農林水産委員会で質問する井手県議 6月11日、井手よしひろ県議は県議会農林水産委員会で、県包括外部監査によって指摘されたオーバーナイトローンについて、3月議会に引き続き取り上げました。
[参考]県議会農林水産委員会、オーバーナイトローンの是非に言及
 2月25日、平成25年度県包括外部監査人の小林保弘公認会計士は、2013年度の監査結果報告書を県に提出。その中で、JAなど4団体への単年度貸付金77億3000万円が年度末に回収され、翌年度に再び貸し付けられているとして、「違法とは言えないが、県の財務実態をゆがめる」と指摘しました。このような会計手法は"オーバーナイトローン"と呼ばれ、単式簿記を採用している自治体の経理では、繰り返し行われてきました。しかし、税制の実態が見えづらくなるとともに、本来不要な経費も発生することから、改善が強く求められています。
 包括外部監査人から指摘されている会計は、県農協中央会への70億円(農協経営刷新貸付)、県食肉事業協同組合連合会への9千万円(食肉市場取引推進資金)、県中央食肉公社への4億6千万円(食肉流通合理化促進資金)、県森林組合連合会への1億8千万円(林業生産振興資金貸付金)の4会計です。
発端は1991年のトキワ園芸農協の破綻処理
トキワ園芸農協の取り付け騒ぎ 特に、井手県議は、県農協中央会への貸し付け70億円について問題にしています。この貸付金は農協の破綻処理の過程で発生しました。
 1991年10月、当時の茨城県美野里町(現在の小美玉市)の「トキワ園芸農協」(組合員数622人)で不良債権をめぐって取り付け騒ぎが起きました。9日までの3日間で延べ約千百人の貯金者が殺到、約27億円の預金が解約されました。預金者保護を目的に、トキワ園芸農協に約70億円の緊急預け入れを行うことを決め、取り付け騒ぎを沈静化させました。
 トキワ園芸農協は、ずさんな経営から関連会社26社に、1987年のピーク時で約52億円の不良債権を抱えていました。県の指導で、農協側は担保の土地を売却するなどして、不良債権縮小に努めていきました。当時の貯金残高は約78億円で、県が預け入れた70億円で、一般の預金者の預金が守られることを証明したことになりました。貯金者に信用不安が広がったのは、当時の組合長が10月3日、自殺したのがキッカケでした。貯金者の間に「トキワ園芸農協が危ないらしい」とのうわさが風評として広がりました。
質問する井手県議 1999年、トキワ園芸農協の破綻処理に国、県、農協グループの3者で支援する枠組みが作られました。県の財政状況が厳しく、県負担額の8億1900万円の立て替えをJA茨城中央会に依頼。一方、無利子で中央会に70億円を貸し付け、その運用益で分割返済する手法を採り入れました。この70億円が、現在も年度末にいったん県に貸付金が振り込まれ、4月に再び貸し出されています。
 外部監査法人は、「現在は残額が減ってきており、農協への立て替え未払い額を一括返済した場合と、県の資金調達コストを比較検討し、合理性の高い方法を選ぶべきだ」と指摘しています。
 11日の委員会では、平成25年度末で負担額8億1900万円の内、7億2200万円の精算が終了し、残高が9700万円であることが示されました。従来の仕組みを踏襲した場合、平均0.6%超の運用実績が上がっていることから、他の金融機関から資金を調達して一括返済した場合よりも、有利との見解が示されました。さらに、こうした短期貸付の仕組みで平成27年度前半には、精算が完了するという見込みが示されました。