再稼働には多くの困難、依存度低下へ廃炉ためらうな
 運転開始から長期間が過ぎた原発の存廃をどうするか。老朽化原発を抱える電力事業者は今、一つの大きな判断を迫られています。
 稼働期間が40年に迫る原発を抱える関西、中国、四国、九州の4電力会社の社長は4月30日までに、決算発表の会見で、これらの原発について、廃炉を検討する考えを表明しました。背景には、老朽化原発を再稼働する敷居の高さがあります。
 公明党などの推進で成立、施行された改正原子炉等規制法では、原発の稼働期間を原則40年と定めています。40年の運転制限を超える場合、例外的に最大20年間の延長は可能されていますが、老朽化原発の再稼働が電力事業者に有益な結果をもたらすとは考えにくいのが現実です。
 再稼働するには、東京電力福島第1原発事故を受けて策定された新しい規制基準を満たさなければなりません。巨額の設備投資が必要となり、そもそも採算が取れるのかどうか疑問となります。
 仮に再稼働する場合、原子炉の劣化状況などを調べるための特別点検を行い、その結果を来年7月までの間に原子力規制委員会に報告する必要があります。そのため、今年の秋にも、再稼働か廃炉かの判断を下すことを表明する電力会社がでてきました。
 東京電力福島第1原発の事故から3年以上がたった今なお、住民の立ち入りが制限されたり、帰還のメドすら立っていない地域もあります。政府は新しい規制基準に適合したとしても、原発の再稼働を進める場合、地元の自治体や住民の理解を得るとしています。
 原発に絶対の安全はなく、規制基準が厳しくなってもリスク(危険性)が皆無になるわけでもありません。3年前に事故が発生した原発は、増え続ける原発汚染水に悩まされ、作業上のトラブルも絶えません。
 原発のある全国の自治体は、万が一の事故に備えて避難計画を立てています。高齢者や障害者など災害弱者も含めた住民全員が、円滑に移動できるようにするための計画です。その計画の実効性が担保されない限り、住民の理解は容易に得られません。再稼働の適否を判断するうえで、絶対に忘れてはならない要素です。

東海第2原発廃炉には“国の決断”が不可欠
 また、原子力発電専業の日本原電も、その重い決断を迫られています。
 昨年12月、原子力規制委員会が日本原電の敦賀原子力発電所2号機直下の破砕帯(断層)について「活断層の可能性が高い」との見解を示したことで、敦賀原発の再稼動が極めて難しくなりました。日本原電側が「活断層ではない」との明確な証拠を示さない限り、2号機は国内で初めて安全面を理由に廃炉になる可能性が高くなっています。
 保有する原発3基のうち敦賀1号機と2号機が廃炉になれば、新設計画がある敦賀3号機、4号機の建設も絶望的です。もし、東日本大震災による被害で停止している東海第2発電所が再稼働できなければ、実質的に動かせる原発がゼロになってしまいます。その東海第2原発は、稼働後36年目を迎えています。
日本原電の運営する3つの原発
 経済産業省は、日本原電が平成25年度中に全3基を廃炉にした場合、資産の目減りや廃炉費用で2559億円の損失が発生、933億円の債務超過に転落すると試算しています。そうなれば金融機関から新たな借り入れができなくなり、経営は破綻します。
 日本原電が破綻すれば、債務保証している電力各社は債務の肩代りを求められることになります。電力各社の経営が打撃を受けるのは必至で、原電破綻のドミノ現象が起こる懸念があります。
 単に経済的側面から見れば、東海第2原発も廃炉という選択が現実的です。しかし、日本原電がおかれた特別な立場が、結論への道を複雑にしています。
 われわれ日本人は、原子力依存度を低下させるエネルギー社会構築の必要性を原発事故から学んだはずです。国民の多くは、その実現を求めています。老朽化原発の廃炉促進、特に東海第2原発の廃炉は、事業者任せではなく“国の決断”がどうしても必要です。

