流出したビデオからキャプチャーした写真 特定秘密保護法審議の過程で、朝日新聞、毎日新聞など一部マスコミは、感情的な反対キャンペーンを続けました。その代表的な理由は、「特定秘密保護法によって国民の知る権利が脅かされ、戦前の軍国主義の歴史が繰り返される」ということでした。
 特定秘密保護法制定のきっかけとなったのは、民主党政権下で2010年に起こった尖閣諸島での、中国漁船と海上保安庁の巡視船との衝突映像流出事件でした。
 ここで、画像が流出した直後の朝日新聞、毎日新聞、読売新聞の社説を振り返ってみたいと思います。
 「国民の知る権利」を特定秘密保護法の問題では、ヒステリック叫んだ朝日、毎日両紙の社説には驚かされます。例えば、朝日新聞「外交や防衛、事件捜査など特定分野では、当面秘匿することがやむをえない情報がある。警視庁などの国際テロ関連の内部文書が流出したばかりだ。政府は漏洩(ろうえい)ルートを徹底解明し、再発防止のため情報管理の態勢を早急に立て直さなければいけない」。同じく毎日新聞「内部の職員が政権にダメージを与える目的で意図的に流出させたのだとしたら事態は深刻である。中国人船長を処分保留で釈放した事件処理と国会でのビデオ限定公開に対する不満を背景にした行為であるなら、それは国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた「倒閣運動」でもある。由々しき事態である。厳正な調査が必要だ」と、国の安全保障に関する重要な情報は守られるべきだと声高に主張しています。朝日新聞に至っては、「再発防止のため情報管理の態勢を早急に立て直さなければいけない」と、特定秘密保護法の整備まで言及しています。
 安部首相は、この流出ビデオは「特定秘密」に当てはまらないと断言しています。3年前の報道と特定秘密保護法の報道とのギャップを、朝日、毎日両紙はどのように説明するのでしょうか。合わせて、朝日新聞のいうところの「再発防止のため情報管理の態勢」とは、具体的にどの様なものをいうのでしょうか。こうした冷静な議論を行い、世論を啓発するのがマスコミの役割だと考えます。
 一方、読売新聞の社説。「政府内部から持ち出された疑いが濃厚で、極めて遺憾な事態である。だが、それ以上に残念なのは、こんな不正常な形で一般の目にさらされたことだ。政府または国会の判断で、もっと早く一般公開すべきだった」と、ビデオを公開することによって「国民の知る権利」を守ることを鮮明に訴えています。
 党首討論で安部首相は、ビデオ流出の当事者であった元海上保安官・一色正春氏の言葉を引用しました。一色氏は自らのfecebookで、次のように語っています。「自称ジャーナリストの方々が集まって特定秘密保護法案に反対しているらしい。この法律が施行されたら、政府に都合の悪い情報は闇から闇に葬られるらしい。(中略)一例だけあげると三年前のあの映像を、誰が何のために隠蔽したのか、それすら明らかにできてはいないではないか。自分たちの都合の良いときだけ知る権利を振りかざしている姿は滑稽である」と。衝突事故の際、海上保安庁はできるだけ早い機会にビデオを公開したいと考えていたようです。それを隠匿したのは当時の民主党政権中枢であったことは、多くの識者が指摘することです。
 どの情報が国家の安全保障にとって重要不可欠なもので秘密にするものか、国民の知る権利に応えて広く公開するものなのか、その物差しづくりが日本の喫緊の課題でした。その課題への回答が「特定秘密保護法」であったと思います。
 この法律が成立した今、この運用を国民の代表である国会がしっかりと監視してもらいたいものです。


