JAなめがたで井手よしひろ県議
消費者の目線で甘藷の生産・販売を見直し、生産量は3.6倍に
 5月12日、井手よしひろ県議ら茨城県議会農林水産委員会のメンバーは、JAなめがたを訪問し、甘藷(サツマイモ)の生産・販売拡大の取組みについて現地調査を行いました。
 JAなめがたでは、2003年、静岡県のスーパーと連携し、スーパー店内での焼き芋販売をスタートさせました。この取り組みなどこでも買える、手軽でお値打ちな焼き芋として大ヒットとなりました。
 JAなめがたの平成元年のサツマイモの販売額は5億9650万円ほどでしたが、この焼き芋販売が功を奏し、平成25年度には21億7960万円と、3.65倍に拡大しました。
 農産物を単に作って市場や大手スーパーに出荷するというだけでなく、その売り方や販売先、消費者の好みまで戦略的に検討し、具体的な政策展開を行った好事例です。いわゆる農協単位での農業の6次化の成功事例だと思います。

2003年、スーパの店内焼き芋販売をスタート
2003年店内焼き芋販売をスタート 2003年、全国的なさつまいも需要の低迷に対し、JAなめがたは量販店と連携した「店舗内焼き芋実演販売」の取り組みをスタートさせました。当時、引き売りの比較的高価な焼き芋しか手に入らなかった消費者にとって、スーパー店舗内でいつでも低価格で買える焼きたての焼き芋は、非常に魅力的で、売れ行きは好調。焼
き芋は幅広い層の消費者から支持され、JAなめがた甘藷部会はこの焼き芋販売にさつまいも需要回復の大きな期待を託しました。
 しかし、焼き芋販売が順調になってくると様々な問題が浮上してきました。芋によって美味しく焼ける芋とそうでない芋があり、焼き芋を焼くことに不慣れなスーパーのパートさん等にはうまく焼けないことが多くなってきました。
 こうした事態にJAなめがたは、県の普及センターと農業研究所に原因究明と対策を求め、2005年からこれらの機関と連携して「焼き芋を核としたさつまいも販売戦略」確立に向けた活動を開始しました。
消費者のために新たな品種を生産開始
 その分析の結果、品種、時期等によって芋の特性が異なり、焼き時間や食味がばらつくことが判明しました。
 例えば、「紅こがね(一般にはベニアズマ)」という品種は、掘り取り直後に焼き芋にしようとすると、いつまで焼いても芋の触感が硬いため、焼き上がりがわかりづらく、食べるとホクホクするが甘味が少ないうえ冷めると非常に硬くなってしまいます。
 一方、「紅まさり(ベニマサリ)」という品種は、掘り取り直後でも焼き上がると芋の触感が柔らかくなるため誰にでも簡単に上手に焼くことができ、食べると適度にしっとりとして甘味があり、冷めても柔らかいので美味しく食べることができます。
 また、長期間貯蔵した後は、「紅こがね」は糖化が進み、粘質で甘さが増し、焼き上がりも触感で容易に判断できるようになるため、年明け以降は焼き芋に向くようになります。
 しかし、「紅まさり」は長期貯蔵すると肉質が粘質になりすぎて食味が低下する等、焼き芋には向かなくなってしまうことなどが解りました。
 これらの結果から、焼き芋が上手に焼けなかった原因の一つは、焼き芋に「紅こがね」が通年、使用されていたためと考えられました。
 こうした分析の結果、年内の焼き芋には出来る限り「紅まさり」で対応することで、安定して焼き芋を焼くことが可能となり、焼き芋販売は軌道に乗ることとなりました。
 これをJAなめがたでは、「リレー出荷体制」と呼んでいます。まず、8月からは「紅優甘(品種名:べにはるか)」を出荷します。10月になると「紅まさり(品種名:べにまさり)」を投入。年が明けると今まで代表選手だった「紅こがね(品種名:べ二アズマ)」が登場します。さらに、4月を過ぎると低温貯蔵した「熟成・紅こがね」の出番となります。最も食味の良くなる時期を考慮した品種リレー出荷により、年間を通して食味の安定した焼きいもを消費者することができるようになりました。
 さらに、デンプン含量により食味が左右されやすい「品種名:べ二アズマ」については、ほ場ごとに出荷計画を立て、全国初となる「生いもデンプン含量に応じた出荷」体制を構築しました。糖度管理を徹底し、電子地図上にそのデータがマッピングされ、出荷のタイミンが図られます。

6次産業化のモデルケースに、平成22年度普及活動全国コンクールで農林大臣賞受賞 
 その他、常に消費者を見据えた生産体制、販売体制に見直しを行いました。
 スーパー等の「焼きいも用には小イモ(300g程度)」のニーズが高いために、出荷規格を見直すとともに、小イモ中心の生産を拡大しました。素晴らしい食味カンショづくりに対する想いをスーパー等へ直接PR・産地のこだわりや科学的データに基づく味を追求した取り組みを1冊の本「焼き芋の話」にまとめ、商談等に活用するとともに、直接、市場関係者や量販店のバイヤー等にプレゼンテーションを実施しました。食品関連企業と連携した消費者PR・取引先の企業との共同企画により、東京スカイツリーに隣接する東京ソラマチ屋上に農園を設置し、オーナー制による苗植会や収穫祭を通して消費者との交流を強化しています。
 こうした努力は、全国的にも注目浴び、「平成22年度普及活動全国コンクール」(全国農業改良普及支援協会主催)で、最高位の農林水産大臣賞に輝きました。