「廃炉検討」言及相次ぐ 老朽化原発、負担見極め 電力4社
朝日新聞(2014/5/1)
 運転を始めて40年前後経過した原発について、関西、中国、四国、九州の4電力社長が30日までに、廃炉にするかどうかを検討する考えを表明した。東京電力福島第一原発事故で規制基準が厳しくなり、老朽原発を維持するには巨額の設備投資が必要だからだ。一方で数十年かかる廃炉のコスト負担は重く、各社は難しい選択を迫られている。
 「今年の秋ごろまでに判断したい」。関西電力の八木誠社長は30日、2014年3月期決算の記者会見でそう述べ、運転開始から40年を超える福井県の美浜原発1、2号機の存廃を検討する考えを明らかにした。
 来年10月に稼働から40年を迎える佐賀県の玄海1号機をもつ九州電力の瓜生道明社長も同日、廃炉にするかどうかを「秋口までに判断したい」と明言。「投資額と負担との関係を勘案する」とし、運転を続けるための安全対策費や再稼働した場合に軽くなる燃料費負担などを見極める考えだ。
 同じく運転開始から40年の島根県の島根1号機を抱える中国電力と、37年の愛媛県の伊方1号機を抱える四国電力の両社長も決算発表の会見で、廃炉にするかどうかの検討を始める考えを示した。
 背景には、福島第一原発事故を受け、原発を動かし続ける基準が厳しくなったことがある。
 昨年7月に施行された改正原子炉等規制法では、運転年限のなかった原発の稼働期間が原則40年になった。電力会社が希望すれば、40年を超えて例外的に1回に限り最長20年間延長できるが、原子炉や建物の劣化を細かく調べる特別点検をクリアし、新規制基準を満たす必要がある。
 16年7月時点で40年を超えている原発の運転を延長したい場合、来年7月までに原子力規制委員会に申請しなければならない。こうした原発は7基あり、各社は延長を申請するかどうかの判断を迫られている。
■料金上乗せ、高い壁
 廃炉を決めても、待ち受けるのはいばらの道だ。
 経済産業省によると、廃炉費用は1基あたり約500億円(平均)かかる。廃炉作業には25〜30年かかるとされる。発電費用と同じように、電気料金に上乗せすることもできるが、一般家庭に負担増を求める料金値上げのハードルは高い。
 電力各社は原発事故が起きるまで、約60年間動かすことを想定していた。長期間、安定して発電できることが、原発を「経済的な電源」と位置づけてきた根拠だった。動かして40年前後で廃炉にすれば、設備投資などの経営計画は大きく変わり、原発は「低コスト」とも言えなくなる。
 廃炉には、「放射性廃棄物」をどう扱うかも大きな課題だ。放射能が強い原子炉内の設備や制御棒などは、地下50〜100メートルに埋めて捨てることになっているが、処分場のメドはない。搬出先が見つからないうちは作業が滞る可能性がある。
 すでに決まった福島第一原発の廃炉には1日約5千人がかかわり、少なくとも40年間を見込む。地元には福島第二原発の廃炉を求める声もあるが、東電の広瀬直己社長は30日の会見で「県民の意向や国のエネルギー政策を踏まえて判断する」と明言を避けた。
■老朽化が進む原発
原発名(電力会社)運転年数
美浜1号機(関西)44年
美浜2号機(関西)42年
美浜3号機(関西)38年
大飯1号機(関西)35年
大飯2号機(関西)35年
高浜1号機(関西)40年
高浜2号機(関西)39年
島根1号機(中国)40年
伊方1号機(四国)37年
玄海1号機(九州)39年
東海第二(日本原電)36年
敦賀1号機(日本原電)44年
福島第一5号機(東電)36年(廃炉)
福島第一6号機(東電)35年(廃炉)
福島第二1号機(東電)32年(廃炉?)
福島第二2号機(東電)30年(廃炉?)
福島第二3号機(東電)29年(廃炉?)
福島第二4号機(東電)27年(廃炉?)
※運転年数は2014年から運転開始年を引いたもの