東海第二原発、再稼働申請へ…地元は了承見通し
読売新聞(2014/2/4・13版2面)
読売新聞2月4日付け13版2面 日本原子力発電は3日、東海第二原子力発電所(茨城県東海村、110万キロ・ワット)の再稼働に向けた安全審査について、3月末までに原子力規制委員会に申請する方針を固めた。
 原電の保有する原発3基はすべて停止しており、再稼働で経営再建を目指す考えだ。
 東海村や水戸市など地元自治体は今後の調整を経て、申請を大筋で了承する見通し。原電と地元自治体は、地元の同意を再稼働の前提とする原子力安全協定の改定について、今後協議する覚書を交わす方針だ。
 原電は、敦賀原発(福井県)1号機が運転開始から40年を経過したほか、2号機も真下を走る断層が「活断層」と規制委に指摘され、再稼働が難しくなっている。
 再稼働の時期は明確に見通せないが、原電は東海第二の再稼働を目指す姿勢を明確にし、電気を購入する契約をしている東京、関西、中部、東北、北陸電力に、設備の維持費などの支払いを求める方針だ。

 2月4日付け読売新聞13版2面の記事は、正直驚きを通り越して、怒りさえ感ずる内容でした。
 地元茨城県の県議会議員にとっては、ここ数年で最悪の「大誤報」です。「全くのデマ」と言っても良いねつ造記事です。
 読売東京本社の経済部が書いた記事だそうですが、こんなデリケートな問題を軽々しく記事にしてもらいたくないと思います。
日立港から望んだ東海第2発電所 なぜ、この記事が間違いなのか、具体的に指摘します。
  • 東海村、水戸市、茨城県の首長が事実関係をいずれも否定しています。
  • 「東海村や水戸市など地元自治体は今後の調整を経て、申請を大筋で了承する見通し」とありますが、井手よしひろ県議が直接、東海村の山田修村長に電話で確認したところ、「読売新聞からのこの件についての取材は全く受けておらず、このような決定も全く行っていない。読売新聞には事実と異なるので抗議した」との回答を得ました。
  • 高橋靖水戸市長に公明党水戸市議を通して事実確認を行ったところ、「読売新聞に掲載記事について抗議した」との説明がありました。
  • 茨城県の橋本昌知事は4日午前開かれた定例記者会見で、朝日新聞記者の質問に答え「(再稼働の申請を行うという)連絡は原電からも地元自治体からも全くありません。そして、原電では、今、地元の市町村から出ている安全協定の見直し等に係る要請への対応を最優先課題で検討しているところであり、新規性基準への適合性確認申請については具体的な動きはないと聞いております。また、特に新聞記事の中で、『東海村や水戸市など地元自治体は、今後の調整を経て申請を大筋で了承する見通し』ということが書いてありましたが、これについては、全く地元のほうも寝耳に水、自分たちがそういったことを言ったことはないということを聞いております」と発言し、読売新聞の記事を全面否定しました。
  • そもそも再稼働の申請には、最低でも原子力安全協定を結ぶ茨城県、東海村、日立市、那珂市、ひたちなか市への事前の協議、説明は必要ですが、読売新聞の記事には茨城県の対応に関する記述が全くありません。
  • 地元自治体として水戸市が例示されていますが、現在の原子力安全協定では水戸市は対象となっていません。したがって、現行の枠組みで原電が再稼働申請を強行するならば、水戸市は協議の範囲外となります。

 以上指摘しましたが、この記事を書いた読売新聞の記者は、現場の自治体への取材を全く行わなかったと共に、原子力行政のイロハを全く知らない素人ということになります。
 原電がおかれている苦しい立場から、電力業者との契約を更新する3月末までに再稼働の可能性を担保しなければ、「原電は東海第二の再稼働を目指す姿勢を明確にし、電気を購入する契約をしている東京、関西、中部、東北、北陸電力に、設備の維持費などの支払いを求める」ことが難しくなるだろうという、という推論をもとにでっち上げた虚構の記事であると言えます。(または、事業者の希望的観測を鵜呑みにして書いた記事なのかもしれません)
 井手県議はこの記事の内容について、4日午前、読売新聞水戸支社長に電話で見解を求めましたが、不在と言うことで直接話しを聞くことは出来ませんでした。代わって対応していただいた代理の方は「東京本社の経済部の記者が執筆したもので、(支局としての)コメントは言えません。ただ、こうした事実は支局としては把握しておらず、地方面にも掲載していません」と、説明していただきました。
 すでに、この読売新聞の記事はヤフーニュースなどにも転載され、一人歩きしています。読売新聞としては、再度、当事者である原電ならびに関係自治体への取材をしっかり行い、訂正記事の掲載を強く求めるものです。


水戸市高橋市長・原電に「覚書」締結要求
 2月4日、東海第二原発について、東海村周辺の9つの市町村は運転再開を判断する時期までに安全協定の見直しを行うことなどを盛り込んだ「覚書」を交わすよう、原電に申し入れる方針を決めました。
 原電は、茨城県や東海村など合わせて6つの自治体と原発を運転再開する場合に事前協議を行うことなどを定めた「安全協定」を結んでいます。
 福島第一原発事故を受けて、水戸市など東海村周辺の9つの市町村の首長でつくる懇話会は、協定の範囲を9市町村すべてに拡大することなどを求めていますが、原電が実質的な回答を先送りする状態が続いています。
このため、水戸市で開かれた懇話会では協定見直しが実現するまでの当面の措置として、「覚書」を交わすことを原電に申し入れる方針を決めました。
 覚書には、国への安全審査の申請は、運転再開を前提としないことや、運転再開を判断する時期までに安全協定の見直しを行うことなどが盛り込まれていて、原電側がこの内容を受け入れる場合、懇話会は今月中旬にも覚書を交わすとしています。
 懇話会の座長を務める高橋市長は「協定見直しの議論は平行線が続いていた。私たちが知らぬ間に安全審査などの手続きが進むことがないようしたい」と話しました。
 この事実を見ても、読売新聞の記事がいかに的外れであるか、ご理解いただけると思います。