国土強靱化ポスター 大規模な自然災害に備えた“国土の健康診断”が動きだしています。4月14日、内閣官房は国や地方自治体による防災対策の現状や課題を洗い出す「脆弱性評価」の結果を公表しました。公明党提唱の防災・減災ニューディール政策を具体化する「防災・減災等に資する国土強靱化基本法」を踏まえ、国土強靱化推進本部で決定した指針に基づいて実施されたものです。
「最悪の事態」回避へ関連施策をチェック
 今回の脆弱性評価では「起きてはならない最悪の事態」などを想定し、国土強靱化に関する施策を分野ごとに評価しています。
 具体的な手順としては、まず、各府省庁と内閣官房が連携して、「最悪の事態」を回避するための施策を特定し、その達成度や進捗を表す指標を設定します。指標は、各府省庁で使用している既存のものを活用し、適当なものがない場合は新たに設けました。
 次に、特定した各施策が目標に達した状態を前提に、「最悪の事態」の回避が可能かどうか、回避に向け、何が課題で今後どのような施策を導入すべきかといった点などを分析しました。こうした分析を基に、「最悪の事態」を回避するための施策群(プログラム)ごとに整理し、その達成度や進捗を踏まえながら、現状の脆弱性を評価しました。
 内閣官房国土強靱化推進室では、今回の評価結果について、(1)施策の重点化を図りつつ、ハード整備とソフト対策の適切な組み合わせ(2)行政、金融、情報通信、交通・物流などの分野で代替性・冗長性などの確保(3)地方公共団体・民間などとの連携――の必要性を指摘しています。
 指標を設けたことにより、各府省庁が実施している施策全体をチェックし、対策の不十分な点を特定するだけでなく、優先順位の高い順から重点的に対策を進めることが可能になりました。
耐震化率/医療施設などに遅れ
津波対策/ハード・ソフト両面で実施する必要性
物資供給/海上輸送拠点を強化

 「起きてはならない最悪の事態」を回避するため、現在取り組んでいる施策に対する一部を「脆弱性評価」結果から要約して紹介します。
  • 不特定多数が集まる施設の倒壊・火災
    公共建築物の耐震化率は約8割ですが、耐震診断・改修の経済的負担が大きいことなどから、目標達成に向け、きめ細かな対策が必要。また、つり天井など非構造部材の耐震対策を推進する必要があります。
    官庁施設(耐震化率86%)、学校施設(88・9%)、公立社会教育施設(69・5%)、公立社会体育施設(72・6%)、医療施設(73%)、社会福祉施設(84・3%)は避難所などにも利用されることがあるため、さらに耐震化する必要がある。
    全ての耐震化を即座に行うことは困難であることから、装備資機材の充実や各種訓練などで災害対応能力を向上させる必要がある。
  • 広域にわたる大規模津波などによる多数の死者発生
    津波防災地域づくり、全国瞬時警報システム(Jアラート)の自動起動機の整備などによる住民への適切な災害情報の提供などが進められているが、地方自治体の財政状況などで、一部で計画的に進捗していないといった課題がある。
    大規模地震の想定地域などにおける海岸堤防などの整備・耐震化率は、約3割にとどまる。完了に向けて計画的かつ着実に耐震化などを進める必要がある。関係機関が連携して、ハード対策の着実な推進と、警戒避難体制整備などのソフト対策を組み合わせた対策が必要。
  • 被災地での食料・飲料水など生命に関わる物資供給の長期停止
    大規模地震が特に懸念される地域で、港湾による緊急物資の供給可能人口はカバー率約6割。陸上輸送の寸断に備えた海上輸送拠点の耐震化を進める必要がある。
    水道施設の耐震化率は34%であり、老朽化対策と合わせ耐震化を着実に推進するとともに、地下水や雨水、再生水など多様な水源利用の検討を進める必要がある。
    各家庭、避難所などにおける食料など備蓄量の確保を促進する必要がある。例えば、学校施設の多くが避難所に指定されているが、備蓄機能などの防災機能が不十分だ。
参考:大規模自然災害等に対する脆弱性の評価の結果(平成26年4月)