市町村の接種勧奨と任意接種の継続が必要
140524tokei 今年(平成26年)10月より、成人用肺炎球菌ワクチンの定期化がスタートします。このワクチンの定期接種化によって、高齢者の肺炎による罹患率、入院率が減少することで健康寿命の延伸につながります。また、医療費削減効果が高いため、自治体の保健医療費削減につながることが期待されています。
 しかし、今回決まった定期接種の手法に関しては、大きな問題があります。
 それは接種年齢の問題です。平成26年度〜平成30年度の接種対象者は5歳刻みで65歳、70歳、75歳、80歳、85歳、90歳、95歳、100歳となる方を対象に接種を行います。(平成26年度のみ、101歳以上も対象とします)
 平成31年度以降の対象は65歳の方のみ接種します。
 つまり、公費助成による成人用肺炎球菌ワクチン接種は、生涯に1回のチャンスしかないということになります。これは、現状市町村が単独で助成している、例えば「70歳以上の高齢者」などという基準より、非常に厳しくなるわけです。
 そこで課題になるのが、市町村のいかに接種勧奨を進めるかということと、任意の助成を継続するという2点です。
 インフルエンザワクチンは年間接種率約50%と比較的高率ですが、成人用肺炎球菌ワクチンは約5〜7%程度で、接種率が非常に低いのが現状です。全く定着していないと言っても過言ではありません。接種率向上には対象者への個別通知だけではなく、予診票や接種券を個別通知に同封することで、住民に当事者意識を持って頂き、接種の必要性を理解してもらう必要があります。
 県内の市町村の状況を個別に聴き取り調査してみると、個別通知案内に予診票を同封した自治体での年間接種率は約30%、個別案内(ただの案内のみ)は10%程度、未実施では5%程度と明らかに差が出てきています。
 例えば、ひたちなか市が個別通知+予診票、筑西市が個別通知+接種券同封を行っており、接種率が30%以上と比較的高くなっています。
 また、先に指摘しましたが定期対象者は5歳刻みのために、76歳や86歳の接種高年齢層が最大4〜5年間、定期接種の順番年を待つことになります。これでは、肺炎に罹患し重症化するリスクが高まってしまいます。今までの任意助成を継続する必要があると強く主張します。
成人用肺炎球菌ワクチンとは

 日本人の死因第3位は「肺炎」です。しかも、肺炎により亡くなる方の95%以上は65歳以上の高齢者です。
 肺炎は細菌やウイルスなどが、からだに入り込んで起こる肺の炎症です。症状としては、発熱、咳や痰、息苦しさや胸の痛みなどがあげられます。肺炎の原因となる細菌やウイルスは人のからだや日常生活の場に存在しています。からだの抵抗力(免疫力)が弱まったときなどに感染を起こしやすく、普段、元気に暮らしている方でも、持病の悪化や、体調不良などをきっかけに、感染する可能性のある病気です。
 日常でかかる肺炎の原因菌で最も多いのは「肺炎球菌」です。
 肺炎予防のためにできることのひとつに、「予防接種」があります。肺炎球菌ワクチンは、肺炎球菌による肺炎などの感染症を予防し、重症化を防ぎます。65歳以上の方や慢性の持病をお持ちの方などは、肺炎球菌ワクチンの接種が推奨されています。接種は、1年を通して、いつでも可能です。一度接種すると、ある程度長期間にわたって効果が継続します。5年以内に再接種を行うと、注射部位の痛みなどが強く出ることがあります。再接種には5年以上の間隔をあけて行う必要があります。