはっきりと分かるよう、名前を書いて投票するのです。ところが、この不信任決議案には、96名以上の支持者が集まりませんでした。結果、賛成者が起立するという、簡単な「起立採決」となりました。野党が内閣不信任決議案を提出しておいて、「記名投票」にすらならず、「起立採決」となったのは、憲政史上初めての事だと言われています。それくらい、野党から見ても違和感を持たざるを得ない、「内閣不信任」だったと思います。
 以上、法案の内容について長々と書き連ねましたが、私は今回のメディアの報道などを見ていて、思いが重なることがあります。それは、もう15年も前の「PKO法案」の審議であったり、また「通信傍受法」の審議でした。
 PKO法案の最大の争点は、実力組織である自衛隊を、日本が戦後初めて海外に送る点にありました。当時、「ついに、日本も軍隊を海外に向けた」とか、「戦時中のいつか来た道に戻る」とか、様々な批判がありました。公明党もPKO法案に賛成し、「平和の党」を放棄するのかと、少なからず批判をうけてきました。
 しかし、15年経ってどうでしょうか。自衛隊は、災害被災地や、紛争で荒廃した地域におもむいて、地域の平和と安定に貢献してきました。世界の多くの方々が、自衛隊の活躍に高い賞賛を送ってくれています。それまで、「日本はお金しか出さない。」「自分では一切、汗をかかない」と批判されてきました。このPKOをきっかけに、日本が目に見える形で、世界に貢献できるようになりました。信頼され、評価される国として、自衛隊の役割は大きかったと思います。
 ご批判も多々あると思います。そのご批判やご懸念をすべて受け止めて、その一人一人の声から政治をつくっていく、それが公明党の強みです。そしてまた、決断をするからには、徹底して現場に入って説明責任を果たしていく、これも公明党の強みであると思います。皆さんが心配される決断、皆さんにご負担をお願いしなければいけない政治決断であるなら、なおさらのことです。
 公明党の諸先輩方の政治に取り組む姿は、常に「権力という目に見えない魔性」に、国民の代表としていかに対峙していくかです。そしてその権力には、当然、メディアも含まれます。日本を不幸な戦争に導いていったのは、国家権力であったのと同時に、メディアであり、そのメディアによって作られた「空気」であったと思います。この思いを忘れずに、徹底して動き、語っていきたいと思います。
伊佐進一(いさ・しんいち)
衆議院議員大阪6区、1期。
公式ブログより(2013/12/7付け)より転載、見出しはブログ管理者の責任で編集させていただきました。