長野県佐久市の柳田市長のtwitter ここ数年、局地的な豪雨や大雪、竜巻など極端な気象の発生が増加しています。こうした異常気象による被害を最小限に抑えるために、行政の情報収集と発信の能力を高めていかなければなりません。
 政府は来年度以降、竜巻の発生情報収集にあたり、インターネット上の交流サイトであるSNSの活用を検討する方針です。
 災害時におけるSNSの活用について、印象的だったのが、長野県佐久市の柳田清二市長の取り組みです。
 2月の記録的な大雪に見舞われた際に、柳田市長は「ツイッター」を活用。住民から雪の状態を写した画像の提供を募り、住民一人一人の要望に丁寧に応対しました。情報を分析して関係部署に指示した内容についても、ツイッターで住民に報告しました。さらに、渋滞の一因となっていた路上駐車の車の移動を呼び掛けたり、自衛隊の出動時間も伝えた。この対応について、住民から高い評価と感謝の声が寄せられました。
 竜巻なども含め、異常気象が発生した際に現場の状況を最初に知るのは、そこに居合わせた人々に他なりません。異常な天候や災害の発生に対して、的確で機敏な対応をするためには、行政から住民への一方通行の情報だけではなく、住民からの発信を積極的に活用すれば、より効果的です。行政機関に、そうした発想の転換が是非必要です。
 災害などの緊急時、ネット上には多くの情報が飛び交いますが、公的機関の情報発信は住民の混乱と不安の解消に大いに役立ちます。SNSを活用した災害情報の収集と情報発信を大規模災害に備えて、積極的に取り組むべきです。
雪害対応にツイッター活用:柳田清二・佐久市長に聞く
毎日新聞(2014/3/1)
◇市民の苦情、やがて励ましに
 記録的な大雪で市民生活に大きな影響が出た長野県佐久市。柳田清二市長(44)はツイッターを活用して市民から情報を集め、被害状況の把握や災害対応の指示に役立てました。どのように使い、どんな課題が残ったのか、浜田和子記者が柳田市長に聞きました。
 1メートル近い雪の壁に囲まれた佐久市役所を訪ねると、柳田市長はスマートフォンを見ながら、ツイッターで寄せられる大雪の情報を確認していた。同市の積雪は例年、靴が隠れる程度という。柳田市長は「大雪の対応に慣れていない役所内は、本当に手探りの状況。ツイッターの情報は大切な判断材料になった」と振り返った。
 柳田市長がツイッターを始めたのは、2011年1月。地元のケーブルテレビのイベントがきっかけだった。「しばらくは使っていなかったが、最近は1日3、4回、市政に関する情報をツイートしていた。大雪情報もその流れで自然につぶやき始めた」という。
 雪害に関して、柳田市長が最初にツイートしたのは、2月15日午前6時40分。雪に覆われた市街地の写真を付けて「この雪、かくのか……。ちょっと現実逃避したい……。でも、行かなきゃ」。その後、昼夜を問わずツイッターを使って、精力的に情報収集と拡散を始めた。
 特筆すべきは、市民らに写真の添付を呼び掛けるなど、生の情報を求めるとともに、その情報に基づいて市役所内の関係各所に細かく指示したことだった。その指示もツイートし、情報提供した人への返信も丁寧にした。柳田市長の大雪に関するツイートはこれまでに300を超え、19日には1日で50回以上を市長一人でつぶやいた。
 当初、市民からは「自宅前の除雪はまだか」などの苦情のツイートが多数寄せられていた。柳田市長はすぐに「できるだけの努力をしています。ご理解とご協力を」と応じながら、除雪中の地域の情報を流した。すると「夜中なのに除雪しているところがあると思うと納得できる」との返信が。「除雪作業の優先順位を付けるとともに、市民に現状を伝えることが大事だと思った」と柳田市長は説明する。市長が情報を流すたびに、市民らからは「頑張ってください」といった感謝のツイートが寄せられるようになった。
 柳田市長の一連のツイートは、ネット上でも話題となった。「今回の大雪対応でネットを活用した好例」などと評判となり、800回近くリツイートされたつぶやきも。フォロワーは、この半月で3倍になった。佐久市は一方で昨年秋から、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の活用に着手。フェイスブック(FB)などで情報発信しているが、今のところ、市からの「お知らせ」が並んでいるだけだ。「市からリアクションはしてないんじゃないかな。SNSの特徴は『双方向』なのに」と残念がる。「今後はSNSを使った情報発信を庁内でシステム化することも検討し、強化していきたい」と抱負を語った。