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集団的自衛権の行使容認の範囲が不明確で拡大解釈の余地があることが露わに
 5月28日、集団的自衛権をテーマに、予算委員会で集中審議が行われました。公明党からは、遠山清彦衆議院議員が登壇し、安倍首相と直接質疑を交わしました。
140528toyama 遠山議員が指摘したのは、安倍首相が、集団的自衛権行使が必要な事例として、日本人の輸送に当たる米国艦船の防護だけでなく、日本人が乗っていないケースにも触れた点です。集団的自衛権行使が認められる事例ではないとの遠山議員の主張に対し、首相は、日本人が乗船しているかどうかを基準にすることは「現実的ではない」と反論しました。
 5月15日、安倍首相は集団的自衛権の行使容認を認めるべきとの記者会見の掉尾を、次のような情緒的な表現で結びました。
「まさに紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子供たちかもしれない。彼らが乗っている米国の船を今、私たちは守ることができない。そして、世界の平和のためにまさに一生懸命汗を流している若い皆さん、日本人を、私たちは自衛隊という能力を持った諸君がいても、守ることができない。そして、一緒に汗を流している他国の部隊、もし逆であったら、彼らは救援に訪れる。しかし、私たちはそれを断らなければならない、見捨てなければならない。おそらく、世界は驚くことでしょう。こうした課題に、日本人の命に対して守らなければいけないその責任を有する私は、総理大臣は、日本国政府は、検討をしていく責務があると私は考えます」
140528abe ところが28日の審議では、「『日本人が乗っているから守る』『日本人が乗っていないから駄目だ』ということはあり得ない。極めて明確な例として『邦人』を示した」と述べ、日本人が乗っているかどうかは米艦を守ることと関係ない、との考えを示したのです。
 つまり、わずか2週間で集団的自衛権の適用範囲は「日本人が乗っている艦船」から「日本人が乗っているか、乗っていないかは問題ない」と、あらゆる同盟国の艦船に拡大されてしまいました。
 さらに「外国の船を雇うこともある。それは米国船ではない」とも述べ、邦人が乗っていれば、米国以外の国の船も集団的自衛権を使って守る考えを示しました。「私は米国の船以外は駄目だと言ったことはない。米国のみが集団的自衛権の対象になるわけではない」とも強調したのです。集団的安全保障の対象は、これによって大きく拡大されることになりました。
 政府は27日の自民、公明両党の協議で、集団的自衛権の行使容認を含む15事例を示したたのですが、さらに新たな事例が追加された形です。
 安倍政権が目指す集団的自衛権の行使容認の範囲が不明確で拡大解釈の余地があることが、はからずも首相自身の答弁で明確になってしまいました。