3Dプリンターを視察する井手よしひろ県議  12月10日、井手よしひろ県議は県工業技術センターを訪れ、新たに導入した3Dプリンターによる実際の作業を視察しました。
 3Dプリンターは、3Dデータや数値を基に、主に樹脂や金属粉を熱で溶かして積み上げ、立体物を作る装置です。精密な部品から生産ラインの固定具、デザイン商品などを作ることができ、製造から医療、教育まで幅広く活用できます。金型工程を省くことから工期短縮やコスト低減につながるのが利点とされています。今年2月、アメリカのオバマ大統領が、新しい産業をつくり出す原動力として3Dプリンターを活用する政策を打ち出して、一躍有名になりました。
 茨城県内では、昨年7月にいち早く3Dプリンターを導入したのがプラスチック成型品生産メーカーのべテル(石岡市)。鈴木潤一副社長は、「金型を作るのに、約1カ月の期間と、数10万から数百万円の費用が掛かる。手軽に作り直したり試行錯誤したりできないのが難点。3Dプリンターを使えば、試作品の基礎モデルなら簡単にできる」「試作品の原型を数千〜数万円、時間も1〜2日と、従来の金型使用の10分の1で作れる。自社使用のほか、他社からの試作依頼も請け負っている」「本格的な量産用の精密部品は3Dプリンターでは作れず、金型が必要になる。試作の前段階の物を作るには良い。作れるものと作れないものを見極めて活用する」と答えています。
 今回、県工業技術センターで導入決定した3Dプリンターは、簡易タイプ(入門用)と中機能タイプの2機種。実際に視察したのは、簡易タイプのブルレー社の“UPーPlus2”。米国製で、今年8月発売されました。シンプルかつ軽量な3Dプリンターでありながら、高品質の出力が実現されています。ABS樹脂をFDM(熱溶解積層法)で成形します。プリント(造形)できる最大の大きさは、(縦・横)140mm×(高さ)130mm、積層のピッチは最小0.15mmです。
 また、中機能タイプの入札も完了しています。3Dプリンターの二大メーカーの一つである米国Stratasys(ストラタシス)社のObjet 30Proを483万円で購入しました。この機器は、積層造形法(インクジェット方式)でアクリル系樹脂を使います。積層ピッチは最小0.016mmと、入門機の10倍程度の精度があります。実際その造形モデルを観ましたが、驚くほどの精巧な出来映えでした。
3Dプリンターを活用できる人材と環境の整備が必要
Objet30 Pro 今後、3Dプリンターは、急速な技術革新による性能の向上と価格の低下が起こると思われます。そこで、県が県内製造業の資質の向上や競争力の強化に、この分野で貢献するためには、ハードウェアの紹介よりも、実は、その3Dプリターを動かすための技術を普及させることです。3Dプリンターは、パソコンの「3DーCAD」ソフトで作成された図面データーから、簡単に立体的な造形を作り出すことが出来ます。この3DーCADを学ぶ場を提供するなどして、人材の育成に、より力を入れる必要があります。
 また、工業高校など教育の場に早期に導入することで、就職率の向上やもの作りへの関心を高めることが出来ます。井手県議は、来年度全ての県立工業高校に3Dプリンターを導入するよう提案しています。
 また、比較的高額で、ここの企業が導入に踏み込めない、実際の立体物から三次元データーを読むとることが出来る「3Dスキャナー」を来年度導入するよう提案しました。当然のことながら、3DーCAD、3Dスキャナー、という入力デバイスがあって、はじめて3Dプリンターがその力を発揮します。その一連のシステムをしっかり茨城に根付かせたいと思います。
(写真上:ブルレー社の“UPーPlus2”を視察する井手よしひろ県議、写真下:県工業技術センターが購入したStratasys社のObjet 30Pro)