●「うのしまヴィラ」として4月24日営業再開
 東日本大震災の津波で壊滅的な被害を受けた日立市東滑川町の「鵜の島温泉旅館」が、震災から3年、ゴールデンウィークを前に、「うのしまヴィラ」として営業を再開することになりました。4月19日、親しい友人や地元住民代表など関係者を集めてオープンセレモニーが開かれました。館主の原田実能さんは、「多くの人の支援と励ましがあったからここまで来られた。何度も足を運んでもらえる旅館にしていきたい」と決意を語りました。
 鵜の島温泉は、原田さんの妻・女将の広美さんの祖父が1959年に創業。豊かな温泉に恵まれ、目の前に広がる太田尻海岸の眺望が人気で、地域の住民や海水浴客、子ども会の合宿などで賑わっていました。
 そんなな順風満帆だった鵜の島温泉は、3・11の津波の直撃を受けました。三棟あった建物のうち木造の二棟が全壊。玄関・厨房・帳場・大広間・お食事処・岩盤浴・大浴場などが無くなり、鉄筋の建物一棟の客間のみが残りました。
 「終わったな」と感じたと原田さんは当時を振り返ります。廃業も覚悟しましたが、長男の「将来は小さな旅館をやりたい」とのことばに、やっと再開の決意が固まりました。
 しかし、莫大な再開のための資金のあてはつきませんでした。そんな中、国の震災復興資金「グループ補助金」制度が茨城でも認められました。原田さんは、市内の旅館業組合の役員として、業界全体の復旧と復興のため心血を注ぎました。多くの旅館のグループ補助金が認められましたが、鵜の島温泉は被害が大き過ぎ、年度内の再開が見込めなかったため申請さえ行えませんでした。(当初、グループ補助金は単年度内の事業完了が申請の要件でした)
 2回目のグループ補助金申請は、日立市内の水産業者80社と共同で交付を申請しましたが、「復興計画が不十分」と認められませんでした。
 日々の生活資金や再建のための資金繰り苦労する中、原田さんはリボーンに向けて、施設の新しい魅力を出すために野菜ソムリエやバーベキュー上級インストラクターの資格なども取得しました。まさに臥薪嘗胆、雌伏の時でした。
 3回目のグループ補助金申請で、復興計画が認められ、やっと再建の歩みが具体化しました。
 オープニングセレモニーには、地域の関係者や知人など約50人が参加しました。施設のコンセプト「お帰りなさい。海辺のセカンドハウスへ」が披露され、参加者全員で営業再開を祝福しました。
 「うのしまヴィラ」として生まれ変わった施設は、「震災で強く感じた人とのつながりを大切にしたい」との原田さんの思いから、宿泊棟(8室)のほかに、多目的集会棟「ユズリハ」、カフェ・ダイニング「海音(シーネ)」が新たに加わりました。
 ユズリハではコンサートやギャラリー、ワークショップなど、地域に開放されます。シーネでは、地元の野菜や水産物・畜産物を使用して、食事や喫茶だけでの利用も大歓迎とのことです。
参考:うのしまヴィラのHP

被災した建物の撤去が完了した鵜の島温泉(2011年12月22日)
被災した建物の撤去が完了した鵜の島温泉(2011年12月)

旅のカフェの会場となった鵜の島温泉(2013年6月)
旅のカフェの会場となった鵜の島温泉(2013年6月)

再建工事が始まった鵜の島温泉(2023年12月)
再建工事が始まった鵜の島温泉(2023年12月)

再オープンした“うのしまヴィラ”
再オープンした“うのしまヴィラ”(2014年4月19日)