google street view 12月19日、井手よしひろ県議は桜川市、筑西市を訪れ地元市議らから新中核病院整備について、協議の経緯を聴き取りすると共に、建設が計画されている地域を現地視察しました。
 桜川市と筑西市では、各々筑西市民病院と県西総合病院(桜川市)という公立病院が、地域の医療を担っています。
しかし、両市を含む「筑西・下妻保健医療圏」は心筋梗塞など心疾患と脳血管疾患の死亡率が県内最悪。医師不足も深刻でした。市民の命を守るため、高度医療を担える中核病院の建設が地域の最重要課題でした。
 茨城県では、こうした現状から、2009年に「第1次地域医療再生計画」を策定し、新たな中核病院建設を盛り込みました。この第1次計画は国の医療再生基金から13億円の予算が割り当てられ、脳卒中や心筋梗塞などにも対応できる二次救急病院を総事業費45億円で建設する計画でした。一般病床は200床程度、常勤医師35〜40名程度とし、筑西市民病院は無床診療所、県西総合病院は120床程度のサテライト病院とすることになっていました。建設予定地は筑西市の竹島地区に一応決定しましたが、桜川市議会議が調査費予算を3回否決し、計画は頓挫しました。
 その後、2011年3月の東日本大震災で、筑西市民病院、県西総合病院は大きく被害を被りました。この事態を受け、県は第2次再生計画を立案。再生基金から25億円を見込み、総事業費は75億円をなりました。急性期の病院として三次医療機関を目指し、災害拠点病院としての機能も強化しました。病床数は300床、常勤医師50名以上に拡大されました。反面、既存の2病院は新たに新中核病院に統合されることになり、19床以下の診療所に改組されることが条件となりました。
 国の再生基金を活用するためには今年度中に具体的な建設計画を明確にする必要にあります。今年4月には筑西市長に新人の須藤茂氏が当選。10月には桜川市長に大塚秀喜氏が初当選しました。両氏とも、中核病院建設に公設民営を唱え、11月以降一挙に両市の協議が進みました。
 12月13日、筑西市と桜川市は、筑西市養蚕地区に病院を建設することを柱とする5項目の合意書に調印しました。
 5項目の基本合意項目は以下の通りです。
  1. 公立2病院(筑西市民病院・県西総合病院)による再編・統合
  2. 新病院は300床規模で地域で2次医療を完結する
  3. 経営形態は公設で民営的手法(地方独立行政法人、指定管理制度)を活用
  4. 再編・統合後の公立2病院の扱いは、「両病院とも19床以下の診療所」または「県西総合病院は病院として存続し、筑西市民病院は無床の診療所」ことのいずれかを建設促進協議会議において協議し合意に至る
  5. 建設場所は筑西市養蚕地区の筑西幹線道路沿線

建設予定地付近の地図
 12月16日に行われた医療再生基金からの交付金の活用期限延長を議論する国の有識者会議では、県からこの同意事項が説明されました。有識者会議の結論は来年早々にも出される見込みですが、延長が認められる方向です。
 この合意によって、新中核病院建設の協議が大きく前進したことは事実です。しかし、桜川市側には大きな課題が残っています。新中核病院が、国の特例交付金25億円を受けるには、病院数を再編前より減らすことが条件となっています。それにもかかわらず県西総合病院を残す案を併記する形となったのは、桜川市側が、再編統合で県西総合病院の規模が大幅に縮小されれば、「地域医療の衰退につながる」と強く主張したためです。桜川市の中田前市長は、在任当時、「県西総合病院を病院として存続させた場合、25億円の交付金を受け取るための枠組みは使えない」という説明を議会や関係者に説明していませんでした。この前提条件を無視して、中核病院の議論を進めてきた経緯があります。「県西総合病院を残せない」との結論に至った場合には、議会の与党基盤が弱い大塚新市長には大きな打撃となります。県西総合病院を診療所にするならば、新中核病院の計画自体を白紙にすることも厭わない、という市議会議員もいるほどです。
 両市にとって、この難局を突破するには、真に市民のための病院建設という原点を再確認することではないでしょうか。そのためにも、市民には正しい、詳細な情報を公開していくべきだと考えます。