尖閣ビデオ流出 冷徹、慎重に対処せよ
朝日新聞社説(2010/11/6) 
 政府の情報管理は、たががはずれているのではないか。尖閣諸島近海で中国漁船が海上保安庁の巡視船に衝突した場面を映したビデオ映像がインターネットの動画投稿サイトに流出した。
 映像は海保が撮影したものとみられる。現在、映像を保管しているのは石垣海上保安部と那覇地検だという。意図的かどうかは別に、出どころが捜査当局であることは間違いあるまい。
 流出したビデオを単なる捜査資料と考えるのは誤りだ。その取り扱いは、日中外交や内政の行方を左右しかねない高度に政治的な案件である。
 それが政府の意に反し、誰でも容易に視聴できる形でネットに流れたことには、驚くほかない。
 ビデオは先日、短く編集されたものが国会に提出され、一部の与野党議員にのみ公開されたが、未編集の部分を含めて一般公開を求める強い意見が、野党や国民の間にはある。
 仮に非公開の方針に批判的な捜査機関の何者かが流出させたのだとしたら、政府や国会の意思に反する行為であり、許されない。
 もとより政府が持つ情報は国民共有の財産であり、できる限り公開されるべきものである。政府が隠しておきたい情報もネットを通じて世界中に暴露されることが相次ぐ時代でもある。
 ただ、外交や防衛、事件捜査など特定分野では、当面秘匿することがやむをえない情報がある。警視庁などの国際テロ関連の内部文書が流出したばかりだ。政府は漏洩(ろうえい)ルートを徹底解明し、再発防止のため情報管理の態勢を早急に立て直さなければいけない。
 流出により、もはやビデオを非公開にしておく意味はないとして、全面公開を求める声が強まる気配もある。
 しかし、政府の意思としてビデオを公開することは、意に反する流出とはまったく異なる意味合いを帯びる。短絡的な判断は慎まなければならない。
 中国で「巡視船が漁船の進路を妨害した」と報じられていることが中国国民の反感を助長している面はあろう。とはいえ中国政府はそもそも領有権を主張する尖閣周辺で日本政府が警察権を行使すること自体を認めていない。映像を公開し、漁船が故意にぶつけてきた証拠をつきつけたとしても、中国政府が態度を変えることはあるまい。
 日中関係は、菅直人首相と温家宝(ウェンチアパオ)首相のハノイでの正式な首脳会談が中国側から直前にキャンセルされるなど、緊張をはらむ展開が続く。
 来週は横浜でAPEC(アジア太平洋経済協力会議)の首脳会議が開かれ、胡錦濤(フーチンタオ)国家主席の来日が予定されている。日中両政府とも、国内の世論をにらみながら、両国関係をどう管理していくかが問われている。
 ビデオの扱いは、外交上の得失を冷徹に吟味し、慎重に判断すべきだ。

尖閣ビデオ流出 統治能力の欠如を憂う
毎日新聞社説(2010/11/6)
 尖閣諸島沖での中国漁船衝突事件の模様を海上保安庁が撮影したビデオ映像の一部がインターネット上に流出した。同庁と検察当局が捜査資料として保管していた証拠の一部である。その漏えいを許したことは政府の危機管理のずさんさと情報管理能力の欠如を露呈するものである。
 捜査権限を持つ政府機関の重要情報の漏えいはつい先日も明らかになったばかりだ。テロ捜査などに関する警察の内部資料がネット上に流出した事件だ。横浜でのアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議を前にした度重なる失態は菅政権の統治能力すら疑わせる。早急に流出経路を解明し、責任の所在を明らかにしなければならない。
 海保は巡視船が衝突される前後から漁船に立ち入り検査するまでの模様をビデオに収めており、全体で数時間分あるという。ネット上に流出したのはその一部とみられ、約44分間の映像だった。巡視船2隻に中国漁船が衝突する場面が明確に映っており、生々しい衝突音も収録されている。
 政府が先日、国会に提出したビデオは約7分間に編集されたもので、視聴は予算委理事らに限定された。限定公開に対しては、全面公開を主張する自民党などから「国民に事実を知ってもらうことが大切だ」などの反対論が出た。しかし、政府は国際政治情勢への配慮などを理由に慎重な扱いを求め国会が要請を受け入れた経緯がある。
 それが、政府と国会の意図に反する形で一般公開と同じ結果になってしまったことに大きな不安を感じる。この政権の危機管理はどうなっているのか。
 海保によると、那覇市の第11管区海上保安本部や石垣海上保安部、那覇地検など検察当局のパソコンなどに映像が残っている可能性があり管理状況の調査を進めているという。
 もし内部の職員が政権にダメージを与える目的で意図的に流出させたのだとしたら事態は深刻である。中国人船長を処分保留で釈放した事件処理と国会でのビデオ限定公開に対する不満を背景にした行為であるなら、それは国家公務員が政権の方針と国会の判断に公然と異を唱えた「倒閣運動」でもある。由々しき事態である。厳正な調査が必要だ。
 中国側はビデオ流出について「日本側の行為の違法性を覆い隠すことはできない」との外務省報道官談話を発表した。ビデオ映像は中国の動画投稿サイトにも転載され、「中国の領海を日本が侵犯したことがはっきりした」などの反論が出ているという。このビデオ流出問題にどう対処するか。菅政権は新たな危機管理も問われている。

