日本原電からの参考人意見聴取 6月12日、県議会防災商工環境委員会が開催され、東海第2原発の新規規制基準への適合性確認審査申請について、原発を運営している日本原子力発電(日本原電)の関係者を招き、参考人として意見を聴取しました。日本原電からは、山本直人常務取締役(茨城総合事務所長)、松浦豊東海第2発電所長、石坂善弘発電管理室長、吉野景三郎茨城総合事務所長、服部正次渉外・報道グループマネージャーが参考人として出席しました。
 日本原電は、東海第2原発施設内には直下型地震を引き起こす活断層は存在しないこと。想定する地震の基準地震動は901ガルであるなどと説明しました。また、津波想定では、東日本大震災の割れ残り地域が大きく滑った際に取水口前面で14.3メートル、防潮堤の位置で17.2メートルの津波が想定されるとしました。津波の浸水被害を防ぐため海抜18メートル以上の高さの防潮堤を建設することや敷地全体を大きく囲むことを説明しました。火災対策としては、安全上、重要な電気ケーブルを燃えにくくする対策として、難燃性のコーティング剤を塗付するとしました。さらに、重大事故(シビアアクシデント)対応として、フィルター付ベント装置などを設置すると語りました。このフィルター付ベントで、セシウム等を1000分の1程度に低減できると説明しました。
【東海第2発電所 新規制基準適合に係る原子炉設置変更許可申請の概要】

1.設計基準
  1. 地震対応
    ・地質調査の結果、敷地には活断層がないことを確認。
    ・これまでの調査や新たな知見を踏まえ、敷地に影響を与え得る地震を複数選定し、基準地震動を策定。
  2. 津波対策
    ・地震に起因する津波,地震以外に起因する津波を評価し、基準津波を策定。
    ・主な対策(18メートルの津波に耐える防潮堤の設置、重要な建屋扉の水密化等)
  3. その他の自然現象(火山活動、竜巻等)に対する対策
    ・発電所に影響を与え得る火山を評価対象とし、火砕流や火山灰等により、発電所の安全性が損なわれないよう設計。・設計竜巻に対し、発電所の安全性が損なわれないよう設計。
  4. 内部溢水対策
    ・配管の破損、地震に起因する機器の破損等による溢水(水漏れ)に対して、発電所の安全性が損なわれないよう設計。
  5. 火災防護対策
    ・火災により、発電所の安全性が損なわれないよう設計。
  6. 外部電源の信頼性
    ・送電線は、それぞれ異なる変電所に接続。

2.重大事故等対応(シビアアクシデントの発生防止、拡大防止等の対策)
  1. 炉心損傷防止対策
    ・冷却機能強化(高圧代替注水系、低圧代替注水系他)
    ・電源の強化(常設代替高圧電源装置、電源車他)
    ・水源の確保(淡水貯水池他)
  2. 事故後の影饗緩和
    ・格納容器の破損防止(フィルタ付ベント装置他)
    ・放射性物質の拡散抑制(格納容器頂部注水系、可搬型放水装置他)
  3. 事故対応の基盤整備(緊急時対策所の設置他)
  4. 使用済燃料プールの冷却(代替燃料プール注水系 他)
  5. 重大事故等に対する対策の有効性評価
    ・事故事象を複数想定し、炉心損傷防止対策及び格納容器破損防止対策等の有効性を評価し、国の基準を満たしていることを確認。


日本原電・山本直人常務 説明の後、委員との質疑応答が行われました。公明党の高崎進県議は、「安全対策の費用の総額が780億円にのぼる。東海第二原発は運転開始から35年が経過しており、原発の運転が原則40年に制限されるなかで費用に見合う効果があるのか」と質問。これに対し日本原電の担当者は「安全対策が妥当かを確認し、住民に安心してもらうことが大切であり、今は先のことを考える段階ではない」と答えました。
 また自民党の委員からは、「(茨城県民は)動燃事故、JCO事故などを経験している。それに加えて福島第1原発事故が起きた。安全神話は崩れてしまった。国民の生命財産を守る、子どもたちの未来を考えなくてはなない」と強調。津波想定の根拠や東海第2原発を再稼働させる必要性などの質問がありました。
 さらに、無所属の委員からは、「適合性審査申請の際、日本原電の社長は再稼働を示唆したが、本当に再稼働に繋がるものではないのか」と指摘しました。山本常務は「再稼働に直結するものでない。再稼働には安全の確認、地元の理解が必要。地元との協定は重い」と答えました。
 全体1時間半の予定でしたが、原電側の説明が1時間を越したために、委員(県議会議員)の質問時間がなくなり、委員外の県議質問は割愛されました。大変残念な幕切れとなりました。

 井手よしひろ県議ら公明党としては、議論が全く不足しているとして、再度の参考人招致を飯塚議長あての要請することになりました。
 東海第2原発は、たとえ規制基準をクリアできたとしても、原則40年の運転期間を、4年後の2018年に迎えます。今回、申請した対策を終えるのは最短で2016年6月であることを申請書類で日本原電は明記しています。780億円を超す、大きな投資を行うことに、どのような意味があるのか、日本原電は納得できる説明をする必要があります。
 さらに、東海第2原発で過酷事故が発生した場合、避難対象は原発から30キロ圏内の98万人に上ります。全国の原発で最多です。しかし、自治体の避難計画の策定は遅々として進みません。
 これら全てを総合的に考慮すると、運転再開は常識的にはできないのではないかと考えています。

参考:東海第二発電所 新規制基準への適合性確認審査の申請について