尖閣ビデオ流出 一般公開避けた政府の責任だ
読売新聞社説(2010/11/6) 
 尖閣諸島沖で起きた中国漁船衝突事件の当時の模様を撮影したビデオ映像が、インターネット上に流出した。
 政府内部から持ち出された疑いが濃厚で、極めて遺憾な事態である。
 だが、それ以上に残念なのは、こんな不正常な形で一般の目にさらされたことだ。政府または国会の判断で、もっと早く一般公開すべきだった。
 流出したのは、計6個の動画ファイルに分割された計44分余りの映像で、インターネット動画サイトに投稿された。中国国内の動画サイトでも、転載と当局による削除が繰り返されているという。
 海上保安庁と検察当局が保管するビデオ映像を、何者かが意図的に流出させた可能性が高い。先に一部国会議員に公開された映像は約7分に編集されたもので、今回の映像とは長さが異なる。
 警視庁の国際テロ捜査に関する内部資料とみられる文書が、ネット上に流出したばかりだ。これでは海外から「情報管理がずさんな国」とみられ、防衛やテロなどの情報収集に支障が出かねない。
 流出経路について、政府が徹底的に調査するのは当然である。再発防止に向け、重要情報の管理を厳格にしなければならない。
 流出した映像をみれば、中国漁船が巡視船に故意に船体をぶつけたのは一目瞭然(りょうぜん)である。
 もし、これが衝突事件直後に一般に公開されていれば、中国メディアが「海保の巡視船が漁船に追突した」などと事実を曲げて報道することはできなかったのではないか。これほど「反日」世論が高まることもなかったろう。
 中国人船長の逮捕以降、刑事事件の捜査資料として公開が難しくなった事情は理解できる。だが、船長の釈放で捜査が事実上終結した今となっては、公開を控える理由にはならない。
 中国を刺激したくないという無用な配慮から、一般への公開に後ろ向きだった政府・民主党は、今回の事態を招いた責任を重く受け止めるべきだ。
 中国外務省は、国会での限定公開の直後に「ビデオでは日本側の違法性を覆い隠せない」との談話を発表した。
 世界中に映像が流れた今、こんな強弁を続けていれば、国際的にも批判を浴びよう。
 中国は速やかに国内の対日強硬論を抑え、日中関係の修復に努めてもらいたい。来週の胡錦濤国家主席の来日に合わせて、日中首脳会談を実現させるべきだ。



12月9日午後6:00から安倍総理の記者会見が行われました。その後半での質疑応答の引用です。

阿比留 瑠比(産経新聞) 秘密の指定解除のルール化に関連し、伺います。国民が国政について正しい判断を下し、評価するには、政府からの正確で適切な情報の開示・提供が必要です。一方、最近では菅政権が中国漁船衝突事件の映像を恣意的に隠蔽し、国民から判断材料を奪い、さらに目隠しした事例がありました。総理はこれについてどう考え、どう対処していくつもりですか。

安倍首相 菅政権が隠したあの漁船のテープはもちろん、特定秘密には当たりません。問題は、あのときにも発生したわけですが、誰がその判断をしたのか、明らかではありません。菅総理なのか、仙谷官房長官なのか、福山官房副長官なのか、誰が本来公開すべき、国民の皆様にも公開し、世界に示すべき、日本の立場の正しさを示すテープを公開しなければならないのに、公開しなかった。間違った判断をしたのは誰か。このことも、皆さんわからないじゃありませんか。
 しかし、今度の法律によって、そもそもこれは特定秘密になりませんが、もし特定秘密としたのであれば、その責任の全て、所在は明らかになるわけですし、5年ごとにそれは、この指定が解除されるかどうかということについても、チェックされることになる。
 大切なことは、しっかりとルールを定めて、保全をしていく。保全はきっちりとしていくということではないかと思うわけです。そして当然、そうした特定秘密もそうですが、秘密文書は、歴史の判断を受けなければなりません。つまり国立公文書館にスムーズにそれが移管される。そのルールも、今度はちゃんとできあがるわけで、現在の状況よりも、遙かに私は改善されると思っております。
 ですから、この法律が施行されれば、菅政権で行った、誤った、政権に都合の良い情報の隠蔽は起こらないということは断言してもいいと思います。